島根県中小企業家同友会

島根県中小企業家同友会 6月例会 自立型社員の育成で激変を乗り越える企業づくりを

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2011年6月14日、島根県中小企業家同友会松江支部の6月例会が開催されました。

この日は、松江支部の設立記念例会を兼ねて開催されました。島根県中小企業家同友会では、5月に出雲支部が発足し、それに合わせて松江でも支部が設立されたという形になります。以後、それぞれの支部で毎月の例会があり、会員は自分の都合に合わせて各支部の例会に参加することになります。勉強の機会が増え、選択の幅が広がるという点ではよいことです。このところの会員増の結果でもあり、ありがたいことではないかと考えています。

今回の例会では、松江支部設立記念例会との位置付けから、中小企業家同友会全国協議会副会長、三宅産業株式会社 取締役会長 三宅 昭二氏をお招きし、お話を伺いました。三宅産業は、香川県で、プロパンガス、設備工事、太陽光発電、住宅リフォームなど生活に関わる多様なサービスを総合的に手掛ける会社です。

講演テーマは、「自立型社員の育成で激変を乗り越える企業づくりを~同友会で何を学び、何を経営に活かすのか~」と題し、自らの生い立ち、企業経営に関する試行錯誤の経緯、人材育成や経営方針を社内に浸透させるための具体的な取り組みまで、多様なお話を聞かせて頂きました。中小企業ならではの方策、進め方等、業種は違えど会社を運営していくための実務に関する具体的なお話を多く聞くことが出来ました。その中でも主要なものを3つほど整理しておきます。

講演する三宅会長

1.役職員全員の目標と経営指針書を関連付ける

三宅産業では、毎年4月の最初に経営指針書の発表会を開催されるそうですが、この経営指針書の策定は、1月の休日丸一日を使い、全役職員が集まったディスカッションの場を経て取りまとめが行われるそうです。何のために働くのか、我が社の強み・弱みは何か、など、1日をかけて3~4つのテーマについてグループ討議をされるそうです。

そして、もう一点、個人の決意表明と経営指針が連動しているところが特徴だというお話でした。個人の決意表明とは、毎年1月の頭に、役職員全員が(1)仕事の目標、(2)家庭生活での目標、(3)人間性を高めるための目標、の3つのを定め(正月休みに考えてくる)、それを一覧表にしてまとめて全社に公表されるそうです。その決意表明を踏まえて、1月の全員参加のディスカッションが行われるというスケジュールになっており、参加者は自分自身のその年の目標を、会社全体の方針の中でどのように織り込み、また実現させて行くのかを考える仕組みになっています。

同友会では会員企業に経営指針の策定を進めていますが、指針を策定することと、指針を社内に浸透させ、共通認識を持たせることとは必ずしも一致しないところです。そのような中、三宅産業の方式は中小企業ならではの意識共有・方向付けの方策として大変参考になるものだと感じました。当社でも、まずは役職員全員の3つの目標設定から取りれてみたいと考えています。

2.社員と経営者との信頼関係が構築されているのか

三宅さんは、“社内で一番大切”なことは、「社員と経営者との信頼関係が構築されているか」であると明言されました。これは、三宅産業の経営の過程で、多角経営を進めたことによる各種問題の発生、途中での労働組合の結成と解散、同友会との出会いなど様々な経験を踏まえられた上でのお話でもあり、非常に重みのある言葉に感じました。

そして、経営者が社員に求めるもの(経営方針、目標、施策など)に対し、社員がそれに応えられる仕組みが整っているのか、という点が重要だというお話がありました。三宅産業においては、前述した社員参加による経営指針書づくりがその一つであり、また、同社では経理を公開し、評価制度も開示したものになっているなど、いわゆるガラス張り経営を実践されており、これを“公開管理”と呼ばれています。あらゆるものを公開することで、お互いの理解が進み、いい意味での緊張感ある職場が構築されるのでしょう。これらも社員が経営者の求めに応えるための環境づくりの一環だと理解しています。

また、会社のスローガンとして「変化に対応」「基本徹底」を掲げ、そのスローガンを前提に、自分の頭で考える社員を育てていく、指示待ちではない「自立創造型の社員」を目指して行かなければならないというお話がありました。これも、社員と経営者の信頼関係が構築されていればこそ、実現できることではないかと感じます。

3.代理経験~一般化して、普遍化して頭の中に入れていく~

三宅会長は、中小企業家同友会全国協議会副会長でもありますので、同友会の真髄ということについてもお話がありました。その発言を拾ってみると、「ノウハウではなく、本質を学ぶのが同友会」、「代理経験により、一般化・普遍化して頭の中に入れていく」、「組織的経営を目指す経営者が学んで自己変革を遂げようとするための道場」、といった説明があり、いずれもなるほどという表現だったのですが、特に“代理経験”という観点は非常に重要であると感じました。

経営者に限らず、自分自身の人生は一度きり、他人の人生を歩むことはできませんし、やりなおすこともできません。会社経営も一緒で、自分の会社経営は現在の自分しかできない。試行錯誤をするとしても物理的・時間的な限界はあります。しかし、他の経営者が経営を通じて学んだことを、同友会等の場を通じて“代理経験”し、その経験が意味する本質を理解し、自らの経営に取り入れていくことはできる。自分が経験する前に、先輩方が経験した貴重な体験を教えて頂き、その本質を自社に取り入れる。それを上手く実現することが同友会を活用して会社をよくすることの本質であり、価値であると感じます。

その実践は文字で書くように簡単には行きませんが、そういう姿勢で中小企業の先輩経営者に学び、自らを高めていくという姿勢の重要性を改めて感じる機会となりました。

大盛況となった松江支部設立記念例会

例会後の懇親会で、三宅さんと色々とお話しする機会がありました。事業の後継に関しては色々と悩まれたというお話や、講演の中で話が出た経営方針書、決意表明書の実物を見せて頂き、大変参考になりました。こういった経営の核心にふれる資料を惜しげもなく公開し、他社の経営の参考にさせて頂けるというのも同友会の仲間意識からだと思います。後は、前述のとおり、そこで得たものをどのように普遍化し、自社に落とし込んでいくのかであり、そのことについては、私自身がしっかりと考え、また考えるばかりではなく、実行に移すことでお返しをしたいと考えています。

 

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