島根経営品質研究会

島根経営品質研究会 さんびる第36期経営方針発表会・創業祭 深化する経営方針の持つ力

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島根経営品質研究会の活動の一環として、昨年に引き続き「株式会社さんびる」さん(以下、「さんびる」と記載させて頂きます。)の第36期経営方針発表会及び創業祭(2012年2月25日開催)に参加させて頂きました。

さんびるは、山陰を中心にビルメンテナンスや指定管理、教室運営など、様々な事業を展開されるとともに、すばらしい経営に取り組まれている会社です。昨年に引き続き、大変大きな学び、気づき、元気を頂きました。今回、2年連続参加させて頂いたことで気づいたことを中心に書き記しておきます。このため、発表会全体の様子は、昨年の参加報告をご覧頂けると幸いです。

ところで、さんびるでは、役職員全員をフルネームで呼び合います。「社長」とか「部長」といった呼び方はしません。このため、このブログでも、さんびるの代表取締役社長は田中さんですが、“田中社長”ではなく、“田中正彦さん”とフルネームで記載しています。

経営方針発表会の様子(壇上は田中正彦さん)

1.深化する経営方針~試行錯誤を経て、社員と一緒につくり上げる~

さんびるでは、経営方針は、「経営方針書」という一冊の手帳にまとめられています。経営は全てのこの経営方針書に基づいて進められ、“マネジメント”と呼ばれる社員(現場で清掃作業などに携わるワーカーの方と区別する意味でこう呼ばれるようです)全員がその手帳を常に携帯されています。この手帳形式というスタイルは最初からそうであったのではなく、試行錯誤の結果、現在のスタイルに落ち着いているようです。これは株式会社武蔵野さんのスタイルをまねているものだとも聞きました。

そして、今回、発表会の説明の中で、田中正彦さんが、最初に経営方針書を作成された時のことを話されました。それは、平成8年、A4判32ページで作成されたそうです。それを作成した時のことを振り返り、田中正彦さんは「自画自賛、どうだっ、という気持ちだった。しかし、独りよがりの経営方針書だった。」と話されました。そして、全職員に配布したものの、その後どこに行ったか分からない。1年後、自分自身のものもどこに行ったか分からなくなったという失敗談を語って下さいました。それが今は、様々な項目を社員と一緒につくり上げることができるスタイルになった。そこまで進化したということです。

私もこの度、当社なりの経営指針を策定しました。さんびるの経営方針書には遠く及びませんが、社内でも一度説明を行い、今後は社外に向けて発表会を行います。しかし、その経営指針は、私が一人でつくったものであり、現状は、田中正彦さんの言う“独りよがりの経営指針”に近いものだと思います。しかし、当社とすればこれがスタート。これを繰り返しつくり上げる中で、社員と一緒に作成し、深化させる。そういう当社なりの経営指針をつくり上げたいと感じたところです。

2.リーダーに必要なのはメッセージを伝える能力

今回の経営方針発表会の中で、「リーダーに必要なのは、メッセージを伝える能力だ」という田中正彦さんの言葉が記憶に残ります。リーダーに必要な要件、それは色々あるでしょう。しかし、今回、田中正彦さんは“メッセージを伝える能力”と言い切りました。この意味合いは、大きく2つあると考えています。

一つは、経営者自身が発信する能力を持つということ。まず、何を目指すのか、どうしていきたいのか、という方向性があることが前提。そして、その後はそれをどう伝えるか。経営方針書のような形態にまとめる、経営方針発表会のような場をつくる、そこで自分の言葉でしっかりと語る、ということも大変重要でしょう。それだけでなく、毎日の朝礼、ミーティング、社員との懇親会の場、色々な場面で様々に伝える仕組みをつくるということ。そういう意味合いがあったと理解しています。メッセージを伝える能力(+仕組み)の重要性を改めて感じたところです。

もう一つは、幹部職員が、一般職員や現場で清掃作業をするワーカーのみなさんへメッセージを伝えるということ。さんびるは現場の職員さん達を含めれば1000名以上の会社です。全員が一堂に会す機会はありません。そのような方々を各支社、視点等で統括するのが“マネジメント”と呼ばれる社員のみなさんで50~60名いらっしゃいます。この方たちは、前述の経営方針書と、朝礼やミーティング、アセスメント等の仕組みを使って、経営のメッセージを伝えていきます。そういった幹部(マネジメント)層の職員が、自分の部下たちに正しく会社のメッセージを伝え、共通認識、価値観を共有していく。そのことの大事さを強く説明されたのだと理解しています。

当社は20名ほどの会社ですから、全員を一堂に集めて私が話をすることもできます。しかし、“人数が少ないからいい”ということではなく、日々の業務を進めていく中で、幹部職員から都度個別に会社の方針や考え方が伝わり、共通認識が得られるような“仕組み”がもっと必要ではないかと感じたところです。

3.進化するビジョン~具体化する将来像が未来を予感させる~

昨年に引き続き2年連続参加させて頂いて感じたのは、「ビジョンが具体化している」という点です。

さんびるの経営方針発表会は、昨年度同様、一年間の振り返りと、次年度以降の経営方針の発表に分かれていました。前半は、ES(従業員満足度)アンケートの結果や、今期の業績について数値的な検証を交えながら進められました。そして後半は、会社の将来像、目指していく姿、具体的な経営方針についての説明です。これが発表会を催して経営方針を発表する意味だと考えています。

そして、今回聞きながら気が付いたのは、昨年の発表会の際に頭出しされていた施策が、今期は既に具体化してその成果が報告されているという点です。当たり前のことかもしれませんが、大事なことだと感じました。経営方針の中身ですので具体的な言及は控えますが、例えば、昨年、新会社を立ち上げて新規事業に取り組むと発表したその事業について、今期の成果として業績を含めて報告される。そして、その新しい事業を含めた将来的な構想がさらに具体的に発表される、という具合です。会社全体がどういう方向に向おうとしているかが、毎年少しずつ具体的に見えてきます。自分の会社ではないにもかかわらず、聞いていて私もワクワクしてくるような、そんな将来ビジョンの発表でした。

このことは、経営者は、「将来のビジョンを示す」ということだけでなく、示した将来のビジョンに向けた道筋がどうなっているのか、その成果は出ているのか、そういった経緯・経過も含めて社内外に示すことが大事なのだと教えて頂いたと理解しています。そうやって、ビジョンそのものも進化させていくことも、ビジョンの共有や社内の想いを一つにしていくということにつながるのだと、感じたところです。

懇親会で幹部職員が壇上に集合

島根経営品質研究会での活動を通じ、さんびるの社員のみなさんと仲良くさせて頂いています。顔見知りの方も増えてきました。経営方針発表会は、そういった方々の頑張っている姿、成長する姿を見せて頂く機会でもあり、私自身も大変元気をもらうことができます。最後になりますが、田中正彦さん、さんびるのみなさん、今年もお招き頂いてありがとうございました。あらためてお礼申し上げます。来年もぜひお伺いしたいと思います。

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