島根県中小企業家同友会

あいち青年同友会合同例会 ~経営指針があるから事業継承は心配していないと言い切る自信~

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2012年2月18日、愛知中小企業家同友会の主催で、あいち青年同友会合同例会が開催されました。

今回の例会は、同友会会員の中でも、いわゆる「青年部」と呼ばれる青年経営者(愛知の場合は41歳で卒業)で構成される青年同友会連絡協議会が運営する合同例会です。愛知県はこの青年同友会の組織規模が大きく、県内12地区750名を超える規模を誇っています。島根県中小企業家同友会は、島根県全体で会員が約180名ほどですので、都市規模や歴史の違いがあるとはいえ、その格差が際立ちます。今回、今年の10月に島根県で開催される青年経営者全国交流会に向けた準備とPRを兼ねて、島根同友会のメンバー13名でこの合同例会に参加してきました。合同例会は、基調報告、分科会、交流会から構成されますが、今回、基調講演での気づきを整理しておきます。

基調講演は、えびせんべいの製造・販売を全国規模で展開する、スギ製菓株式会社の杉浦代表取締役、杉浦常務取締役、のお二方からお話を頂きました。スギ製菓は、杉浦社長が創業され、来年の4月に、息子さんである杉浦常務に経営を引き継がれるそうです。親子お二方で報告をされるというスタイルも初めて聴講しましたが、後継社長である私もそれぞれの立場でどんなお話があるのか、どのようなバトンタッチがなされるのかについて関心を持って聴かせて頂きました。

基調講演で報告するスギ製菓㈱杉浦社長

1.事業継承は経営指針があるから心配いらない~15年にわたる経営指針の深化

最初は、杉浦社長からの報告でした。その中で大変感銘を受けたのは、「事業継承は、経営指針があるから心配していない」という言葉です。

杉浦社長は1970年に創業後、必死の努力で事業を拡大する一方、事業の浮き沈みや様々な経験を経て1990年に同友会に入会、そのとき初めて経営の勉強を始められたそうです。その後、1997年に初めて経営方針書(経営指針)を作成し、その後15年間、毎年策定し、発表をされているそうです。経営指針に取り組んでいくうちに段々と会社が良くなってきた。そして、5年前からは全社で経営方針書を作成できるようになったそうです。その間も、主要取引先(菓子問屋の倒産)、ニッチ市場への転換、直販店プロジェクトへの取組み、など、様々な事業展開について話を伺いましたが、その背景にしっかりとした経営指針があることが、現在の成功につながっていることは間違いありません。

そして、経営方針書があるから事業継承は心配していないと言い切る自信。そのことのすごさ。経営指針をつくること、それを継続することの大切さを感じる報告でした。当社も、今年度初めて経営指針を作成し、この3月に初めての発表会を開催します。当社の経営指針は私が一人で作成したものですが、いずれはこれを全社員で作成し、共有化し、実践し、そして継続していく。そのことが自社の発展と成長に導いてくれるのだと改めて確信させて頂ける報告でした。

2.百見は一体験にしかず~研修で人間力を磨き、会社で人間力を活かす

続いては、杉浦常務からの報告がありました。スギ製菓では、200年存続企業を目指し、様々な研修や職員の人間力を高めるための場づくりに取り組まれています。掃除は全ての基本(トイレ掃除、ごみ拾い)、50kmウォーク、感謝祭、経営指針発表会、入社式、新年会、ふれあい見つけ旅(慰安旅行)、様々な社内の取組み、行事について紹介して頂きました。これらは全て社内で委員会やプロジェクトをつくって実施されるそうです。

こういった直接的な仕事以外の取組みをなぜ行うのか。その説明として話されたのは、「百聞は一見にしかずというが、百見は一体験にしかず。」という考え方です。いくら教えても、やって見せても、実際に一回体験させることに勝るものは無い、ということです。体験こそが気づきや学びを生む。同友会が実践を重視するのもまさにそこでしょう。さまざまな研修や行事で人間力を磨き、そして、会社でその人間力を活かす。それが事業の発展につながると考えられています。

しかし、スギ製菓の職員さんの中にも、こういった取組みを理解出来ない人もいるし、結局理解できずに辞めていかれる方もいるそうです。そういった現実の課題も報告して頂きました。当社でも、社内クリーンアップ作戦、清掃ボランティア活動、社外勉強会への参加、など似たような取り組みを進めていますが、ある時社員から「最近、仕事以外のことが多すぎる。もっと仕事しましょうよ。」という声が上がりました。その職員のいう“仕事”とは一体何なのか。20年以上の経験がある社員がそのように発言する当社の現実に気分が沈む時もありましたが、今までやっていなかったことを急に始めた時の反応とはそういうものなのでしょう。今回、現在は素晴らしい活動をされている会社であっても、内情・経緯は様々、多種多様の葛藤を経て現在があるのだという現実も併せて教えて頂き、たいへん勇気を頂いたと感じています。

3.同友会のツールを活かして経営目標達成を目指す

すばらしい事業実績を誇るスギ製菓ですが、この近年は3年連続の減収減益と苦戦しているそうです。それでも、来年度は30期30億円、という目標を掲げられています。その達成に向けて、同友会のツールや分析手法を活かして取り組まれており、実務的な面でも大変勉強になりました。

一つはSWOT分析の活用です。SWOT分析自体は、比較的ポピュラーな分析手法ですが、スギ製菓では、半年ごとにSWTO分析を行い、その半年間の様々な環境変化をタイムリーに施策に反映させ、経営指針書の見直しと共有につなげられているそうです。確かに、業種業界を問わず変化の激しい時代、1年単位で分析を行っていては経営判断を誤る可能性があります。実際に見せて頂いた分析結果をみると、半年ごとの分析でもかなりの変化を把握されていました。半年ごとに毎年実施することで分析能力自体が高まっているということもあるでしょう。見習わなければならない取組みと感じます。

もう一つは企業変革支援プログラムの活用です。企業変革支援プログラムは同友会の独自ツールで自社の立ち位置を把握するのに役立ちます。島根同友会でも導入を進めており、当社も一度ステップ1を実施しました。スギ製菓では、これを主要幹部が全員で実施し、その結果を一覧で比較するという取り組みをされています。一覧にすることで、チェック項目によっては認識に差がある箇所が出てきます。その原因を確認、追求することで、経営理念からつらなる経営指針の共有化がさらに図られ、実践・実行にも効果的に繋がっていくという訳です。当社では、私が一回実施してそのままにしていました。せっかくのツールを十分に活かせていません。こちらも大きな気づきを頂きました。

会場となった名古屋国際会議場

スギ製菓では今後の5カ年計画を策定され、東北へ第二工場を建設するという計画を持たれています。200年企業という大きな経営ビジョン、それを実現に導く経営指針、人間力形成の取組み・仕組み、様々な分析手法やツールの活用・実践、地域に根差す中小企業が目指すべき取組みの模範、学びの宝庫とも言うべき報告でした。

島根同友会に入会以降、県外の大会や例会に参加するのは今回が2回目です。全国にはいかに優れた中小企業があり、様々な取り組みをなされているかがよくわかります。島根にいると県外に出ていくのは正直億劫になるときもありますが、こういった学びの機会を定期的に持つことを自分自身で決め、その学びを自社の事業の発展に結び付けていきたいと考えています。

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