島根県中小企業家同友会

島根同友会出雲支部・青年部合同例会~もっと係わりあっていくこと 「恩送り」で未来へつなぐ~

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2014年10月17日(金)、島根県中小企業家同友会 出雲支部・青年部合同10月例会が開催されました。この日は、『社員の物心両面の幸せを追求する 「家業」から「企業」へ、この手で創る、ヒト・カイシャ・ミライ』と題して、広島同友会の株式会社クニヨシ 代表取締役社長 早間雄大さんから報告を頂きました。㈱クニヨシは、広島県福山市で鉄・ステンレス等の一次加工・溶接等を行う会社です。元々、家業として運営していた会社から、同友会での学びを通じ、現在では、従業員33名、売上高4億5800万円、経常利益4300万円、自己資本比率30%、という状況まで成長しています。その間の様々な失敗や苦労の積み重ねを踏まえ、青年経営者としてどうあるべきなのか、島根同友会の若手経営者に対して強烈なメッセージを頂きました。その一部をまとめています。なお、早間さんの報告は、2013年1月の鳥取同友会の例会でも伺いましたので、このブログではそこと重複する部分を除き、今回の報告のキーワードだと私が感じたところをまとめています。

報告する㈱クニヨシ 早間さん

1.想いが全て

早間さんは、これまでの経営を振り返り、「想いが全てだった」と総括されました。

早間さんは、30歳の時に「10年ビジョン」を描かれました。それから10年、掲げた目標(従業員数、売上、経常利益、自己資本比率)を達成されました。ほぼゼロからのスタートで、なぜそれが出来たのか。それは、同友会に入って最初の例会報告で「家業から企業へ」、と言い切ったことが全ての始まり、あらゆるチャレンジのきっかけだった、と話されます。振り返ってみて、結局そこだったと認識されています。また、ビジョンを掲げたから、「逆算することでやることが見えてくる」と話されました。そうやって前に進んで行く会社は、社員が確実に変化を感じる会社、変化している実感がある会社だ、とも。その社員の感じる“変化”が会社の成長の重要な役割を果たしているのだと感じます。

その一方で、「もっと大きなビジョンを描くべきだったのではないか」、という反省も語られました。ソフトバンクの孫社長が、創業まもない頃、「1兆円以上売り上げる会社になる、というような話を社員にしたところみんな辞めていった」、という逸話を例に出し、自分がもっと大きなビジョンを描いていればもっと違う現在があったのではないかと、話されます。これだけの成果を上げてなお、そう話されるのは、“想う”ということの大切さを実感されているからこそでしょう。よく、「想わないと実現しない」と言われますが、それは、「想った以上にはならない」という見方もできます。だから、想うからには、自分の創造を超える想いを抱くことが必要なのではないでしょうか。それが私にあるのか。身につまされます。

そこで思い出したのは、ある他県同友会の例会に参加した際のある若手経営者の方が話された「目標を立てたら桁を一つふやしておけ。未来が大きくなるからな。」という言葉です。当時は、そんな無茶なと、単に思うだけでしたが、未来は結局のところ自分が想像出来る範囲内にしかならない。それが自分自身にとって、また社員にとって夢のある、ワクワクする姿なのか。だから無理矢理でも大きな夢を描く。そういう示唆を与えて頂いていると思います。

また、早間さんは、「想いはあるけど現実は厳しい、と思われている方もいるかもしれない。しかし、あきらめてはいけない。少しずつ上がっていける。」とも話されました。この“少しずつ”というのは中小企業にとってのキーワードだと感じます。現状に落ち着いたら、それ以上の変化、前進はありません。だから、会社でも同友会でも自分自身の立ち位置を変えていくことが必要。変化し続けることで、前に進める。“少しずつ”だけど“常に変化し続ける”。肝に銘じ、私自身の想いを明確にすることとあわせて、取り組んで行きたいと考えています。

2.原因自分論

今回の報告で強調されたことの一つが「原因自分論」です。

すべての原因は自分の中にある。そう考えることが出来るかどうか。早間さんも、同友会に入会する前は、世の中、社員、取引先、自分以外の環境に対して文句ばかり言っていたと話されます。しかし、今は文句が全くない。それは会社が変わったから。ではなぜ、変わったのか。それは、全ての原因が自分にあると認識され、早間さん自身が変わったからだという訳です。

現在、早間さんは、「㈱クニヨシの強みは社員の主体性にある。」と自信を持って話されます。社長自らが全ての原因が自分にあると自覚し、主体的になった結果、社員が少しずつ主体的になり、今では、会社の強みとして発展を支えている。早間さんは、よく「どうしたら社員が主体的になりますか?」と質問されるそうです。その答えは、「その前に、自分自身は主体的なんですか?」という逆の問いかけだそうです。社員に主体性を問う前に、まず自分を問いただすべき、と指摘されます。

今回の報告でも、会場の参加者に対し、「現状、苦戦している会社があるとすれば、それはお客さまや社員のせいではない。社長がやるべきことが出来ていないからだ。」と話されました。人のせいにしているうちは解決しない、ということです。私自身のことで言えば、今期はかなり苦戦しています。公共事業の会社ですので、市場の環境すなわち、公共事業関係の予算の状況次第で大きく変化します。それは一つの訳にはなります。しかし、全ての会社が一様に苦戦している訳ではない。やはり、社長がやるべきことをやっていなかった会社が今苦戦しているのだと思います。本当は分かっていたけど、認めるのを避けていた真実を指摘して頂き、自分自身が主体性をもって取り組むことを改めて決意させて頂きました。

繰り返しになりますが、私自身、日々、他人のせいにしたい衝動との戦いです。それを踏みとどまれるか。「全て自分の責任だ」と認識して主体的な動きに転換できるか。それが将来を決定づけると痛感しています。

3.もっと係わりあっていく

“係わりあっていく”。これも今回の報告の重要なキーワードです。

「もっと周囲と係わらなければならない」と、早間さんは強く訴えられます。周囲とは、社員、家族、地域、お客さま、同友会、のメンバー、自分に関わる全ての人たちが対象となります。それは、「今、圧倒的に係わりあう量が少なくなっている」から。確かに、会社のことを考えても、1日、1週間、1カ月、その間にどれだけ社員と話をしているか。自分から主体的に関わり合いを持って相手を理解し、理解してもらおうとしているのか。私をはじめ、自信を持って答えられる人は少ないのではないかと思います。

同友会活動も同じです。なぜ同友会に入っているのか、ということです。「何かつかみ取りたいから入会しているのではないのか。だったら、もっと入り込んで行く必要がある。」というのが早間さんからのメッセージです。「同友会は係わった分だけ帰ってくる。だから、会員どおし、もっと刺激し合って、やりあって欲しい。」と話されます。

それは会社における社員に置き換えても同様ではないでしょうか。本来、社員も社会生活を通じて自分とその家族、自らの地域や仲間が良くなることを望んでいるはずです。それならば、その社会生活の中心にある会社において、お互いがもっと関わり合うことで成長し、結果として会社も成長していく。そういう姿を目指していかなくてどうするのか。もっと係わっていこうじゃないか!という強烈なメッセージをもらいました。

そのことを「恩送り」という言葉で説明されました。我々が今まで育ってこれたのは、自分の知らないところでたくさんの人たちが係わってくれていたから。そのお世話のおかげで現在がある。だから、その関わりを自分達は次の世代へ送っていかなければならない。それが「恩送り」。社員、後輩、子どもたち、係わる全ての人たちに、いい意味でのおせっかいをしていく。その結果、送られた者たちが先輩達より立派に育つことが恩返しになる。早間さんが、そういう気持ちで何事にも取り組まれた結果、素晴らしい会社の業績と、素晴らしい社員に囲まれた会社が出来上がりつつあるのだと感じます。

100名を超える参加者

最後に、「経営者は恵まれている。この立場に居る我々が、地域、そして国を背負うという気概が要る」と話されました。自分のことで精一杯の私ですが、それでも経営者という立場が恵まれているという指摘は同感です。そういった立場だからこそ、地域のこと、子どもたちのこと、様々な事に関わり合うことが求められる。私自身も出来るだけ役目を担うようにはしていますが、一方で、“もうこのぐらいやればいいんじゃない?”という気持ちが湧き出る時もあります。しかし、それをもっと限界まで、係われる限り係わることで、また違うステージが見えてくるのかもしれない。今は、そんな気がしています。あらゆることに全力で係わりあう。最善を尽くす。その結果がどうなるのか、改めて挑戦してみたいと決意させてもらった報告でした。

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