新規事業・経営改善

「地熱」と「地中熱」~似て非なる二つのエネルギーの地域活用方策を考える~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

協和地建コンサルタントでは、「地熱・地中熱」の地域活用に向けて取り組んでいます。先ごろ、当社の取り組みが相次いで地元経済紙や新聞に取り上げて頂く機会がありました。色々な反響を頂きましたが、改めて感じたのは、この「地熱」と「地中熱」が一般の方には混同して捉えられているということです。今回、この似て非なる二つの用語の定義と、それぞれの地域(特に山陰地域)での活用方策について、当社の考えていることをまとめてみます。

山陰経済ウィークリー(2015/5/1記事)

1.「地熱」と「地中熱」の違い~利用方法からその違いを紐解く~

「地熱」と「地中熱」という二つのキーワード、似ていますが言葉の定義としては異なります。特に「地中熱」が分かりにくいと思います。その点を踏まえて、違いについて改めて整理してみます。

「地熱」とは、地球の地下深部のマグマ由来の熱を言います。そして、エネルギーとしての地熱は、「発電」とセットで用いられることが多く、“地熱≒発電”という認識も広まりつつあります。そして、温泉熱も地熱の一種ということができます。地熱というキーワードは直感的にも理解しやすいので、多くの人に認識されています。問題は、もう一方の「地中熱」です。

「地中熱」とは、地下10~15m程度から200m程度までの間の比較的浅い部分にある低温の熱です。地中の温度は、地下10~15mの深さになると、年間を通して温度が一定(一般に15℃程度)になります。こもため、夏場は外気温度よりも地中温度が低く、冬場は外気温度よりも地中温度が高くなります。この温度差が効率的な冷暖房等に活用されます。冬場の地中温度を用いて融雪に利用されるケースもあります。

地中熱とは、熱の利用特性に着目したエネルギーとも言え、地中熱利用促進協会では、「昼夜間又は季節間の温度変化の小さい地中の熱的特性を活用したエネルギーのこと」と定義しています。地中熱も地熱の一部だと言えばそうなのですが、利用方法からみれば、火山の近くなど特定の場所にある高温のエネルギーを利用する地熱と、足もとにある恒温のエネルギーを温熱・冷熱として利用する地中熱とは、似て非なるものと言えます。

地熱と地中熱の定義はこのように異なりますが、地中熱の方が一般の認知度が低いため、一般には意識的に区別して理解することが難しいのが現状です。地熱、地中熱がそれぞれに普及することで、理解が少しずつ進むと考えています。

2.「地熱」の可能性に挑む~限定的だが、発電から熱利用まで利用可能~

「地熱」と言えばその活用方法は「発電」という認識が定着しつつあります。地熱発電とは、地中深くから取り出した蒸気で直接タービンを回して発電するものです。火力発電所が、石炭、石油、天然ガスなどを燃焼させて発生させた蒸気で発電するのに対し、地熱発電は地下の熱で水蒸気化した蒸気を直接利用します。地熱は、輸入に頼らない純国産エネルギー、燃料不要(CO2排出が無い)、半永久的に安定して利用可能、など様々なメリットがありますが、残念ながら場所を選びます。既存、そして開発中の地熱発電所は九州、東北、北海道あたりに集中しており、当地山陰においては、現在の技術では実現できないと考えられます。

そこで注目されるのが「温泉」です。高温の温泉の熱を利用して発電を行う「バイナリー発電」が可能になり、地熱利用の幅が広がってきました。協和地建コンサルタントは、鳥取県の東郷温泉で地熱発電事業に参入します。東郷温泉から湧出する約90℃の温泉熱を活用して地熱発電(温泉熱発電)を行い、FIT(固定価格買取制度)を用いて全量を売電するものです。そして、発電後の熱水(温泉水)は、地熱の直接利用として温泉地内の温浴施設で給湯に利用(化石燃料ボイラーの代替)される計画になっています。このように、地熱は、発電だけでなく、暖房、施設園芸、浴用など、少しずつ温度を下げながら(熱交換しながら)、各温度段階で様々な利用方法が考えられます。

山陰地域で温泉発電が出来そうなエリアは限られます。限られるからこそ貴重な地域資源でし、その地域独自のエネルギー活用方策を立案出来る可能性があります。可能性のある地域ではぜひこの「地熱(温泉熱)」を活用してもらいたいですし、発電はできなくても、余剰の温泉熱があればその活用も考えていく、そういった地域の独自性を活かした地域づくりに、地熱を活かしていきたいと考えています。

3.「地中熱」が地域にもたらすもの~どこでも使える温度差エネルギー~

「地中熱」の特徴は、どこでも使えるエネルギーである、という点です。そしてその使い道としては、冷暖房空調、そして道路・駐車場の融雪をメインターゲットにしたいと考えています。

前述のとおり、地中の温度は、地下10~15mの深さになると、年間を通して温度が一定(一般に15℃程度)になります。このため、夏場は外気温度よりも地中温度が低く、冬場は外気温度よりも地中温度が高くなります。この温度差を活用し、ヒートポンプを用いて効率的な空調を行おうというのが地中熱空調です。当社は、平成24年度、県内に先駆けて地中熱ヒートポンプ空調を本社事務所に導入しましたが、その後、他施設への導入は進んでいません。認知度の低さ、費用面、などが障害となっています。導入当初にイメージしたような進展は見せていません。

しかしながら、島根県は、平成26年度に「再生可能エネルギー及び省エネルギーの推進に関する基本計画」を策定し、その中で、県が策定する報告書としては初めて「地中熱」という言葉が計画書に記載されました。そして、公共施設を中心に地中熱空調の導入を試行し、効果を検証していくことが示されています。島根県における導入促進に向けて大いに期待したいと考えています。

地中熱はどこでも利用ができます。しかし、まだまだ認知されていません。地熱との違いをきちんと説明できる人は島根県内でも限られます。だからこそ、今、取り組んで行かなければならないと考えています。

山陰中央新報(2015.5.9付)

「地熱」と「地中熱」。この二つのエネルギーの特徴は、当地においてまだまだ未利用のエネルギーであるということです。そして、いずれも役に立つエネルギーで、かつ環境にやさしい。今後、普及しないはずがないと考えています。今後とも粘り強く、この地熱・地中熱に取り組み、山陰地域における普及の一翼を担い、次世代の地域づくりに貢献していける会社になっていきたいと考えています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*