2012
02.24

2012年2月18日、愛知中小企業家同友会の主催で、あいち青年同友会合同例会が開催されました。

今回の例会は、同友会会員の中でも、いわゆる「青年部」と呼ばれる青年経営者(愛知の場合は41歳で卒業)で構成される青年同友会連絡協議会が運営する合同例会です。愛知県はこの青年同友会の組織規模が大きく、県内12地区750名を超える規模を誇っています。島根県中小企業家同友会は、島根県全体で会員が約180名ほどですので、都市規模や歴史の違いがあるとはいえ、その格差が際立ちます。今回、今年の10月に島根県で開催される青年経営者全国交流会に向けた準備とPRを兼ねて、島根同友会のメンバー13名でこの合同例会に参加してきました。合同例会は、基調報告、分科会、交流会から構成されますが、今回、基調講演での気づきを整理しておきます。

基調講演は、えびせんべいの製造・販売を全国規模で展開する、スギ製菓株式会社の杉浦代表取締役、杉浦常務取締役、のお二方からお話を頂きました。スギ製菓は、杉浦社長が創業され、来年の4月に、息子さんである杉浦常務に経営を引き継がれるそうです。親子お二方で報告をされるというスタイルも初めて聴講しましたが、後継社長である私もそれぞれの立場でどんなお話があるのか、どのようなバトンタッチがなされるのかについて関心を持って聴かせて頂きました。

基調講演で報告するスギ製菓㈱杉浦社長

1.事業継承は経営指針があるから心配いらない~15年にわたる経営指針の深化

最初は、杉浦社長からの報告でした。その中で大変感銘を受けたのは、「事業継承は、経営指針があるから心配していない」という言葉です。

杉浦社長は1970年に創業後、必死の努力で事業を拡大する一方、事業の浮き沈みや様々な経験を経て1990年に同友会に入会、そのとき初めて経営の勉強を始められたそうです。その後、1997年に初めて経営方針書(経営指針)を作成し、その後15年間、毎年策定し、発表をされているそうです。経営指針に取り組んでいくうちに段々と会社が良くなってきた。そして、5年前からは全社で経営方針書を作成できるようになったそうです。その間も、主要取引先(菓子問屋の倒産)、ニッチ市場への転換、直販店プロジェクトへの取組み、など、様々な事業展開について話を伺いましたが、その背景にしっかりとした経営指針があることが、現在の成功につながっていることは間違いありません。

そして、経営方針書があるから事業継承は心配していないと言い切る自信。そのことのすごさ。経営指針をつくること、それを継続することの大切さを感じる報告でした。当社も、今年度初めて経営指針を作成し、この3月に初めての発表会を開催します。当社の経営指針は私が一人で作成したものですが、いずれはこれを全社員で作成し、共有化し、実践し、そして継続していく。そのことが自社の発展と成長に導いてくれるのだと改めて確信させて頂ける報告でした。

2.百見は一体験にしかず~研修で人間力を磨き、会社で人間力を活かす

続いては、杉浦常務からの報告がありました。スギ製菓では、200年存続企業を目指し、様々な研修や職員の人間力を高めるための場づくりに取り組まれています。掃除は全ての基本(トイレ掃除、ごみ拾い)、50kmウォーク、感謝祭、経営指針発表会、入社式、新年会、ふれあい見つけ旅(慰安旅行)、様々な社内の取組み、行事について紹介して頂きました。これらは全て社内で委員会やプロジェクトをつくって実施されるそうです。

こういった直接的な仕事以外の取組みをなぜ行うのか。その説明として話されたのは、「百聞は一見にしかずというが、百見は一体験にしかず。」という考え方です。いくら教えても、やって見せても、実際に一回体験させることに勝るものは無い、ということです。体験こそが気づきや学びを生む。同友会が実践を重視するのもまさにそこでしょう。さまざまな研修や行事で人間力を磨き、そして、会社でその人間力を活かす。それが事業の発展につながると考えられています。

しかし、スギ製菓の職員さんの中にも、こういった取組みを理解出来ない人もいるし、結局理解できずに辞めていかれる方もいるそうです。そういった現実の課題も報告して頂きました。当社でも、社内クリーンアップ作戦、清掃ボランティア活動、社外勉強会への参加、など似たような取り組みを進めていますが、ある時社員から「最近、仕事以外のことが多すぎる。もっと仕事しましょうよ。」という声が上がりました。その職員のいう“仕事”とは一体何なのか。20年以上の経験がある社員がそのように発言する当社の現実に気分が沈む時もありましたが、今までやっていなかったことを急に始めた時の反応とはそういうものなのでしょう。今回、現在は素晴らしい活動をされている会社であっても、内情・経緯は様々、多種多様の葛藤を経て現在があるのだという現実も併せて教えて頂き、たいへん勇気を頂いたと感じています。

3.同友会のツールを活かして経営目標達成を目指す

すばらしい事業実績を誇るスギ製菓ですが、この近年は3年連続の減収減益と苦戦しているそうです。それでも、来年度は30期30億円、という目標を掲げられています。その達成に向けて、同友会のツールや分析手法を活かして取り組まれており、実務的な面でも大変勉強になりました。

一つはSWOT分析の活用です。SWOT分析自体は、比較的ポピュラーな分析手法ですが、スギ製菓では、半年ごとにSWTO分析を行い、その半年間の様々な環境変化をタイムリーに施策に反映させ、経営指針書の見直しと共有につなげられているそうです。確かに、業種業界を問わず変化の激しい時代、1年単位で分析を行っていては経営判断を誤る可能性があります。実際に見せて頂いた分析結果をみると、半年ごとの分析でもかなりの変化を把握されていました。半年ごとに毎年実施することで分析能力自体が高まっているということもあるでしょう。見習わなければならない取組みと感じます。

もう一つは企業変革支援プログラムの活用です。企業変革支援プログラムは同友会の独自ツールで自社の立ち位置を把握するのに役立ちます。島根同友会でも導入を進めており、当社も一度ステップ1を実施しました。スギ製菓では、これを主要幹部が全員で実施し、その結果を一覧で比較するという取り組みをされています。一覧にすることで、チェック項目によっては認識に差がある箇所が出てきます。その原因を確認、追求することで、経営理念からつらなる経営指針の共有化がさらに図られ、実践・実行にも効果的に繋がっていくという訳です。当社では、私が一回実施してそのままにしていました。せっかくのツールを十分に活かせていません。こちらも大きな気づきを頂きました。

会場となった名古屋国際会議場

スギ製菓では今後の5カ年計画を策定され、東北へ第二工場を建設するという計画を持たれています。200年企業という大きな経営ビジョン、それを実現に導く経営指針、人間力形成の取組み・仕組み、様々な分析手法やツールの活用・実践、地域に根差す中小企業が目指すべき取組みの模範、学びの宝庫とも言うべき報告でした。

島根同友会に入会以降、県外の大会や例会に参加するのは今回が2回目です。全国にはいかに優れた中小企業があり、様々な取り組みをなされているかがよくわかります。島根にいると県外に出ていくのは正直億劫になるときもありますが、こういった学びの機会を定期的に持つことを自分自身で決め、その学びを自社の事業の発展に結び付けていきたいと考えています。

2012
02.16

社長の温泉めぐり41 いわみ温泉(霧の湯) 島根県邑南町

私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。

今回41箇所目は、島根県邑南町の「いわみ温泉 霧の湯」です。訪問日は、2012年2月10日です。いわみ温泉は、邑南町にある「香木の森公園」にあります。この施設は、四季折々のハーブ約240種が楽しめる大規模公園で、園内の散策やハーブや木の実を使ったクラフト教室や体験ができる施設等がある、邑南町を代表する観光スポットでもあります。霧の湯は、その公園の一角をなす日帰り温泉入浴施設です。香遊館(こうゆうかん)と名づけられたレストラン及び宿泊施設と隣接しており、2つの施設が、公園の中核的な施設としての役割を担っています。

いわみ温泉 霧の湯 施設外観

泉質は、アルカリ性単純温泉です。源泉温度が27.5℃と低めなため、加温・循環式の温泉となっています。泉質や適応症に特別なものはありませんが、湯あたりが柔らかく、誰にでも入りやすい温泉、ということができます。施設は和風の趣をもちながらも近代的な造りで、高級感もあります。風呂はフロントから階段で2階に上がった位置にあるのですが、丘陵地の地形を上手く使ってあり、見晴らしのいいスペースに配置されています。内湯と露天風呂に分かれています。

内湯は、さほど広くはありませんが、石張りで天井も高くガラスの開口も大きいため、開放感が高いです。浴槽は、大型のものと少し小さめのものと2つありました。何か差がつけられているのかもしれませんが、その違いは記されてはいませんでした。また、コンパクトながら、サウナ、水風呂がありました。サウナ好きの方にはいいかもしれません。

もう一つの特徴は、露天風呂です。露天風呂には、大小3つの風呂があり、1つは4~5人用、あと2つは、1~2人用というサイズで、こじんまりとしたスペースで、専用風呂のイメージでゆっくり浸かることができます。露天風呂は、ハーブ湯、薬草湯となっており、内湯とは別の楽しみ方が出来るように工夫されています。なお、内湯から露天風呂への出入り口はドアが二重になっており、出入りの際に冷たい空気が出入りしないように配慮されています。その分、出入りが面倒ではありますが。

内湯の様子(湯気でよく見えず)

洗い場は7箇所あり、仕切りは無いタイプでしたが、隣との間隔は比較的広い方です。リンスインシャンプーとボディソープ、さらに“ひのき泥炭石”がおいてありました。ちなみに、この石鹸、さまざまな温泉施設でみやげ物として販売されています。結構メジャーな商品のようで、目にしたことのある方も多いと思います。ですが、実際に風呂の中に置いてあるところはそんなに多くないので、使い勝手を試してみるにもいいと思います。

洗面は4箇所ありましたが、ドライヤーは2つのみ配置されていました。ロッカーは50~60程度あり、正方形の一般的な大きさで、上着などを掛けることはできないタイプです。一方、2Fの風呂場入り口前には、休憩室を兼ねたロビースペースがかなり広く確保してあり、開放感ある印象を与えています。

この施設は、入浴料が大人600円です。島根県内の他の施設との比較で考えると、やや高めの印象を受けます。 入浴券は1Fのフロント脇の券売機で購入し、隣の受付の方に手渡しします。なお、2Fの風呂場入り口前にもフロントがあります。以前はこちらで入浴券を取り扱っていたようです。現在では、薬湯やハーブ湯のお知らせが掲示してありました。

1Fフロント脇のみやげもの売り場

私が訪れたのは、雪のちらつく2月の平日でしたので、さすがに閑散としているかと思いきや、思いのほか利用者の方がいらっしゃいました。時間帯が夕方近くであり、スキー・スノーボードを積んだ車が数台駐車場に停まっていました。この場所は、スキー場が近いこともあり、その帰りに立ち寄るというパターンもあるようです。営業時間も午後9時までと遅めですので、リクリエーション帰りに夕食も兼ねてゆっくり、という使い方もありそうです。香木の森公園の見どころであるハーブが隆盛のいい時期だけでなく、冬場はスキー客に利用される温泉施設、そういう立地的な特性もあるようです。

2012
02.09

盛和塾山陰 新入塾生交流会~学びとは、実践して成果が上がってこそ学び~

2012年2月6日、盛和塾山陰の新入塾生交流会が開催されました。

昨年の7月から、「盛和塾」に入塾しました。これまで、毎月の自主例会や、昨年10月に松江で開催された塾長例会など、様々な学びの場に参加してきました。盛和塾とは言うまでもなく、京セラ・第二電電の創業者で日本航空の会長でもある、稲盛和夫さんが主宰する若手経営者を育成するための塾です。事業経営に携わっていらっしゃる方であればご存じの方も多いでしょう。私も入塾以来半年以上経ちました。このブログでは取り上げたことがありませんでしたが、これから少しずつ書いてみたいと思います。

盛和塾は全国に地域別の組織がありますが、島根・鳥取には「盛和塾山陰」という組織があり、現在111名の会員がいらっしゃいます。今回の交流会では、私をはじめ最近、盛和塾に入塾した会員に対し、盛和塾とは何か、また先輩塾生が入塾して得られたことなどを聴き、今後の盛和塾での学びに活かしていこうという趣旨で開催されたものです。会の冒頭、盛和塾山陰の代表世話人である河越晴皓さんから、“盛和塾とは何か”というお話を伺いました。そこでは、単なる塾の説明を越えた大きな学びを頂くことができました。その概要を整理しておきます。

交流会の様子

1.事業の隆盛と人徳の和合~盛和塾の意義~

盛和塾とは、稲盛和夫さん(以下、「塾長」といいます。)から学ぶ、(又はその教えを学び合う、)という点が唯一の特徴である、という説明を受けました。これに対し、例えば中小企業家同友会などは“お互いの経営を学び合う”というスタイルだと言えます。

そして盛和塾という名称、これは、稲盛の「盛」、和夫の「和」を取って付けられた名称である一方、そこには、“事業の隆盛”の「盛」と、“人徳の和合”の「和」という意味が込められているそうです。この2つが一体であること。それが塾全体の教えのベースにあります。つまり、経営者たるもの事業を発展させ伸ばしていかなければならないが、それにあわせて、人間としての心を高めることが必要であると教えられます。盛和塾のホームページにも「心を高める、経営を伸ばす」とあります。まさにこのことを指しているのでしょう。

そして、もう一つ根底にあるのが「因果応報」という考え方だそうです。よい行いをした人には良い報い、悪い行いをした人には悪い報いがある、という意味ですが、経営に関しても同じだという考え方です。プラスの想いを重ねる、いい言葉を重ねる、いい態度を重ねる、いい行動を重ねる。その結果、経営にもいい結果がもたらされるという訳です。そしてその特徴は、「後から結果が出る仕組み」であること。しかも“後”とは、1カ月後かもしれないし、1年後かも、あるいはもっと後かもしれない。だから多くの人はそのことを中々信じ難いが、それ(後で結果がでる)を信じること。そこが盛和塾で学んでいくための大事な要素であるようです。

私も、経営者になりたてのことは悲観的な思考、マイナスの発言が多かったです。今は少し変わってきたと思います。自分自信が前向きになってから、会社も少しずつ良くなってきたような気がします。今後とも、“後で結果が出る”ことを信じ、常に前向きにいいことをしていくよう、心がけたいと思います。

2.数字・成果に厳しい~利益に対する執着とその意味~

盛和塾の特徴の一つとして、「数字・成果に厳しい」という点があるそうです。

特に、利益に対する執着がすごいというお話を伺いました。経営の勉強会ですから、数字や成果に厳しいのは当然かもしれませんが、利益を出すことが事業を維持し、発展させるための源泉になるのは間違いありません。さらに、私がこの半年ぐらいの入塾で感じるのは、事業を発展、拡大させるということに対する意識・執着がとても強い、ということです。これは非常に特徴的で、かつ大事なことだと考えています。

経済の低迷する山陰の地方部、或いは我々のような公共事業の分野では「現状維持でも十分じゃないか」という雰囲気があります。事実、市場が縮小している訳ですから、現状維持なら頑張っている方かもしれません。私も以前はそう思っていました。しかし、事業を伸ばしている経営者は、そのような感覚とは一線を画して事業の発展・拡大を目指し、実現しています。それは事業の発展・拡大が利益を生み、その利益が事業の継続を確かなものとし、そして新たな雇用や納税につながり、地域の活性化になるという考え方が根底にあるからだと思います。

盛和塾山陰で長く学ばれた経営者の方をみても、地域の経済状態などの逆境をものともせず、大きく事業を発展させている方が多いという印象を受けています。それはまさに盛和塾での学びのおかげなのでしょう。少なくとも、事業を発展させようと強く思わなければ発展するはずもありません。その学びの本質、熱意を私も吸収し、事業の発展につなげたいと考えています。

3.学びとは、実践して成果があがってこそ学び

今回、特に印象に残っているのは、「学びとは本で読んだり人から聞いたことではない、実践して成果が上がってこそ学びだ。」という河越代表世話人の言葉です。この言葉、心に突き刺さります。最近、やもすれば、様々な経営者の方のいいお話を聴いて、学んだ気になっていた自分に気が付くとともに、「実践」、そして、「成果」ということに対する強い想い、執着、熱意、といったものを強く感じさせて頂きました。

そして、経営者は、自分自身が“実践・戦略家”でなくてはならない、とも話されました。企業がどうなるかは、いうまでもなくトップで決まります。だから、そのトップは戦略の実践家でなければならない。盛和塾の学びを通じて実践し、戦闘体制を常にレベルアップしていく。具体的には、社内に“当事者意識の強い人”をたくさん造ること。経営者の仕事は、成果を上げることのできる当事者の育成にある、と教えて頂きました。

盛和塾で学び、活躍されている経営者の方々には、“戦う姿勢”とでも言うべき、事業への厳しさがあります。盛和塾山陰には代表世話人と呼ばれる方が3名いらっしゃいますが、人間性にも優れた戦う経営者の代表格という印象です。事業に対する強い気持ち、熱意を持つことの大事さ、改めて感じさせて頂く機会となりました。

当日のお料理(会場は松江市のリバービュー)

盛和塾山陰では。昨年10月に塾長例会と呼ばれる、稲盛和夫塾長を招いての例会(全国で年間10回程度、山陰開催は5年ぶり)が開催され、全国から約700名の塾生が集まりました。その際、盛和塾山陰も大きく会員数を増やしています。その影響で、まだ会員どおしが顔と名前が一致しない状況があります。そんな中で開催された交流会、たくさんの塾生のみなさんと交流し、またみなさんがどんな事業を行われているか理解することが出来ました。

みなさん様々な課題を抱えながら、前向きに経営に取り組まれている方ばかりで、私自身も大きく刺激を頂きました。今後とも盛和塾での学びを実践し、成果をあげる経営を進めていきたいと思います。

2012
02.02

2012年1月27日(金)、島根県中小企業家同友会 松江支部1例会が開催されました。

この日は、「田舎は日本未来の最先端!~“食べる花ビジネス”が中山間地域の雇用と、現金収入を得る手段につながり、地域を変える~」と題して、有限会社エヌー・イー・ワークス 代表取締役社長 三澤誠さんから報告を頂きました。同社は、島根県奥出雲町の会社で、タイトルのとおり、今回の報告では、同社の現時点の主要事業ある電子部品製造等ではなく、現在大変注目を集めている、「DEF(Dry Edible Flower)」と呼ばれる、食べる事の出来る食用の花を活用したビジネスが対象でした。具体的には、DEFを使って「押し花」をつくり、これを装飾に利用したお菓子を製造販売したり、また、最近ではDEFを単独で販売するというビジネスを展開されています。

今回、注目されているビジネスの実情というだけでなく、三澤さんの経営理念、よりどころとしている考え方等、地方で事業を行う者として、様々なことを学ばせて頂く機会となりました。私が特に感じたことを3点整理しておきます。

報告するエヌ・イー・ワークス 三澤社長

1.雇用の場の確保と現金収入を得る手段にこだわる

エヌ・イー・ワークスのホームページの冒頭に、『地域に根差す雇用の場の創出、現金収入を得る手段の創出にこだわり続けます!』というメッセージがあります。これは、同社のミッション、目的として事業運営の根本にある考え方です。ここで言う、“雇用の場”とは、言うまでもなく同社においてたくさんの地元の方を雇用するということ、“現金収入を得る手段”とは、今回のテーマであるDEFの製造に際して、地域の主婦や高齢者の方に在宅ワークとして押し花づくりを委託し、それが現金収入につながっていることを指します。

一般にビジネスを考える際は、ニーズ・ウォンツ、又は問題・課題の把握、といったことから始めるのでしょうが、三澤さんの場合は、「雇用と現金収入」からスタートしています。このアプローチが良かったのかどうかはともかく、その想いが強ければ、成功に導くことができるということを体現されています。一般に言う「ビジネスモデルの構築」といったスマートな話では無く、泥臭いけど強い気持ち、まずそれが経営には必要なのだということを学ばせて頂きました。

今回の報告の中で、「DEFを奥出雲の『葉っぱビジネス』にしたい」というお話がありました。「葉っぱビジネス」とは、ご存じの方も多いと思いますが、“つまもの”と呼ばれる、料理を彩る季節の葉や花、山菜などを販売する農業ビジネスのことです。徳島県の「株式会社いろどり」が有名ですが、DEFは、確かにこれに近いものがあります。地域の特性を活かした、地域の人が、地域で出来るビジネス、それが地域の人を元気にし、ひいては地域を元気にする。まさに、地方部における理想的なビジネスと映ります。

2.行動指針~速いこと、勇気を持つこと、継続して努力すること~

報告の中で印象に残ったことして、2011年度の「行動指針」として示された3つの指針があります。「速いこと」、「勇気を持つこと」、「継続して努力すること」、の3つなのですが、その意味を説明するために、早い、勇気、努力の対義語が示されています。しかし、それは単なる対義語ではなく、三澤さんのその指針にかける想いが伝わる表現が用いられ、考えさせられる示唆があります。

ア)速い⇔怠慢~速く出来ない原因を見つけようとしないのは「怠慢」

イ)勇気⇔無知~勇気が持てないのは無知だから。情報を収集して知恵として集結。

ウ)努力⇔無目標~継続して努力出来ないのは目標が無いから。目標が無いから苦痛。目標があれば努力は楽しい。

地域に雇用を確保する、現金収入の手段確保を追求、うたい文句としては美しいですが、その現実は極めて厳しいものだと思います。事実、三澤社長も昨年、人員整理に踏み切らざるを得ない状況に陥ったとの説明がありました。だからこそ、早く出来ないのは怠慢、勇気が無いのは無知、努力出来ないのは無目標、とまで言い切り、厳しさと優しさを持って社員と一緒になって新しい仕事に取り組んでいけるのだと感じます。

3.上善水如~求められる形になる~

報告の最後に、三澤さんの好きな言葉、「上善水如」について話がありました。

三澤さんがあるインタビューでこの言葉について述べられています。「水は高いところから低いところへ、丸い器に入れれば丸く見え、池の中の水は穏やかであり、台風の荒れ狂う海の水は猛々しい。我々のように歴史も無く、自分たちの技術だけで一生懸命頑張ってくれる社員しかいない会社にとって、その時その時代背景に合わせてたえず変化していくことにしか生き残る道は無い。」とあります。

現在の三澤さんの会社は、元々の事業である電子部品製造から、食品加工、人材派遣、など、様々な事業に取り組まれています。その根底には、地域における雇用の確保があります。それを実現するために、時代に合わせて変化していく。まさにそのとおりを実践されています。しかし、変化することとは、三澤さんの会社だけでなく、おそらくはほとんどの会社に必要なことです。各社は、自社の存在意義、資源をその時代背景に併せて活かし、新しい事業・市場・顧客を創造していく。会社は変わり続けなければならない。その重要性を改めて感じさせて頂きました。

報告の途中で回覧されたDEFの押し花

最後の補足報告で、「地域がなければ会社もない、だから地域を残さなければならない。」、「高齢者をお荷物のように扱ってはならない。活躍できる場をつくらなければならない。」とのお話がありました。言葉だけではなく、それを実現するために、日々実践されているその姿には感服するしかありません。三澤さんは、元々、地元の社会福祉協議会で福祉の仕事に従事されており、その後、あるきっかけで現在の会社を起業されたという経歴をお持ちです。三澤さんの事業運営の考え方には、その時の福祉的な思想が色濃く反映されているように感じられます。そして、その姿勢は今後、中間山地で事業を営む経営者が持つべき必須の要件になるのではないかと感じたところです。