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災害復旧という共通の目的に向うことを通じて得られるもの~津和野町豪雨災害対応~

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2013年7月28日に島根県西部を襲った大雨により大きな被害が発生しました。現在もその爪痕が生々しく残っています。被災された地域のみなさまに改めてお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復旧をお祈り申し上げます。この災害にあたり、当社も災害対応業務として、津和野町内の砂防河川の一部を担当し、現地調査と災害査定用資料作成を実施しています。私が社長に就任して以降、初めての本格的な災害対応となりました。8月13日から17日までの現地作業を終了し、現在は社内での作業を継続中ですが、現地作業が終了したタイミングで、この災害対応という仕事が会社経営の観点からどういう意味合いを持つのか、対応してくれている社員への感謝の意味も込めて、まとめてみます。

担当した河川の状況

1.経営としての迅速な意思決定の重要性~協力してくれる社員に感謝~

当社をはじめとした設計コンサルタントが担う「災害対応」とは、今回のような大雨等で災害が発生した場合に、道路や河川といった土木施設等を対象に現地の被害状況を把握し、災害復旧のための国の査定を受けるための資料を作成するものです。これはボランティアではなく、国・県・市町村等の自治体(当該土木施設を管理する主体)からの業務委託として費用を頂いて実施するものです。

当然のことながら、災害は突然襲ってきます。ですので、この災害対応という仕事も突然発生する仕事です。自らの地域で発生した災害に対して協力するのは当然のことなのですが、短期勝負で多くの人員を要する仕事なので、既に受託している仕事を抱えている中では、それらを止めて対応する必要があり、簡単に調整がつかないことも多々あります。災害対応のためとはいえ、既にご契約頂いているお客さまに大きな迷惑をかける訳にはいきません。このため、災害対応には経営の素早い意思決定と調整能力、なによりも社員のみなさんとの共通認識と協力が求められます。

今回の災害、大雨が発生したのが7月28日、これに対して当社が現地入りしたのは、8月13日と、少しタイムラグがあります。実は、8月上旬にも一度対応要請があったのですが、前述のお客さま都合で調整が付かず、対応が困難な状況にありました。今回対応できたのは、“お盆休みを返上する”という対応ができたからです。元々、多くの社員が休みを取る予定でしたし、お客様への対応もひと休止します。このお盆休み中に多くの要員を要する現地作業(被災箇所確認、伐採、測量、被災状況写真撮影等)を実施すれば、限られた範囲ではありますが、対応が可能と判断しました。

ほとんどの社員がお盆休み返上となることについては心苦しくも思いましたが、島根県内の甚大な災害対応を少しでも支援したいということを伝えたところ、多くの社員が協力を申し出てくれました。本当に感謝したいと思います。もっとも、お盆休み返上で災害対応にあたっているのは当社だけではありません。県内の各設計コンサルタントをはじめ様々な方々が連日遅くまで対応に当たっています。その努力が、一日も早く“復旧”という形で具体化することを願っています。

2.「笑顔は一生の宝もの」の実践と大切さを現場で知る

当社は、2013年4月から大学新卒の新入社員を迎えています。この新入社員も、災害対応のメンバーとして4日間、津和野町での災害対応に従事してくれました。ある社員が「一年目から災害対応とは運がいいね。」と声をかけていました。この言葉は冗談半分、本気半分ですが、的を得ています。入社して4カ月ほど、最初のお盆休みをいきなり返上で泊まり込み、となれば大変なのは間違いありません。その一方で、この4日間を一緒に過ごし、役割を果たしてくれたことで、素晴らしい経験をしてくれたと感じています。

実は、この新入社員は女性なのですが、猛暑が続く現場でずっと元気に仕事に取り組んでくれました。伐採等の力仕事はさすがに控えましたが、各種測定作業の補佐などに意欲的に取り組んでくれました。また、現地での飲み物の準備や昼のお弁当の手配等の仕事を担当してもらいましたが、これも自分で考え、自らの判断で対応してくれました。まだ入社4カ月で技術的にはまだまだこれから身に付けていってもらう時期ですが、与えられた役割をしっかりと全うするその姿には、周囲の社員も心強く感じて見守っていたと思います。

私がなにより素晴らしいと感じたのは、「疲れた顔を見せないこと」です。連日35℃越えの酷暑の中での作業です。当然疲労が溜まっていたと思いますが、常に笑顔で笑い声を絶やさない。つらい現場だからこそ、笑顔で過ごす。男ばかりの現場を和ませ、活気づけてくれていました。その笑顔が、周りの笑顔を生みだす。その影響は、会社に戻って内業に移ってからも続いているように感じます。先日、島根同友会の新入社員研修があり、「笑顔は一生の宝もの」という話がありました。それをさっそく実践してくれていたのでしょう。その効果と大切さを教えてもらったと感じています。

3.災害復旧という共通の目的に向けて取り組むことの意義

今回、本隊は4日間(最も長い者で5日間)、泊まり込み(津和野町又は益田市内に宿泊)での対応となりました。要員数は、8名から最大14名を現地に投入して作業にあたりました。通常の仕事でも宿泊で仕事にあたることはありますが、これだけの人数が一度に宿泊して作業にあたるのは、短期勝負の災害対応でなければ機会がありません。いわば合宿的な色合いもあります。夕食時に一日の疲れをいやしながら皆で歓談する、というのは通常の会社の懇親会とはまた違った意志疎通の機会となり、貴重な時間を過ごすことができました。

そして、私自身が現地作業部隊の一員として作業に従事し、4日間にわたって一緒に仕事ができたことも大きな財産になりました。実際問題として一人でも多くの要員が必要でしたし、災害対応を決定する際、専務から「社長も現場に出向いて経験してみた方がいい」と助言を受けたことも理由の一つです。私は現地作業の技術的な部分では役に立たないので、主に被害状況を確認するための伐採作業に携わりました。そこで、夏場の炎天下での伐採作業がいかに過酷な労働なのかを思い知ることとなりました。そのことで、日頃から現場で作業に当たる社員のみなさんへの感謝と尊敬の気持ちを新たにすることができました。大変でしたが、本当にいい機会をもらったと考えています。

今回、「一日も早い災害復旧に向けて取り組む」、という共通の目的を持って全社一丸となって対応するという、会社としても貴重な経験をさせて頂きました。言うまでもなく、災害は起こらない方がいい。しかし、全く災害に関わらず暮らしていくこともまたできません。いつどこで、誰が被災するか分からない。今後も会社として災害対応に携わる機会も必ずあるでしょう。そんなとき、今回の会社としての経験を活かし、より効率的かつ迅速に対応できるよう、対応力と団結力を高めていきたいと考えています。

休憩中のひととき

今回、私自身が最も勉強させてもらったと感じています。社員一丸となり、共通の目的に向う時の当社の力を垣間見ることができ、大変心強く感じました。また、酷暑が続く中での対応でしたので、熱中症など健康面での支障も心配しましたが、私をはじめ(笑)大きな怪我や体調不良もなく、現地作業を終了できました。人一人がお互いを気遣い、役割分担と協力しながら乗り切ったおかげと考えています。繰り返しになりますが、今回の島根県西部災害、災害対応を担っているのは当然ながら当社だけではありません。県内の設計コンサルタント各社が、忙しい中、当社よりもたくさんの現場を担当され、夜を徹して作業に当たられています。当社が携わった被災箇所はごく一部ですが、それでも災害復旧の一翼を担い、一日でも早い被害の復旧に貢献出来ればと考えています。

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