2013
10.04

私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。

58箇所目は、島根県江津市の有福温泉「小川屋旅館」です。訪問日は、2013年10月1日から3日です。仕事の宿泊でお世話になりました。2013年8月23日から24日にかけて江津市を襲った豪雨災害によって、有福温泉とその周辺が大きな被害を受けました。現在、道路や河川など行政が管理する施設等の災害復旧業務(県、市町村が国の災害査定を受けるための資料作成業務)を地元のコンサルタント各社が対応しており、当社もその一部に携わっています。

今回、協和地建コンサルタントは、日頃ご縁のある有福温泉町内の災害現場を担当させて頂くこととなり、泊まり込みで社員と一緒に現地入りし、現地作業に当たりました。当社は、有福温泉の外湯である、御前湯、さつき湯、やよい湯などの公衆浴場の泉源メンテナンス等で古くからお付き合いがあります。小川屋旅館さんも良く存じ上げているのですが、仕事で伺う際は宿泊でお世話になる機会がほとんどありませんでしたので、この機会に利用させて頂いたものです。

温泉街の中心にある小川屋旅館

小川屋旅館は、有福温泉街の中心部にあり、4階建ての建物が目を引きます。昭和の風情を残すの旅館のたたずまいは、有福温泉の鄙びた雰囲気と相まって、なにか懐かしい気持ちに駆られます。館内も複雑に入り組んだ構造となっており、悪く言えば分かりにくいのですが、館内を色々と探索する楽しみもあります。特にロビーから反対側の裏玄関からは外湯である御前湯まで1分、さつき湯までは30秒もかかりません。外湯と旅館が一体的になっているかのようなコンパクトな街並みも、有福温泉の魅力の一つです。

小川屋さんのお風呂は、旅館建物の最上階にあり、お湯に浸かりながら有福温泉の温泉街を見渡すことができます。最上階にあることを利用し、天井までガラス張りとなっており、昼と夜とで異なる表情を楽しむことができます。そして、24時間いつでも入れるのが魅力です。日中や夕方早い時間は有福温泉の外湯を楽しみ、早朝や深夜など、一風呂浴びたい時間に館内のお風呂を使う、といった入浴方法も可能です。今回は、私は食事前の入浴では日替わりで外湯をめぐり、朝風呂に展望浴場を使う、という楽しみ方をさせて頂きました。

さて、展望風呂の湯船は、四角形のシンプルなつくり、昔ながらタイル張りのお風呂は、ややぬるめの温度設定と相まって、肩ひじ張らずゆっくり過ごすのに適しています。洗い場は3箇所、リンスインシャンプーとボディソープ、そして石鹸が1セットありました。脱衣場には籠つきロッカーが8つ、小川屋旅館では、日帰り入浴がありませんので鍵はついていませんでした。

展望風呂の様子

そして特徴的なのは、小川屋旅館の展望風呂で使われているお湯は、近傍の温泉地、美又温泉から運んできたお湯だということです。美又温泉の弱アルカリ性単純泉が楽しめます。わざわざ異なる温泉のお湯を使わなくても、と思われるかもしれませんが、これも考えようで、外湯の充実している有福温泉では、街中に点在する外湯めぐりも楽しみの一つ。だからこそ、宿に帰ってからのお風呂は、外湯とはちょっと違った楽しみ方をしたい、と考えることもできます。有福温泉、美又温泉ともに美人の湯として有名な温泉地です。1箇所で二度美味しい楽しみ方も、この小川屋旅館を宿泊先として選ぶポイントの一つではないでしょうか。

今回、災害対応のための現地作業のために宿泊させて頂いたため、食事も通常のものよりもシンプルにビジネス用途で準備(経費的なことがありますので)して頂きましたが、それでも高い品質と十分なボリュームはさすがでした。温泉旅館ながら、素泊まりやビジネスプランなど多様な用途に対応できるもの、この旅館の魅力の一つです。ホームページによると、ペット同伴宿泊用のお部屋も準備されているようで、家庭的な雰囲気でお客さま目線のサービス提供が仕事で疲れた体を心地よく和らげてくれます。

この小川屋旅館さんは、この近年さまざまな苦難に直面されています。2010年8月には有福温泉の旅館街で4棟が全焼する火事がありました。その際は小川屋旅館さんの隣の建物まで延焼し、小川屋旅館がなんとか難を逃れる、ということがありました。そして、今年の豪雨災害。温泉街奥から流れ出た雨水により1階が水に浸かり、半月ほどの間、営業を中止せざるを得ませんでした。観光業・旅館業自体が厳しい昨今の状況で、本当に苦難の連続です。そんな中でも、常に前を向いて歩まれている姿は、経営者としても尊敬しています。

リニューアルしたロビー・フロント

現在、有福温泉の若手経営者が中心となり、カフェや貸し切り露天風呂、新神楽殿などの新たな事業展開が進み、この数年で有福温泉はずいぶんと変わりつつあります。そして火事によって焼失した跡地の再利用計画も策定が進むなど、地域の再生、活性化に向けて取り組まれています。小川屋旅館さんもその中心メンバーとして活躍されています。そして、先月、豪雨災害時の災害ボランティアにお伺いした際も、自らの旅館の被災も顧みず、街中の復旧作業に先頭に立って従事されていたのは、小川屋旅館のご主人でした。そういう姿を間近で見せて頂くにつけ、当社としても何らかの力になりたいと常々考えています。

有福温泉の旅館は、現在すべて通常どおり営業中です。一たび、災害の報道が大きくなされると、風評で入客が減ってしまうそうです。被害は大きく報道されても、復旧したことはあまり報道されません。有福温泉に興味をお持ちのみなさん、復旧を支援する意味でも、ぜひ一度訪問して下さい。当社も、地域に根差した温泉・水源開発に携わる会社として、今後とも、有福温泉のまちづくりに可能な限りお手伝いできればと考えています。

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