島根県技術士会

島根県技術士会 産学交流会 ~肩の力を抜き、仕事の基本プロセスを疑似体験し、新しい発見にたどり着く~

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2011年11月島根県技術士会青年部会の主催で、オモシロ企画2011「捨てる?使う?見出す!?」~平成23年度島根県技術士会青年部会企画 産学交流会~が開催されました。

この企画は、平成19年度から島根大学及び松江工業高等専門学校(松江高専)と島根県技術士会との産学交流イベントとして実施されているもので、技術者を目指す学生を支援する目的で開催されています。これまで計5回開催されており、私は、2009年度に一度参加させて頂き、今回で2回目です。今年は、島根県松江市の松江高専を会場として開催され、今回の参加者は、島根県技術士会から15名、松江高専の学生が9名、日本技術士会中国本部青年技術士交流会から7名、という構成で、計31名の参加がありました。以下、その様子を整理しておきます。

1.仕事の基本を凝縮して疑似体験する交流会のプロセス

今回の企画は、技術者と学生とが単に交流すると言うだけでなく、”技術者が仕事を実施するプロセスを凝縮して疑似的に体験してもらう”という趣旨も含まれ、工夫を凝らした企画となっていました。よく考えられた企画で、島根県技術士会青年部で企画を担当してもらった株式会社イズテックの大坂さん他、準備に携わった皆さんには頭が下がります。

テーマは、『10年後にあると思われる技術を応用し、指定場所周辺で役に立つモノ(機械、装置、施設等)を考える』というものです。“指定場所”は、松江高専周辺の8箇所(JR松江駅、大橋川、宍道湖湖畔、恵曇港、など)がくじ引きで指定され、参加者は4名を1グループとして8グループに分かれて活動しました。

今回の企画の“ねらい”について企画書から抜粋させてもらうと、『あるテーマについてグループで議論し、学生と技術士との交流を図る。その中で、現状の把握→課題・問題点の抽出→解決策の提案→成果の作成・発表、という、技術者が普段やっていることを学生に体験してもらう。それらに加えて、達成のためのスケジューリング、プレゼンテーション、コミュニケーション、なども体感してもらう。』とされています。

技術者の集まりですから、“技術者の仕事”という視点になっていますが、現状把握から問題解決の提案に至る流れは、技術者に限らず、あらゆる仕事の基本といってもいいでしょう。そこに、時間的な制約やプレゼンなどの要素を加えることで、ケーススタディとしての現実味や緊迫感を増しています。さらに進め方や内容を練り上げることで、技術士会としての行事だけでなく、企業における研修の一パターンとして活用できる可能性もあるのではないかと感じたところです。

各グループによる提案検討の様子

2.コミュニケーション力・プレゼンテーション力は学生生活でも必須の能力

今回、私も検討グループの1つに参画し、松江高専の学生さんと一緒に、現地を見て回ったり、アイデアを検討したり、プレゼンテーションを行ったりしました。率直に感じるのは学生さんたちのレベルの高さです。こういった行事に参加すること自体、意識が高いとは思いますが、話し合いや意見交換、プレゼン作成の作業などに積極的に参加する姿勢には大変好感が持てます。

個別の能力面で目を見張るのが、まず、プレゼンテーションツールの技術です。ツールとしてのパワーポイントの使用はもはや当たり前。どこまで使いこなすか、という段階にあります。学生生活においても必須のツールとなっているようで、こういったツールを日々使ってレポートや発表を行う訓練を繰り返せば、卒業までにはかなりの力が付くのではないかと感じます。

コミュニケーション力についても、本当に自然に議論ができます。松江高専の学生のみなさんは20歳~22歳、一方、島根県技術士会や日本技術士会中国支部からの参加者は40歳前後の方が多かったでしょうか。20歳以上年が離れているおじさん達相手でも、物おじすることなく、自然にやり取りして提案をつくり上げる。彼らにとっては当たり前のことかもしれませんが、むしろ大人の我々が認識を改め、コミュニケーション力を付けなければならない。そう考えた方がよいのではないかと感じました。

各グループのプレゼン(発表者は高専生)

3.肩の力を抜いて自由な発想で自分達の仕事を見つめ直す

今回、私が参加したグループに指定された場所は、一畑電鉄の「イングリッシュガーデン前駅」でした。ローカル私鉄の一畑電鉄の駅で、日頃、訪れる機会はほとんどないところでした。そんな場所を改めて確認し、今後実現化するであろう技術を活かした提案を行う。仕事でもなく、誰に頼まれた訳でもなく、純粋に、地域に、そして環境に貢献するものを考えてみる。そんないい機会を与えて頂いたと感じています。私のグループは「駅ナカ地熱バイナリ発電システム」という提案をまとめました。駅構内の敷地で地熱発電を行い、一畑電車の運行電力を賄うとともに、駅駐車場で電気自動車などに電力供給を行ってパークアンドライドなどを推進しようというものです。実現性はともかくとして、「優秀賞」を頂くことができました。

さて、この他、計8つのグループの提案は、参加した技術者が携わっている仕事に関わる技術に関した提案が多かったように感じました。“10年後にあると思われる技術”を使うことが与えられた課題ですから、自分の携わっている技術の10年後を考え、与えられ場所における提案に当てはめてみるのは当然の流れではあります。こういった発想は日頃の仕事の中でも持ちあわせていてもよいのではないかと感じますが、日々の仕事に追われると、そのような時間を持てないのも実態だと思います。それに気づかせてもらえる機会だったと感じています。また、他のグループの提案を見比べながら、世の中の今後どう変わっていくのか、様々な着眼点から多様な見方があることを知る機会にもなりました。

たった1日の企画ではありましたが、日頃中々考える機会を持てない思考をさせて頂く、貴重な機会となりました。企画をして頂いたみなさんに改めてお礼を申し上げたいと思います。

一畑電鉄イングリッシュガーデン前駅

今回、松江高専の学生さん達と一緒に大変有意義な時間を過ごさせて頂きましたが、惜しいのは、この優秀な学生のみなさんの多くが県外に就職してしまうということです。大学と異なり、高専は基本的に島根出身者です。島根で育ち、学んだ優秀な学生の大半が県外に出てしまうという状況は、大変残念なことです。その状況を改善するためにも、優秀な地域の学生をたくさん採用できるような企業にならねばならないし、そういった企業を増やさなければならない。企業経営者のはしくれとして、優秀な学生の雇用の場、活躍の場の確保の必要性について、改めて感じさせてもらう機会にもなりました。

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