2013
06.13

2013年6月11日(火)、島根県中小企業家同友会 松江支部総会記念例会が開催されました。この日は、『社長さん!!『夢』をみるのはいいけれど・・・具体化しなければ実現できない!NO2が会社を変える!!~「夢」の具体化・「数字」の見える化してますか?~』と題して、モルツウェル株式会社 専務取締役 野津昭子さんから報告を頂きました。同社は、平成8年にほっかほっか亭FCとして創業。その後、平成16年にシニアフード事業に参入するものの、業績が悪化。その後、経営指針の策定をはじめとする様々な改善施策に取り組み、復活。現在は全国はもとより、海外進出を視野に入れるまで成長されています。

野津専務は、社長である野津積さんの奥様です。妻であり、右腕でもある、創業時代から公私を共にするパートナーです。苦しい時代を共に過ごし、社員との係わりに関しては大変苦い思いをされたそうです。それを乗り越え、現在の成長を実現されるまでの取り組みをNO2の視点で報告して頂きました。大変興味深い報告でした。ごく一部ですが整理しておきます。

報告するモルツウェル㈱野津専務

1.人は評価されたがる生き物~社員全員で評価する「360度評価」の導入~

今回の報告の中で、私も含めて多くの方が興味を持って聴いたことの一つに「360度評価」の導入があります。モルツウェルでは賞与を年4回(額はわずかとのことですが)に分けて支給し、その評価は社員(現場のパートさんを除く)全員がipadを使って入力し、その集計結果によって評価(支給額)が決まるというシステムだそうです。野津専務は、「人は評価されたがる生き物」だとおっしゃいます。だから、みんなで評価してあげる。「評価」という言葉を「認める」と置き換えてもいいかもしれません。お互いをお互いで認め合う。それが社員の意欲を高め、新たな行動に移すための原動力になるのでしょう。

具体的な運用に関しては、社長、専務は評価に加わらず、それ以外の社員全員で評価するとのこと。評価するのは、モルツウェルの行動指針に示された10項目の行動を実践できているかどうか。全員が全員を評価するから不公平感がない。少なし、経営者の好き嫌いで評価されているのでは?といった疑心暗鬼は生まれません。全員でやると決めた行動指針について、各人の実行状況が明確に見えてくるので、社員一人一人も自らの行動を反省し、改善に活かすことが出来る、という前向きなスパイラルを生み出すための仕組みと言えます。

この話を聴いて思い出すのは、平成23年度人財塾(第3回)で講演を聴いた株式会社ライブレボリューションが採用されているシックス・メンバーズ・バリエーションという仕組みです。「自分達の給料は自分で決める」というコンセプトの制度で、給与と賞与を従業員自らが決めるという仕組みです。現在のモルツウェルさんの制度は賞与のみが対象のようですが、基本的な考え方は通じるものがあると思います。なお、この時の講演では“人格的に優れ、かつハイパフォーマンスの人を採用していないと出来ない仕組み”と話をされていました。一人一人が誠実に、謙虚に他人を評価できる前提ですので、考え方は興味深いものの、自社にすぐさま取り入れる状況にはないという感想を持った記憶があります。

導入に際しては様々な懸念もあったのではないかと思いますが、こういった新しい試みを思い切って取り入れ、実践に移していくというモルツウェルさんの行動力に大変感心するところです。報告後、会場からもこの仕組みに関して様々な質問が出ていました。モルツウェルでも回を重ねるごとに評価が安定してきているというお話もあり、いずれ詳しく聴かせて頂きたいと考えています。

2.“人”で描く組織から“役割”で決める組織へ

野津専務の報告のポイントの一つに「業務分掌の大切さ」がありました。モルツウェルでは組織図を描く際に、業務分掌(職務)、部門理念、評価対象数字、をあわせて整理し、明示されるそうです。そして、組織図を描く際は、“人を先に配置するのではなく、役割を先に描く”。これが重要だという指摘です。

モルツウェルでも以前は“人”を思い描きながら組織図を描いていたそうです。しかしそれでは、仕事がその“人”個人に依存してしまう。また、その組織の仕事の領域が不明確になる場合もあるかもしれません。要員的にも限られる中小企業では、人の顔を描いて組織を作りがちです。当社もそうです。しかし実は、そのことが、“○○さんの代わりがいない、困った”という中小企業にありがちな問題の要因の一つなのではないかと感じます。有能な人であればあるほど、その人の代わりが居ないと思い込んでしまう。それを、“人”ではなく、“仕事(職務)”で見ることで解決する。そう簡単なことではないですが、中小企業の組織問題を解決する糸口になりうるのではないかと感じます。

当社も、近いうちに大きな世代交代を迎えようとしています。現在、その際にどのような組織を描くのがよいのか、考えています。当社は20名ほどの会社ですが、組織を考える際にはやはり“人”を中心に考えてしまいます。誰を部長にするのか、誰を課長にするのか、といったイメージです。しかし、今回の報告を聴いて、私自身、“人”を先に描いて組織図を作ろうとしていたな、と認識することができました。人ではなく、役割。当社の場合は業務領域、という整理がいいかもしれません。どういう業務領域があるのか、そこにどんな職務があるのか、重なっている部分はないのか、それらを先に整理し、そこに人を貼り付けることで、新しい当社の組織図が描けそうな、そんな気がしてきました。

野津専務は、報告の最後に「今の職務を自覚することが大事。○○というミッションを達成しているから認められる。そのようにお互いを尊重し合える組織、それが見えるようにする仕組みが大事。」と語られました。職務を明確にすることが、評価を明確にすることにつながる。その流れが明確になれば、それを“見える化”する仕組みをつくって運営していけばいい。今回の報告の全体像を端的に説明して頂いたように感じます。

3.No2という役割をになう女優~専務という役割を演じきる~

野津専務は、野津社長の奥様でもあり、まさに公私を共にするパートナーです。その野津専務がおっしゃるNo2像とは「No2とは、トップのために自分を犠牲に出来る人」と語られます。例えれば、親分のために仇打ちに行ける人。しかし、「仇打ちに行って本当に自分が犠牲になってはいけない」、とも言われます。自分を犠牲にするといっても、体を壊しては、心を病んでしまっては意味がない。社員との係わりに関して、過去の様々な苦い経験を乗り越えたからこそ、そのように話をされるのでしょう。

また、私は「No2という役割をになう女優、専務という役割を演じきるのが仕事。事業継承が済めば、あとは自分自身の為に羽ばたきたい。」ともおっしゃいます。“役割(職務)”という観点を重要視される野津専務ならではの感性だと感じます。誰しも楽な方に流れたいし、いざこざや言い争いは避けたい、和気あいあいとした中にだけ居たい、という思いがあるでしょう。しかし、経営者となればそうもいかない。会社を維持発展させ、従業員の雇用を守り処遇を高めていくためには、口うるさいことも言わなければならないし、職場の反発も受け止めなければならい、そのことに対する一人の人間としての葛藤もあるでしょう。それを、「役割を演じる」と捉える。“演じる”と安易に言えば、「ああそうか、結局表面上そう言ってるだけなのか」などと批判する人も出てきそう(モルツウェルにそんな低レベルの人は居ないと思いますが)ですが、そう言い切れるのは、やはり本気で取り組まれているからだろうし、仮に演技であっても結果が正しい(会社が良くなり、発展する)ことの方が重要、と考えられているのかもしれません。

社員も経営者も一人の人間。一人の人間として、社員の一人一人の人生を真剣に考える、様々な苦労や苦い思いを経て、魅力あるNo2となられた専務の存在、そして徹底した実務と仕組み化がモルツウェルという会社を飛躍させている。そう感じさせて頂くことができる報告でした。

グループ討議の様子

今回のテーマは「No2」。当社にもNo2である専務がいます。私の弟ですので、身内と言う点ではモルツウェルさんの場合と似通った面もあるでしょう。日々、会社のために奮闘してくれています。しかし、トップとNo2の役割、分担ということについてしっかりと話をしたことはありませんでした。野津専務によれば、「社長は未来を守り、社員とNo2は今を守る。」という役割分担。当社では今どうなのか、今後どうしていけばいいのか、これをきっかけに、話し合う機会を設けたいと考えています

  1. いつもお世話になります。
    美しくまとめていただき、恐縮です。毎日迷いながら、走り続けております(^^; 今後とも、よろしくお願いいたします。

    • 野津様、コメントありがとうございます。私も毎日悩みの連続です。しかし、立ち止まらず前に進んで行きたいと考えております。こちらこそ、よろしくお願い致します。