島根県中小企業家同友会

島根同友会 第13回経営指針成文化セミナー~運営側として参加することで見えてくる定着に向けた方向性~

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2013年7月20日(土)~21(日)にかけて、島根同友会の第13回経営指針成文化セミナーが開催されました。同友会では、“経営指針(経営理念、経営方針、経営計画)の成文化”に力を入れていますが、このセミナーでは、2日間でその素案を取りまとめ、さらに3カ月をかけて精査していきます。講師には、東京同友会所属、コンサルタント朋友 代表取締役 奥長弘三氏をお迎えして開催しました。島根同友会の経営指針成文化セミナーの初回からすべて指導を頂いている実績ある先生です。

私も、2年前にこのセミナーに参加して経営指針を策定し、現在実践中です。今回は、島根同友会の経営労働委員会の委員長の立場で、これから経営指針を策定しようとされている会員みなさんのお世話をする役目で参加させてもらいました。運営側として参加し、受講生のみなさんと一緒に先生の講義や、受講生のみなさんが策定された経営指針の素案について意見交換させて頂くことで、改めて様々な気づきや刺激を頂くことができました。その一部をまとめておきます。

H25経営指針成文化セミナーの様子

1.何のために経営しているのか~利益をどうしていくのかに関わってくる~

「何のために経営しているのか?」。これは、セミナーの冒頭、受講生に対して問いかけられる質問です。様々な回答がありうるでしょう。世の中のために尽くしたい、人の役に立ちたい、ということもあるでしょうし、事業家として成功し、大金を得たい、という回答もあるかもしれません。また、特に後継経営者は、それが既定路線であるがゆえに明確な意味合いを持てずに苦労されている方もいます。いずれにしても、多くの経営者は、「お金は必要だが、お金だけではない」ということには気がついています。

この“経営とお金”という問題に関し、奥長先生は、「経営理念とは利益をどう考えるかに関わってくる」と説明されました。これは、利益、すなわちお金を儲けることは企業の目的の一つではあるが、「唯一の目的なのかどうか」、ということです。そこに、企業の目的は何なのか?何のために経営しているのか?という設問が生まれる背景があります。企業の目的が、地域社会への貢献、誰かの役に立つ、といったことならば、利益はそれを実現するための原資となり、利益確保は目的ではなく手段となります。この“利益をどう考えるか”という視点。単純な問いかけのようで、非常に奥深い、経営者の経営姿勢の本質を突く問いかけだと改めて感じました。

この質問、「何のために働いていますか?」とすれば、社員に対する問いかけにもなります。これに対して社員なんと答えるのか。「お金のため、生活のため」という回答も多く出るでしょう。それはそれで間違いではない。大事なのは、それが唯一の目的なのか?という点です。極端な話、働く目的がお金だけであれば、給料が下がれば社員は去っていくし、もっといい給料をもらえる会社があればそこに移ってしまう事になります。そういう価値観もあるでしょう。しかしそれでいいのか。そういう価値観だけで働き続けることがその社員の幸せにつながるのか。それを我々経営者が考え、社員に示さなければならないと考えています。お金だけではない働く目的。そして、きちんと判り易く説明する。それが経営指針の役割だと改めて感じています。

2.あらためて認識する「経営方針(戦略)」の重要性

今回のセミナー冒頭に、今日の中小企業を取り巻く情勢認識について奥長先生から話がありました。この中で、いわゆるリーマンショック以降の経営環境の厳しさから、「経営方針(戦略)の重要性が改めて認識されている。」という話がありました。リーマンショック以前の中小企業経営は、(経営方針(戦略)が不十分でも、)経営理念の社内共有がしっかりできていればそれで何とかやれていた、のだそうですが、リーマンショック以降は、経営方針(戦略)がしっかりしていないと環境変化に対処できないのだということです。そんなこともないだろうと思いますし、言葉尻だけ聴くといささか雑駁な話に聞こえますが、一昨年、実際に経営指針を策定した一人として、その言わんとすることは良く分かります。

経営理念とは事業を行うにあたっての経営の基本的あり方を示すものです。その内容はそれぞれの経営者なりの考えで定められるものですが、共通していることがあります。それは“善きこと”が前提だということです。世の中のためになる、人の幸せにつながる、そういった内容が記されます。“人を傷つける”とか、“社会を不安に陥れる”といった経営理念はあり得ません。ですので、経営理念に書かれている事柄は、社員の行動の規範となる性質を有している一方、事業そのものの具体的な方向までは明示しきれないのが通常です。

一方、経営方針(戦略)は、経営理念の徹底とその具体化、そして実現を目指して、あるべき姿と目標を示し、さらには、それに到達するための道筋を示すものです。また、3~5年程度の中期を想定して数値目標も含めて策定しますので、極めて具体的なものとなります。そして、その内容を定めるにあたっての考え方は多様であり、社内的にも様々な議論を戦わせる余地があり、だからこそ、具体性が高まりやすいと考えています。

私は、特に重要なのは「あるべき姿と目標」と考えています。3年後、会社がどんな姿になっているのか。社員が具体的にイメージできること、すなわち、自分がそこで活躍している様子がイメージできることが重要で、さらにそのためにこれからどんなことをしていくのかが示され、その取組みがあるべき姿の実現につながっていきそうだと予感させること。それが経営方針の最も重要な役割であり、それが出来れば、経営理念の徹底と相まって、組織が大きな力を発揮し、厳しい経営環境の中でも事業を維持発展させることにつながるのだと感じています。

3.10年かかる経営指針の定着~社員と一緒につくり上げる~

同友会においては、経営指針を策定後、それがその会社に定着するまでに10年はかかると言われているそうです。当社は、2011年に経営指針を策定しており、現在、策定してから2年目ということになります。一般的に言えば定着まであと8年はかかることになります。急ぎ過ぎず、しかし着実に、経営指針の実践を通じた定着に取り組んでいきたいと考えています。

この「定着」とは何か。言葉の定義について明確に確認はしていませんが、経営指針に示した会社の将来像や進むべき方向が現実のものとなり、それぞれの仕事において活躍する社員がたくさんいる、経営の数値的にも事業が伸びている、といったところでしょうか。大事になのは、経営指針を策定した後に結果を出すことでしょう。結果が出るから社員が信用する、そして信頼関係が少しずつ構築されていくのではないかと考えています。当社は幸いにも策定初年度にいい業績を上げることができました。お客さまと仕事に恵まれ、社員のみなさんが頑張ってくれた成果です。そして、「経営指針を策定した」という事実が、はっきりとは分からないけれど、見えない力で会社の地力を高め、次のステップに向えるように押し上げてもらったように感じています。

今回の講義で、定着に向けた具体的な取り組みについて、さまざまなアイデアを提示して頂きました。経営方針や経営計画を社員と共に創る、プロジェクトチームの編成やグループ討議などの採用、部門ごとの勉強会や定期的な検証会の開催、など、その組織の状況に応じた様々なやり方が考えられます。今までやって来なかったことを会社に導入するには労力がかかります。しかし、続けていくうちにそれが当たり前になる。そして成果が上がれば経営者と社員との信頼関係が高まり、また会社の力が増していく。そのいい循環が必ずやいい成果を社内に生み出してくれるものと信じ、これからも経営指針の実践に取り組んでいきたいと考えています。

コンサルタント朋友 奥長先生の指導

さて、ここからはお世話する立場での感想です。今回の経営指針成文化セミナー、いくつかの特徴がありました。一つは女性経営者の参加比率が高かった(6社中3名)こと。島根同友会ではこの度女性部会が新たに立ち上がりますが、そのタイミングで経営に真剣に取り組まれる女性経営者がたくさんいらっしゃることはとても心強いですし、ワークライフバランスなど、女性経営者だからより意識して目を向けることができる観点も熱心に議論されていました。また、1社から2名の経営者(代表取締役と常務取締役)が同時に受講するという試みも実施しました。経営のパートナーが最初の段階から経営指針を一緒に創る。それがどのような成果をもたらすのか、大変興味深いところです。島根同友会の経営指針成文化セミナー、少しずつ深化しながら毎年受講者を輩出しています。この取り組みの継続が必ずやこの地域の活性化につながるでしょうし、そういう意欲ある経営者のお世話をさせてもらうことで、“負けてはいられない”という意欲を奮い立たせてもらうことができます。様々な同友会活動の中で、この経営指針成文化を任せて頂いたことに感謝し、引き続き成果報告会まで受講生のみなさんと一緒に取り組んでいきたいと考えています。

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