島根県中小企業家同友会

島根同友会松江支部8月例会 ~人材育成は、社風と風土、コミュニケーションづくりから~

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2012年8月24日(金)、島根県中小企業家同友会 松江支部8月例会が開催されました。この日は、『「ありがとう」があふれる会社に!日本一社員の幸せなタイヤ屋を目指して~倒産の機器を乗り越えてきた「学びの姿勢」「理念経営」の実践~』と題して、有限会社オーリー 代表取締役 太田利昭さんから報告を頂きました。同社は、島根県松江市と出雲市で、タイヤの販売に特化した事業を展開されている会社です。

太田社長は、タイヤ販売会社に就職の後、独立。一時は業績を伸ばしたものの、その後仕事が激減して倒産寸前になり、少人数で再スタート。現在は、社員5名(パート1名)で、学びの姿勢を徹底し、理念経営により経営を立て直されています。オーリーには、当社も社有車のタイヤについてお世話になっています。若い従業員さんの明るくて爽やかな対応が印象的な会社です。その会社を運営する太田社長がどのような経緯で現在に至り、今後どのように事業を展開されようとしているのか、興味深く話を聴くことができました。私が特に感じたことを3点整理しておきます。

報告する(有)オーリー太田社長

1.自分達の現在位置を知り、同業者が嫌がる仕事をメインに据える

太田社長が最初に話されたことの一つに「自分達の現在位置を知る」ということがあります。まず自分達のことを知る。その上で、業界の他社がどのようなレベルに居るのかを知る。太田社長はとにかくライバル店の視察を徹底するそうです。自動車用品販売最大手のオートバックスをライバルに据え、店頭に頻繁に足を運び、何をいくらで売っているのか、どんな管理がされているのか、その業界ならではの目線で情報収集を続けられています。同じような規模の会社ではなく、敢えて業界トップの企業を対象にして会社のレベルを把握する。自分達の位置を知るためには重要な観点だと感じます。

その結果として見出されたのが、「同業者がいやがることをメインの仕事に据える」という方針です。同業者が嫌がる仕事とは、要するに“面倒くさいこと”と言い換えてもいいでしょう。具体的には、外車の対応、中古タイヤ、持ち込みの対応、等だそうですが、オーリーはそのいずれも対応しています。オーリーがするにしても面倒くさいのではないかと思います。しかし、それをメインの仕事に据えることで、色々な方に喜んでもらえ、同業とのバッティングを減らすことにつながる。同業者と争うのではなく、タッグを組んで自分達の業界自体をよくしていく。その方向に行きつくまでには様々な試行錯誤があったことと思いますが、太田社長の一貫した学びの姿勢があったからこそ、たどり着くことが出来たのでしょう。

この、“同業者の嫌がる仕事をメインに据える”という発想。世の中には、同じような考え方を実践し、成功している会社がたくさんあります。当社も、温泉井戸や水井戸の改修・メンテナンス等の仕事を拡大しようと取り組んでいますが、これも実は面倒くさくてあまり他社がやらない仕事です。しかし、そういった場面でこそお客さまは困っておられるし、お役立ちのチャンスがある。そういった着眼点に今一度立ち戻り、自社の取組みも加速させていきたいと感じたところです。

2.タイヤへの特化とターゲットの明確化

太田社長の経営戦略に関する話も、中小企業が進むべき方向性として大きな示唆を得ることがあります。それは、同じ商品を売っている中小企業と大手企業があったときに、中小企業はどう対応すればいいのか、ということ。太田社長の取った対応策は“特化する”ということと、“ターゲットを明確にする”ということです。よく言われることではありますが、実際に出来ている会社はどれだけあるのか。それを徹底してやることの意義を知ることができました。

タイヤは、どこでも買える商品です。売っている商品の品質は同じ。値段で勝負すれば大手にはかなわない。だから、“タイヤに特化”する。その考え方として、「やらないことの明確化」「捨てることの明確化」を徹底されています。“やらないこと”の例は、車の販売。タイヤ以外のことは社内ではやらないようにされています。また、“捨てること”にした例は、保険の代理店。苦手なことはやめる。どうしても求められれば他社に出す。そうしていくうちに、みんなが“タイヤのことだけを考えるようになった”そうです。

実際、オーリーは国内全メーカーのタイヤを取り扱い、中古タイヤも扱っています。だからタイヤに特化しなければ、それ以外のことに手をかけている余力もない、という実態もあるでしょう。そして、島根県内で唯一とおっしゃっていましたが、オーリーでは全メーカーのタイヤを実際に装着して運転してみているそうです。そこまで徹底してやっていること自体が自信につながるし、商品に関する知識だけでなく経験に基づいた自分なりの評価が加わる。それがお客さんに喜んでもらうことにつながり、さらに頑張る原動力になる。いい循環ができあがることで、会社の業績もよくなったそうです。

そして、オーリーの“ターゲットの明確化”その答え、それは“タイヤで困っている人”。具体的にはカーディーラーさんだそうで、実は、カーディーラーさんは、タイヤの取り扱いに困ることが非常に多いのだそうです。中古タイヤを取り扱っているのもそこに意味がある。一つ一つはちょっとした用事であったり、面倒くさいことかもしれません。しかし、そのちょっとしたお役立ちの積み重ねが、オーリーの付加価値につながっているのでしょう。

3.人財育成=社風と風土、コミュニケーションづくり

太田社長は人財育成にたいへん強い思い入れと熱意を持って取り組まれています。その目標は「どこの会社からも求められる人財」。一般に、会社の寿命が20年とすれば、就職してから定年までの間に倒産する可能性がある。その時、他社から求められる人財を育成しておくのが自分の使命、と考えられています。そういった人財の基本は“人間力”。太田社長の考える人間力とは、他人のために自分の時間を使う、なりたい自分像がある、人柄がいい、仕事・家族・仲間・自分を大切にする、など、明確なものがあり、そういった人財を目指して、様々な社内の取り組みをされています。

月に3~4回開催されるという社内勉強会では、商品の勉強会、商談の勉強会、といった直接的に仕事に係わるものに加え、自分の好きなことをプレゼンする“伝達勉強会”といった試みを継続されています。また、年に一度は社員旅行を兼ねたベンチマーキング視察を開催され、一流企業のもてなしや仕事ぶりを学ばれています。また、スーパーオートバックス(…というお店があるそうです。広大な敷地、売場、駐車場を備えたエンターテイメントカーライフメガストアと定義されています。)が隣にあったとき、それでも選んでもらえるためにはどうするのか?という課題を持ち、実際にスーパーオートバックを見学する。中々できないことです。そういった取組みを社員と一緒に地道に続けていくという姿勢こそ、経営者として太田さんから学ばなければならないと強く感じたところです。

最後に、太田社長の考える人財育成とは、“社風と風土、コミュニケーションづくり”だと総括されました。そのことは、前述の勉強会だけでなく、朝礼の徹底や日頃から社員を気にかけて行動する姿勢など、オーリーの社内の様々な場面で日常になってきているのだと感じます。

今回も盛況の松江支部例会

今回、報告の中で、一緒に報告を聴きに来ていたオーリーの2名の社員さんが参加者を前に少しだけ話をする時間がありました。まだ1年目の藤原君は、「会社の勉強会などを通じて学ぶ場がたくさんある。この会社は人間として成長できる場だと思う。」と話し、5年目の草野君は、「元々人と係わるのが苦手だったが、仕事を通じて人が好きになった。お客さまに喜んで頂くことを学び、もっと人と係わりたくなった。」と、自分の言葉で自分の会社について語りました。藤原君は10代、草野君も20代前半です。そんな若者が、たくさんの経営者の集まる同友会の例会の場で、全く臆する事無くどうどうと自分の言葉で話ができる。その事だけみても、太田社長の人財育成が間違っていないことを証明しています。私自身もこの春から新卒の2名の新入職員を迎えています。“人財育成”ということに関し、今一度真剣に、実直に向かい合うことが必要だと強く感じさせて頂く、大変気づきの多い例会となりました。

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