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水ビジネスのシンポジウムで最新動向と水源開発の可能性について学ぶ

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水ビジネスに関するシンポジウムに参加してきました。

2010年9月8日(水)、「水資源の創造と水ビジネスの可能性」と題し、財団法人ちゅうごく産業創造センターの主催で、広島市にて開催されました。2人の講師による講演があり、水源開発など水に関する仕事に携わる者として、それぞれ興味深い話を聞くことができました。2つの講演について感想めいたことを記しておきます。

講演1 水ビジネスの市場動向とビジネス戦略

最初の講演は、水問題に関する第一人者、グローバルウォータージャパンの吉村和就氏によるものでした。最近、TVや出版物などでも話題になっている方で、名前を聞いたことがあります。中々有名な方が講師に来られるものだと思って行きました。

講演冒頭、著書をPRする吉村氏

水問題が世界的な問題となっていること、日本も無縁でなく水不足が課題となりつつあること等ニュースなどで聞く機会はありますが、具体的な数値や国際的な動向・取り組み事例など、島根に居ては中々知る機会の少ない話を分かりやすく学ぶことが出来ました。

講演では、今後の水資源の確保について大きく2つの方向性(海水の淡水化、水のリサイクル(下水・排水の再利用))を示し、国際的な動向や各国の戦略、海外・国内の企業の取組み、日本がとるべき戦略などについて話がありました。

位置づけとしては、これから水ビジネスに参入しようと考えている企業等が対象で、しかもその市場は海外が前提で話が進みました。協和地建コンサルタントは国内のみを市場としている企業であり、海外進出など現時点では思いが及びませんが、水の問題が国内でも今後さらに注目されてくるであろうこと、その時に当社が得意とする“地下水の活用”ということも改めて注目されてくるであろうという感触は得ることができました。もっとも、地下水は枯渇の問題があり、使い方は慎重であるべきですが、十分に活用されていない地域で可能性を探っていくという方策はあるのではないでしょうか。

ところで、この日初めて知ったのですが、「食糧輸入に関する仮想水量」という概念があるそうです。我が国の食料自給率(カロリーベース)が40%という数字は良く聞きますが、これを支えている灌漑用水は570億m3/年。今後、食糧自給率を50%に上げようという目標がありますが、そうすると灌漑用水が足りず、それをどう補うかが非常に重要な課題になっているという話です。

残りの60%は輸入ですが、その食糧(農産物・畜産物)の生産には水が必要な訳で、この量を輸入に伴って売買されていると捉えたものが“仮想水”というものだそうです。そして、我が国の食料輸入に伴う仮想水量は年間640億m3/年に上るそうです。

さらに、国際的にはこの仮想水の取引をCO2の排出権取引のように扱おうという動きもあるそうで、排出権取引に続いて日本が割を食うことになると警鐘をならされていました。要するに、「食糧輸入に伴って仮想水を大量に輸入している国(日本など)はその水代を負担しろ」という話です。もっともらしい話ですが「水代って元々輸入した農産物等の値段に含まれているんじゃないの?」って思いますけど。なんでもビジネスになる時代ですから、今後どうなるのか分かりません。数年後には水・仮想水の話題で持ち切りかもしれません。

(講演2)MBR/ROを用いた再生水事業

海外、今回は特に中東で事業を展開されている日立プラントテクノロジーの方が講師でした。“膜”を使った排水処理、水の再利用について、最新技術の動向と実例を紹介して頂きました。詳細は難しいので省きますが、MBR(膜分離活性汚泥)は高品質・清澄な処理水を、RO(逆浸透膜)はさらに高品質な再利用水をつくる技術という仕分けのようです。

日立プラントテクノロジー 長川氏

シンポジウムでの事例紹介は海外(中東)のものでしたが、国内でも都市部を中心に導入の実績が多くあるようです。日本メーカーの膜技術が世界トップのレベルにあるという話は聞いたことがありましたが、具体的にどのような仕組みで、どの程度のことが可能なのか、改めて知ることができ勉強になりました。

ちなみに、RO処理によって飲料水としても十分に使用できるレベルの水質にまで再利用できるそうですが、ミネラル分まで全て取り除かれるので不味いそうです。飲み水にするには若干の塩分などで味付けをした方がよいとの話があり、技術の高さだけでなく、水を飲用とすることのむずかしさというのも垣間見た気がしました。日本の誇る膜技術、現在の当社の仕事とすぐに結びつくものではないですが、水に関する仕事に携わる者として、様々な場での情報収集の必要性を再認識するいい機会となりました。

(おわりに)

ところで、前述の吉村氏の講演の中で、国際的な水ビジネスで遅れをとる日本政府と日本企業に対し、「日本の産業界はガラパゴス島だ。その島の生態系でしか生きられない希少絶滅種の集まりである。」という厳しい指摘がありました。その際、“日本”を“島根”に置き換えてもそのまま通じるのではないかと思ってドキッとしました。ガラパゴスで生きるという選択肢もある(一つの生き方)だろうし、それを否定される筋合いも無いとは思いますが、そういう指摘もあるということは頭に置いて、自分自身そして会社の今後のあり方を考えるべきだなと思ったところです。

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