島根県中小企業家同友会

島根県中小企業家同友会 “東京ディズニーランドのホスピタリティ”は我が社に活かせるのか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2011年4月8日、島根県中小企業家同友会の出雲支部4月例会がありました。

テーマは、「東京ディズニーランドで学んだホスピタリティ」と題し、株式会社いずも屋 取締役社長 吉岡 佳紀氏からお話を聞く機会がありました。

吉岡氏は、東京の大学を卒業後、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドに入社されました。退職後、島根県職員として仕事をされたのち、現在は農業を中心とした会社の社長に転身されたという異色の経歴の持ち主です。

大変興味の湧く経歴をお持ちの吉岡さんのお話なのでぜひ聞いてみたいと思ってはいました。一方、東京ディズニーランドというテーマパークの商売と、当社のようなコンサルタント、建設業という商売。一見するとあまり関係なさそうで、話を聞いてもどこまで参考になるのかという気もしていました。が、結論としては、根っこの部分で共通するものは多々あると感じたところです。その内の一部をまとめてみました。

講演する吉岡佳紀氏(株式会社いずも屋 取締役社長)

1.行動基準「SCSE」を実践するための教育

東京ディズニーリゾート(東京ディズニーランド、東京ディズニーシー)も含めたディズニーテーマパークには、「SCSE」という行動基準があります。SCSEは、Safety(安全)、Courtesy(礼儀正しさ)、Show(ショー)、Efficiency(効率)の頭文字をとったもので、私もディズニー関連の書物でみたことがありました。ゲスト(お客さま)に最高のおもてなしを提供するための判断や行動のよりどころとなるもので、SCSEが、その並びのまま優先順位になっていることが特徴です。

さて、こういった行動基準を定めるところまでは、我々でもやれば出来ることです。しかし、(おそらく)多くの会社では、徹底されないことでしょう。その一方、東京ディズニーリゾートでは12000人のキャスト(従業員)がいて、さらにそのうち8000人がアルバイトという状況です。そういった組織で、このことを徹底させる仕組みがあり良好に運用され続けている、ということが最も重要なことではないかと感じます。

その仕組み(研修)についてですが、東京ディズニーリゾートでは、入社後、カストーディアル(掃除係)研修、ナイトカストーディアル研修(夜間清掃係)、配属先研修、と研修漬けの日々を送るそうで、その中で、ディズニーの哲学や、先のSCSEといった行動基準を徹底的にたたき込まれるそうです。そのためのトレーナーの育成も徹底(後述)している。よく“企業は人”、“人材教育が大事”と一口に言いますが、そのための仕組みが重要だということをまず感じます。

さらに思うのは、実際問題として、正社員・アルバイトを問わず12000人もの人がいれば、(少なくとも最初は)程度の悪い人も多々いるはずです。しかし、それを徹底した教育の仕組みで“いい人材”にしてしまうという事実がある。「やっぱりディズニーランドはすごいね」と関心するのではなく、ここで学ぶべきことは、「適切な仕組み・方法できちんと教育すれば、大概の人はその会社におけるきちんとした従業員になる」と言うことでしょう。人材を育成する側に立つ者は、まずそのことを認識し、自らの会社の教育をどうしていくか、考える必要があると感じたところです。

2.もう一度来てもらった時に、前回以上であること

東京ディズニーランドは、言うまでもなく日本最大のテーマパークで過去最高は年間2700万人の来場者を誇ります。この数字は1年間に10回、20回と訪れるリピーターの存在なくしては達成できない数字だそうで、商売としては、いかにゲストのリピートを獲得するかに尽きる。では、なぜ熱狂的なリピーターを生み出せるのか。それはゲストをおもてなしするための哲学、仕組み、人づくりが徹底されているからなのでしょう。

一つの例として“感動”ということについて話がありました。良く言われることですが、人は予想以上のことが起こった時に感動します。そういった感動があるから、東京ディズニーランドにリピートし続ける人がいる。東京ディズニーランドが目指しているのは、もう一度来てもらった時に“前回以上であること”。ゲストがリピートした時に“前回よりも良かった”と感じて帰る。それこそが“感動”。そのための努力が徹底して日々続けられているわけです。

この「前回以上であること」という言葉、自分たちの仕事にあてはめた時にハッとさせられます。むしろ逆になっているのではないでしょうか。最初お客さんになって頂く時は熱心だったけども、一旦お客さんになってもらった後はどうなのか。繰り返し仕事を頂いているうちに甘えが出ているのではないか。やっつけ仕事のように対応しているのではないか。大変、身につまされます。

我々の仕事に置きかえれば、「もう一度仕事を頂いた時に、前回以上の成果を提供すること」ということになります。その心がけを忘れず、一人ひとりが成長し、前回を上回る成果を常に提供し続けることができる会社にならなければならないと気づかせてもらいました。

3.人を育てるためには自分が成長する必要がある

東京ディズニーランドでの社員教育は、かなり徹底した厳しいものだそうです。

職場にもよりますが、アトラクションを担当する“アトラクションキャスト”は先輩に泣かされることも日常茶飯事だそうです。中でも聞きたくないのが「上手くなったな」という言葉。これは実は“けなし言葉”で、“慣れてきて、お客さんを上手くさばくようになったな”と言う意味だそうです。東京ディズニーランドでは、「毎日が初演」、「すべてのゲストがVIP」といったキーワードに代表されるように、初心を忘れず、一人ひとりのゲストに全力でおもてなしをする、という姿勢が徹底されていますが、それを失いかけていることを注意する。お互いに気づき合う、そういった風土があるということです。

そのように後輩を厳しく指導する先輩トレーナーにもランクがあって、トレーナーを育てるトレーナー、と言うように格付けがあるそうです。そうやってランク付けされているのは、“人を育てるためには自分が成長する必要がある”からだそうで、教育するトレーナーも一回トレーナーになれば終わりではなく、自分自身も学んでランクを上げながら成長していくという訳です。仕組みとしての教育の奥深さを学んだ気がします。

こういったシステムは小人数の組織では難しいですが、だからこそ、経営者や上司の立場にある者は自分自身の学びを放棄してはならないということです。経営者が勉強し続けなければならない理由の一つでもあろうと気づかせて頂きました。

ちなみに、私は、東京ディズニーランド、東京ディズニーシーとも、1回ずつしか行ったことがありません。ずいぶん前のことです。東日本大震災で被災した施設は、先ごろ一部復旧し、営業を再開されたようです。少し落ち着いてからにはなるでしょうが、今回の話を頭に入れながら、もう一度訪れてみたいと考えています。

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*