新規事業・経営改善

新規事業に向けて 「再生可能エネルギー世界展示会」から地熱発電と温泉熱利用の今後を展望する

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第7回再生可能エネルギー世界展示会(2012年12月5日(水)~7日(金)、幕張メッセ)に参加してきました。その名のとおり、再生可能エネルギーに関わる企業や各種団体、大学・研究機関等が最新の技術や情報を出展する国内最大規模の展示会です。私は今回初めて参加してきました。再生可能エネルギーと言っても太陽光、風力、バイオマス、など様々なカテゴリーがありますが、当社にとっては、「地熱・地中熱」という分野が関わりを持って行くべき分野です。このため、この分野に関わるブースを中心に見学及び情報収集を図りました。

以下、今回の展示会で地熱・地中熱に関するブースを回ってみた感想として、最近の動向を整理し、今後の当社の方向性との関わりを考えてみます。

今回の収集資料(一部)

1.バイナリー方式による地熱発電への注目~温泉熱の有効活用方策として期待~

第一の感想は、「地熱発電」に関する出展が予想以上に多く見られたという点です。私は今回初めて参加したので以前の様子は知らないのですが、恐らく今年が一番多いのではないでしょうか。そして、その中でも「バイナリー発電」に関心が高まっているということが見て取れます。

バイナリー発電とは、地下から取り出した蒸気・熱水で、水より沸点の低い液体を沸騰させ、その蒸気でタービンを回す発電方式です。この方式は温泉地での活用が期待されています。それは、温泉地において、入浴利用には高温すぎる温泉水を入浴に適した温度に下げる際の余剰の熱エネルギーで発電できるからです。上手く機能すれば、既存の温泉の温度調節の役目を果たし、過剰揚湯等の温泉資源の枯渇等の問題も回避しながら、熱エネルギーの活用を図ることができます。

バイナリー方式による発電所は、国内には九州電力管内に一か所、比較的大規模なものありますが、前述の温泉熱を活用した発電施設はいずれも実証段階のものばかりです。来年ぐらいから、初の商用プラントとして稼働が始まる状況で、まさに、これからの発電方式と言えます。

また、当然ながら地熱発電も再生可能エネルギーの固定価格買取制度の対象となっており、15,000kw以下であれば42円/kwh(15年)という設定になっています。地熱発電は、太陽光発電や風力発電に比べて稼働率が高い(昼夜連続してずっと発電できる)ことが特徴であり、上手機能できる環境が整えば、大変期待できる発電方式です。また、温泉熱(100℃近い高温泉である必要がありますが)の有効活用策という側面もあるため、当社としても今後注視していきたい再生可能エネルギーの活用方法と考えています。

2.メーカーによる発電プラントの投入と温泉源の課題~当社の活躍の場に~

今回、神戸製鋼、IHIという2つのメーカーが、新たに開発したバイナリー方式の発電プラントを展示していました。いずれもコンパクト設計で小規模な発電出力をターゲットにしています。メーカー側でもバイナリー発電への注目が高まっていることを印象付けました。神戸製鋼のプラントは来年から具体的に動き出す案件で採用されており、一歩進んでいます。IHIのプラントは、神戸製鋼よりもさらに小さな出力で設計されており、より小さな熱源でも発電を行うことが出来る点が注目されます。

こういった小規模なプラントにより、バイナリー発電のハードルが下がってくること自体は大いに期待されるところです。一方、温泉でこの発電プラントを活用しようとする場合、熱水を供給する泉源側の対応に様々な課題があると想定されます。発電のためには、一定量(数百リットル/分)の熱水が必要があり、それをどのように集めて、安定的に供給するのか。また、メンテナンス等で発電プラントが停止する場合の温泉水の扱いをどうするのか。すなわち、例えば、90℃で湧出する温泉を50℃に下げることで発電し、その温度の供給で温泉施設が上手く稼働しているとします。しかし、点検や異常でプラントが止まった時に、50℃が90℃になってしまっても困る訳です。そういう場合にはどうやって供給温度を調整するのか。実際の運用や施設設計に際しては様々な課題があるように感じられます。

しかし、こういった課題は、プラントメーカー側ではなく、温泉の泉源側で解決しなければならない課題で、そこに、当社のような温泉源の実情をよく理解した会社の出番があると考えられます。課題があるからこそ、新しい仕事の可能性がある。そう考え、引き続いて温泉熱を活用したバイナリー発電の可能性を追求していきたいと考えています。

3.温泉開発とバイナリー発電を組み合わせた地熱活用~島根らしいモデルの構築~

今後、温泉開発とバイナリー発電を組み合わせ、地下の地熱資源をどう有効活用していくのか。今回の展示会での見学、情報収集を経て、そのモデルを構築し、実現化していくことが今後の当社に課せられた大きな課題との認識を新たにしました。九州や東北等の、火山性の温泉地で、100℃近い熱水が大量に湧出しているような地域と、当社のフィールドである島根県とでは、同じ温泉熱の活用を考えても、その環境は大きく異なります。その中で、どのようにして効率的な地熱資源の活用を図っていくのか。

島根県内でも、1000m以上の地下深部においてかなり高温の地熱資源が潜在する地域があります。松江しんじ湖温泉や玉造温泉などを有する島根県東部地域が、それに当たります。一方、一般に温泉井戸というものは、入浴を前提とした温度のお湯を得ることを前提に掘削深度や揚湯量を設定しますので、潜在的にはもっと高い温度のお湯をくみ上げることが出来る地域でも、熱源としてのポテンシャルを十分活用していない場合があります。従来、高温の温泉は、水を混ぜるなどして単に温度を下げているだけでしたので、必要以上に高い温度の温泉井戸は、浴用利用としては迷惑だったりしたわけです。しかし、今後バイナリー発電の技術が進歩すれば、地熱資源のポテンシャルを十分に活かした活用、すなわち、第一段階では発電利用、第二段階として温泉入浴利用、第三段階として排熱回収による熱利用、というように段階的な利用を図ることも可能になります。

しかし、これを実現するためには、既存の温泉井戸を前提とすると対応が難しい面が多々あります。前述のように、浴用利用を前提に全ての仕組みが構築されているからです。このため、今後の方向としては、湯量の減少等を背景として中長期的なスパンで実施される、新泉源開発のタイミングに合わせて地熱資源の有効活用の仕組みを構築し、具体化させることが現実的なプランではないかと考えています。

会場の写真は撮り忘れ(faceboook用写真で代替)

当社が長年培ってきた温泉開発の技術とノウハウを活かし、「地熱」という再生可能エネルギーを有効活用する。現在、当社は、目指すべき姿の一つとして「地熱・地中熱エネルギーの地域活用企業」を標榜し、事業活動を進めています。その具体的な姿の一つを、今回の展示会を通じて垣間見ることができたように感じています。具体的な絵姿が見えてくれば、それに向かう道筋も開けてきます。今後、さらなる技術習得や知見の収集を進め、島根県における地熱活用の新しいモデルを提案し、実際に構築する、そのような企業を目指し、取組みを進めたいと考えています。

 

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