地中熱活用

平成25年度地中熱利用促進協会総会~EIMY・地産地消のエネルギーが地域の問題を解決する~

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2013年6月6日、平成25年度地中熱利用促進協会の総会が開催され、私も出席してきました。地中熱利用促進協会の、平成25年5月23日現在の会員数は団体会員191社、個人会員61名、特別会員79名。団体会員はこの1年で70社が入社(2社退会)。前年比1.6倍という増加率(昨年も約1.4倍の増加率)で、地中熱に関する世の中の関心の高まりを伺わせます。(昨年度の総会様子はこちら

協和地建コンサルタントでは、2012年8月から本社屋で地中熱ヒートポンプ空調システム運転開始して約10カ月になります。これまで様々な方に見学に来て頂き、今後は、実際の事業として具体化を図っていく段階です。次のステップに向けたタイミングでの総会で、最新の地中熱を取り巻く情勢や今後の新しい方向性など、新しい発見がありました。今回の総会での注目点について簡単にまとめておきます。

平成25年度総会の様子

1.理事長挨拶からみた地中熱の動き~地中熱・まさにこれからの市場~

総会冒頭、協会の笹田理事長から、この1年間の地中熱を取り巻く動向として3つの特徴的な話を伺いました。その話は、現在の地中熱を取り巻く状況を端的に表現しており、今後の可能性が確信的なものとなりました。

一つ目は、「展示会」での様子についてです。協会では積極的に展示会等への出展に取り組んでいます。4年前、初めて展示会(環境やエネルギー関係)に出展した時は、畳二畳分ぐらいのブースで、呼び込みをしてやっと人が来る状況だったそうです。その後、一昨年から会員と合同ブースを設置するまでに至り、規模も大きくなり、来客数が飛躍的に伸びたそうです。一回の展示会でパンフレットが1000部以上配布されたり、また主催者側から地中熱に関するセミナーの企画提案があったりと、地中熱の存在感が明らかに増し、伝えたい情報が伝わるようになったということです。

二つ目は、「補助金」についてです。今年度、地中熱に係わる2つの補助金が新設されたということです。1つは経済産業省の再生可能エネルギーの複合利用に対する補助金制度。この補助金は民間の場合でも1/2補助となる、かなり有利な制度です。もう一つは、環境省の地中熱利用に限定した補助金で、規模要件が外されているところが特徴です。従来はヒートポンプが一定規模以上であること等の要件があったものが取り払われ、小さな設備でも対象になるということです。このように、国の政策的にも地中熱の支援策が充実していることが明らかであり、普及促進の加速化が期待されます。

最後三つ目は、地中熱ヒートポンプの設置件数が全国で1,000件に達したということです。定期的に実施される環境省の調査データによるものだそうで、少しずつ増えてきていたものが、震災以降大幅に増加したとのことです。1,000件という数字、全国大でみれば大した数ではありませんし、世界的な普及規模からすればわずかなものだそうです。とはいえ、一つの区切りであり、今後の大きな飛躍に向けた一里塚でもあります。こういった明るい話が出来るのも、この地中熱という分野がまさにこれからの市場であることの表れでしょう。次は、その大きな流れをそれぞれ企業が“いかに自分のものにするか”が問われる段階に来ています。

2.EIMY・地産地消のエネルギーが地域の未来を拓く

今回の総会では特別講演として『震災から学ぶ 地産地消のエネルギー』と題し、東北大学名誉教授 新妻弘明 氏に話をして頂きました。新妻先生は、昨年東北大学を退職され、現在、日本EIMY研究所の所長を務められ、地域のエネルギー活用に関する実践活動を展開されています。

この講演の中で、EIMY(Energy in my yard)という概念について触れることが出来ました。EIMYとは、新妻先生が提唱された、“身の回りの自然エネルギーを最大限活用する”という考え方で、その地域にある再生可能エネルギー(自然エネルギー)を,技術的・経済的条件が許す限り,最大限地域のために利活用するエネルギーシステム・社会システムを言います。今後、地域において再生可能エネルギー(自然エネルギー)の活用を考えていく際に、地域の企業としてどのようにエネルギー問題に係わり、どう提案していくのか、に大きな影響を与えると感じました。たくさんの示唆がありましたが、一つだけ紹介しておきます。

それは、「エネルギー=電気」という発想から脱却するということ。確かに電気は便利なエネルギーだが、全てを電気で考えるのは間違っている。電気ではなく、自然エネルギーとして存在する“熱”や“運動”というエネルギーをそのまま利用する方が、効率がとても高い、ということです。発電のためには熱を発生させる(その熱で蒸気を生みだしタービンを回す)ことが多いですが、発電のエネルギー効率は、熱をそのまま活用するよりも低いことは良く知られています。例えば、薪を燃やして暖をとることを考えた場合、それと同じだけの熱エネルギーで発電をして電気を発生させても、その電気でエアコンを使って同じだけ温めることはできません。

なので、自然エネルギー全てを発電に置き換えようとすると、本当ならば、工夫すれば使い道があるはず地域のエネルギーが、役に立たないエネルギー(商業ベースに乗らない)のように判断され、結果、地域の自然エネルギーが未利用になってしまう、というのが現実であるとの指摘です。我が国全体でみれば大規模な発電所で発電する電気も当然必要だけども、各地域でみれば、身の回りで確保できるエネルギーで済ますことが出来る部分はそうする。そのことで、どれだけエネルギー利用が効率的になるのか、という問題提起です。

このことを踏まえ、「これから地域のエネルギー開発は、EIMY型の開発であるべき」、と説明されます。それは、地域のための最適開発。発電は出来なくても、他のエネルギーと組みあわせて最適なものを考えていく。そのために設備を先に考えるのをやめる。地域の問題を先に考え、そのために必要な設備を考えることが求められる、との指摘です。この話は耳が痛い面があります。我々は地中熱を推進する立場なので、何でも地中熱からスタートしがちです。しかし、お客様は別に地中熱が欲しい訳ではない。お客さまの問題を解決する手段として地中熱が最も適しているなら地中熱を導入する、ということに過ぎません。エネルギーの問題も、あくまでお客さまの問題解決が目的である、ということを改めて学ばせて頂いたと考えています。

3.地域における地中熱利用協会の活動~各地域の実情に即した地中熱活用を~

今回の総会では、会員数が年々大幅に増加していることを踏まえ、協会内の組織体制の見直しが図られることになりました。この協会に限りませんが、こういった推進団体は入っているだけでなにかいい事がある訳では無く、協会の活動に積極的に参加し、その中で自らの事業活動に寄与する学びや実益を得ていくことが必要です。その意味で、一つの大きな提案がありました。それは、「地域活動部会」の設置です。

これまでの協会の活動は、どうしても東京中心にならざるを得ませんでした。それは致し方ない面があります。しかし、この地中熱利用促進協会には、各地域で事業を展開する中小企業が多く参加しています。それは、地中熱の事業規模や仕事の特性(地域の特性にあった設計・施工が必要)がまさに中小企業の事業領域だからです。そして、現在、各県単位で地中熱利用促進にかかる推進団体の設立が進んでいます。東日本や中日本が多く、二市日本ではまだまだこれからの状況です。

地中熱への注目が高まっているとはいえ、太陽光や風力などに比べればまだまだ認知度が低いのが実情です。その意味でも、各地域で、地域の実情に即した地中熱の利用促進を図団体が、意欲ある中小企業を中心に形成されることは非常に意義深いものがあると考えます。そういった地域の自主的な活動と地中熱利用促進協会が連携していくことも、大いに進めるべきことだと考えられます。

まだ、検討中でどういった形式で進めるかまで具体化されていませんが、今年度、島根県でも地中熱に関するセミナー又はシンポジウムのような企画を実現したいと考えています。島根県における地中熱の認知度はまだまだですが、進めていかなければならないと確信しています。その際に、組織の形態はともかく、推進していくための団体が必要になると考えています。いきなりつくり上げることは難しいので、島根において地中熱の認知度を高めるための仕掛けが必要だと考えています。その皮切りとして「地中熱」という名前を冠したセミナーを企画する。全国的な認知度の高まり、補助金など支援制度の充実など、このタイミングを逃さず、島根における地中熱の普及促進に向けて、一歩踏み出したいと考えています。

講演する新妻弘明氏(東北大学名誉教授)

「地中熱には、勢いがある、今後に向けた展望がある」。地中熱利用促進協会の総会、そして懇親会に参加した感想です。実は昨年と同じです。今年はさらにその勢いが増しているように感じます。そして、今年のもう一つの気づきは、「地中熱」だけを推進しようと考えてはならないということ。様々な再生可能エネルギーを地域の実情、地域の課題解決に役立つ形で導入する。考えてみれば当たり前のことですが、自分の得意分野や自分がいいと思っているものを進めようと考えると、ついつい、“技術ありき”になってしまいます。今年度当社で推進しようとしている「スモールZEB」では、太陽光発電と地中熱ヒートポンプの複合利用を目指していますが、こういった発想に意味があることを思いがけず知ることも出来ました。取組みを通じて得られるノウハウや課題を今後に活かし、島根における再生可能エネルギーの活用のあり方を模索していく一つの材料になればと考えています。

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