島根県中小企業家同友会

島根同友会 経営指針成文化セミナーフォローアップ 起業家の熱意が島根を動かし、島根を変える

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2014年7月12日(土)、島根同友会の第14期経営指針成文化セミナーの第1回フォローアップセミナーが開催されました。既に、6月7日(土)~8日(日)にかけて経営指針成文化セミナーが開催され、7名の受講者が経営指針の素案を作成されました。その後、3回のフォローアップを経て、内容のブラッシュアップを図っていきます。このブラッシュアップを進める作業が、最初のセミナーで素案を作成することに勝るとも劣らず重要なステップになります。第1回では、経営指針のうち“経営理念”を対象にフォローアップを行ったのですが、受講生のみなさんとのやり取りを通じて、大いに考えさせられた3つのコメントについてまとめてみます。

フォローアップセミナーの様子(撮影は吉岡さん)

1.得意なのは「初めの仕事」…町の便利屋よろずやサービス・大谷和哉さん

大谷和哉さんは、「困った人を助ける、人に喜んでもらう、そうやって生きていきたい」と想い、便利業である「町の便利屋よろずやサービス」を起業されました。“法に触れる事、人を傷つける事以外は何でも対応できる”という「何でもやる」というのが一番の売りで、現在依頼が増えつづけているそうです。

大谷さんとの意見交換の中で、「“何でも出来る”と言われると逆にイメージが湧きにくいので、何か強みを打ち出してはどうか、何が一番得意なのか?」という質問が参加者からありました。その答えが「初めてのことが得意です」というものでした。初めての事だから色々頭を悩まさないといけないが、そのことに頭が慣れ出すとものすごく仕事が面白くなる。そうして誰もしたことのない仕事を積み重ねていると周りに敵が居なくなる、と話されます。

初めての仕事に取り組むのは、最初は億劫な面もあります。しかし、自分自身の経験として振り返ってみても、新しい仕事に取り組んだ時にこそ、それまで気が付かなかった様々な発見があり、自分自身の成長の機会になっていると感じます。そういう意味では、日々新しい仕事に取り組んでいる大谷さんの成長のスピードには著しいものがあるでしょうし、その経験をさらに高めることで、大いに飛躍することが期待されます。

「新しい事に取り組む」ことの重要性。理解しているようで、日々の仕事の中で意識から外れてしまいそうな大事な視点について改めて認識させて頂く、いい機会となりました。

2.元々「他社と比べる」という発想が無い…巴コーポレーション・工藤美穂子さん

飲食業を経営されている工藤美穂子さんは、すでに松江市内で3店舗を出店されています。また、経営理念については既にしっかりとした想いを形にしたものがあり、それを前提に、さらなる事業の発展を目指し、特に経営方針・経営計画を明確にしたいとの目的を持ってセミナーに参加されました。

このセミナーでは、経営理念を考えている際にいくつかの自問自答を行いますが、その中に「わが社の固有の役割は何か」という設問があります。他社では無く、自社でなければならない理由。それが経営方針においては他社との差別化につながっていくため、理念策定における重要な要素です。しかし、工藤さんは、「わが社の固有の役割と言われても思いつかない。元々他社と比較するという発想を持っていない」と話されます。

一般的な感覚では、同業他社が多い飲食業界だからこそ、他社との差別化を明確にすることが必要で、その部分を追求することはとても大事な作業だと思う訳ですが、そこにはあまり関心がない。同業者の動向に一喜一憂せず、自らが信じた方向に突き進む。理屈っぽい私としては、自らの信じた方向が明確かどうかを判断するためにも、同業他社との比較は重要なのではないかと感じる一方、そんなことは気にせず、自分が信じる道につき進めることへの憧れ、羨ましさも感じます。

そして、同業者には関心がないと言う一方で、従業員に対しては社員満足度の向上や負担軽減にかかわる配慮をとても重視されています。働く人にとって負荷の大きな飲食業であるからこそ特に配慮していると話されます。それは、外部環境はコントロールできないが、内部環境はコントロールできる。外部環境が激しく変わっても、社内がしっかりしていれば乗り切れる、という意味合いだと考えています。外部環境のせいにしない経営、それの工藤さんなにの表現が、“他社に興味が無い”ということではないかと理解しています。その工藤さんが、今後、経営方針・経営計画をどのように策定され、どんな方針を示されるのか、非常に楽しみにしています。

3.困っている人がいるから自分がやる…漢方桃李・引野里佳さん

薬剤師の資格を持つ引野里佳さんは、漢方薬専門の相談薬局を起業されました。西洋医学の足りないところを漢方によって救うことが出来ると考え、事業を興されました。元々薬剤師で、“経営”という観点での知識が少ないのでセミナーを受講されたとのことです。

現在、特に女性をターゲットとし、西洋医学では解決できない心や体の不調に対し、漢方薬を用いてフォローしていくことを目指されています。体の不調の原因は人それぞれであり、いわゆる西洋医学の処方では効果が表れにくい方がたくさんいることを、薬剤師として働いていた現場で実感されていたとのこと。引野さんは、そういった実態を見て、「漢方を使うことでその人らしく生きるための治療の選択肢を増やすことができる」と起業を決意されたという経緯があるそうです。

ご存じの方も多いかもしれませんが、「薬剤師」というのは非常に需要のある資格です。いわゆる調剤薬局をはじめ、その資格を活かして働ける場所であれば、安定した収入を得て生活することが可能です。しかし、その環境を選ばず、敢えて漢方相談薬局を開業されるのは、まさに前述の強い目的意識と使命感によるものでしかありません。「困っている人がいるから自分がやる」という志にはあらためて経緯を表しますし、ぜひ成功して頂きたい起業家の一人です。

事実、起業を思い立たれてから、実際にスタートにこぎつけるまで、かなりの年月を費やされたとのこと。他地域では類似の事業モデルがあるそうですが、島根県ではまだ事例のない事業です。様々な方からの反対もあったということです。それでも起業された。そういう方を支援するのが同友会の使命だろうし、そういった方と一緒に学び、成長していく機会が得られるのも同友会ならでは、と考えています。ぜひ、素晴らしい経営指針を策定され、世の中に役に立つ事業が展開されることを期待しています。

フォローアップの様子その2(撮影吉岡さん)

今回のフォローアップの中で、私の印象に残ったやりとりをまとめてみました。みなさんに共通するのは、「起業家」であるということです。起業家の持つ強い想い、すなわち「この事業をやりたい」という熱意に、後継経営者である私は大いに刺激を頂いています。この熱意の積み重なりが島根を動かし、変えていくのだと実感します。こういった気づきを得られるのも、島根同友会の経営労働委員会に所属させてもらっている役得です。今後とも、会員のみなさんの経営指針策定を支援しながら、自分自身の成長と自社の発展に向けて努力を続けたいと考えています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*