島根県中小企業家同友会

島根同友会 第15期経営指針成文化セミナー成果発表会~後継者が覚悟を決め、創業者が転機を受け入れる~

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2015年2月14日(土)、島根同友会の第15回経営指針成文化セミナー成果発表会が開催されました。このセミナーは、島根同友会会員企業を対象に、経営指針(経営理念、経営方針、経営計画)を体系的に策定するものです。今回、6名(6社)の参加者があり、およそ5カ月の時間をかけて自社の経営指針をまとめました。成果発表会では、策定した各社の経営指針を発表します。そして、今後の経営指針に基づいた経営の実践に向け、指針に対するさまざまな意見を聴取する場でもあります。経営者が、自社の将来をかけて策定する経営指針。その策定の経緯から成果の内容までを聴くことができるこの成果発表会は、同友会活動の中でも最も多くの学びを得られる機会の一つです。第15期の発表会を通じて感じたことをまとめておきます。

成果発表するセミナー受講生

1.後継経営者が覚悟を決める場

今回の6名の受講生のうち、後継経営者が3名いらっしゃいました。そのうち、1名は既に社長として経営を司っていらっしゃいますが、後の2名は、いわゆるナンバー2の立場であ、今後の事業継承を予定されている方です。今回のセミナーでは、このナンバー2の方々が大きな決断を行う機会となったのが印象に残ります。

私も後継者なので同様なのですが、後継者というのは、なんとなく“事業を継承する”という認識はあっても、それが一体どういうことなのかという本質的な認識がなく、そのまま経営を継承してしまう場合があります。順風満帆で盤石の会社であればいい訳ですが、実際には継承後に外部環境の大きな変化や自社の経営状態を目の当たりにし、前向きになれない後継者もいます。そんな後継者が、経営を継承する前にこのセミナーを受講することで大きく変わることが出来ます。セミナーを通じて自分なりの経営の方向性を定め、また、経営環境や財務面も含めて会社の実情を把握し、それを事前に受け入れておく機会となる訳です。

実際問題として、順風満帆の会社の後継者の方がこのセミナーを受講するというケースは多くありません。やはり様々な課題がある会社、先行きに不安を持っている会社、外部環境の変化に直面する会社の後継者だからこそ、経営の学びを求めて同友会に入会し、このセミナーの受講に至るのだと思います。そんな後継者こそ周囲が支援しなければなりません。そして後継者のみなさんには、ぜひこのセミナーを通じて覚悟を決めてもらいたいと思います。仮に覚悟を決めきれなくても、いずれ覚悟するための土台づくりにはなります。その意味でも後継者こそ、このセミナーを受けて頂きたいです。

今回、いずれ社長を継承する後継者2名もそれぞれの立場での決断をされました。社長になるタイミングを自分自身で決めて現社長と意志統一した方、自分がどの方向を目指すのかを明確にして現社長と話合った方、セミナーやフォローアップの場以外で、それぞれに転機と変化を迎えています。半年間を通じてその経緯を見せて頂くことで、“後継者が経営者となる”ために何が必要なのか、改めて教えて頂いたと考えています。

2.創業経営者の転機を受け入れる場

今回の6名の受講生のうち、3名は創業経営者でした。創業者が創る経営指針について、私自身の認識を改める機会を頂きました。

後継者の私からみれば、創業者の方は、明確な自分の想いを持って事業を立ち上げ、運営されてきており、経営指針は創りやすいのではないかという印象がありました。しかし、今回、創業者でも経営者でも関係のない経営に係る大きな課題がたくさんあることを、改めて感じました。例えば、外部環境の変化。地域の小売店の横に全国資本の大規模小売店が来たらどうするのか。同じ商品・サービスを同じ値段で、同じように扱っていては勝負にならないのは明白で、これは創業でも後継でも関係ありません。また、いくら想いがあっても立ちうちできない変化があります。そして、人の問題。企業の問題の大半は人の問題に行きつくと言われますが、創業者だから人財育成が成功する、或いは人財に恵まれるとは限らない訳です。人にかかる様々なトラブルや問題もまた、創業者、後継者を問わず課題として顕在化しています。

そして、今回のセミナーで特徴的だったのは、創業経営者の方々が、自分達に訪れた大きな転機を受け入れ、さらなる飛躍を目指した決断をされたことでした。抗いがたい外部環境の変化に対応するため大きな業態変化を決断した方、一度諦めかけた後継者の育成に再度取り組む決断をした方、社員と一緒に目指す大きな夢を具体化するための方策を明確にした方、わずか半年の間に、大きなドラマをいくつも見せて頂きました。

発表後、大きな変化が訪れるタイミングでセミナーを受講していたからこそ、大きな決断することが出来たと話して下さいました。経営とは変化すること。変化の連続にどう対処していくのか。その答えの一端も、この経営指針成文化セミナーで得られるのではないかと考えています。

3.経営指針発表会が新たな受講生を呼び込む

現在、島根同友会で実施している経営指針成文化セミナーは、年2回、各6名(計12名)の受講生を定員としています。

毎回、募集開始後短期間で定員を満たす人気のセミナーとなっており、同友会会員における経営指針に対する認識の高まりを感じます。また、2回目の指針セミナーを受講する会員もいます。当初策定した指針が自分の想いを反映しきれていない、環境の変化に合わせて再度方針を見直すということもあります。また、一つの転機としては、一人で始めた事業から、従業員を雇用する事業へステップアップする段階で、再度策定を行う方もいらっしゃいます。

今回、発表会終了後に次回セミナーの申し込みを頂いた会員さんがありました。既に一度指針を策定されていますが、従業員の雇用をきっかけに再度セミナーを受講したいという希望です。また、一度策定して実践していく中で、十分に理解出来ていなかった指針の意義を、従業員の雇用という視点を踏まえてもう一度見直したいという意向も持たれています。一人で行う事業と、従業員を雇用して行う事業、その間には大きなハードルがあると思います。私は、従業員が居る会社を引き継いだので当たり前に雇用をしていますが、最初に1人で初めてしばらく事業を営んだ後、人を雇用するというステージに進む際には、やはり決断が要ります。雇用の形態は色々あるとしても、“従業員の生活を担う”立場になることに違いありません。自分一人であれば、すべて自分の責任の範囲内ですが、従業員を雇用すればそこにも経営者の責任が広がる。そのタイミングで、指針を見直すというのは大変いい試みではないかと考えています。

そして、もう一つ話題が出たのが、「同期を創りたい」という希望です。このセミナーで一緒に経営した受講生は、“同期”として今後の経営を競い合うことになります。業種業界、年齢性別、経験は違えど、同じタイミングで経営指針を策定した者どおし、やはり負ける訳にはいきません。ここでいう勝ち負けは売上や利益ということだけでなく、どれだけ自分の定めた理念や方向性を実現出来たかという点も含めてです。同期が頑張れば、自分も頑張れる。そういった経営者の横のつながりを創ることができるもの、このセミナーの大きな特徴だと考えています。想いを共にする仲間を創りたい方の参加をお待ちしたいと思います。

修了証を持って記念撮影

2014年10月に開催された第15期経営指針成文化セミナーは、島根同友会としては、初の直営方式として開催し、会内講師のみで最後の成果発表まで辿りつきました。私も今回初めて講師役を兼ねて参加しましたが、今回の発表会でセミナーの受講者が、それぞれに素晴らしい報告を行い、経営指針に基づいた経営を進める覚悟を決めて頂いたことは大変うれしく思います。そうやって受講生の方を送り出すからなおさら、自分自身の経営が立ち止まっていてはいけないと強く感じます。次年度以降も、島根同友会の経営労働委員会を任せて頂くことになりました。引き続き、経営指針の成文化を実施した経営者を島根に輩出し、それぞれの経営者が経営を伸ばすことで、地域経済が発展する。そういった同友会発のプラスのスパイラルを生みだすべき、努力していきたいと考えています。今回のセミナー受講者のみなさんの益々の発展とご活躍をお祈りします。

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