島根県中小企業家同友会

島根同友会(松江)8月例会 ステージを変えながら島根を耕し続ける百姓経営者の熱意と実践力

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2011年8月9日、島根県中小企業家同友会松江支部の8月例会が開催されました。

この日は、島根同友会会員でもある、株式会社いずも屋 代表取締役 吉岡佳紀さんをお招きしました。株式会社いずも屋は、農業生産法人としてモロヘイヤの栽培を軸に健康食品製造、販売までをトータルに手掛ける会社です。また、吉岡さんは、オリエンタルランド(東京ディズニーランド・ディズニーシーの運営会社)、島根県職員、そして現在の農業生産法人の社長、という異色の経歴の持ち主です。

吉岡さんには、2011年4月の出雲支部例会でもお話を伺っています。その際は、東京ディズニーランド時代のお話が中心でした、今回は「日本を耕す!~ディズニー、県職員、農業と渡り歩いた男の熱き想い~」と題し、Uターンして県職員になり、さらにその後、現職である株式会社いずも屋の社長になってからのお話を伺いました。非常に多岐にわたり示唆に富んだお話で、とても全てを網羅することはできませんが、私にとって印象に残った話を中心にまとめてみました。

講演する吉岡さん 株式会社いずも屋 代表取締役

1.島根に雇用を生み、地域を元気にする~応援者から実践者へ~

今回の吉岡さんのお話では「雇用を生み出す」という観点が常に意識されていました。それには島根県職員時代の仕事が大きくかかわっているようです。

吉岡さんは、県職員時代にソフトビジネスパーク島根の立ち上げの仕事をされ、それきっかけに起業家支援などの仕事に携わられた経験をお持ちです。県職員として「島根に雇用をつくりたい」「島根でなきゃできないこと、出来ない価値をつくりたい」という想いを強く持たれ、様々な企業への企画提案をされていたというお話を伺いました。当時は変わり者の県職員というイメージだったのではないかと思いますが、そういった方こそ今の島根に必要です。現在の島根県職員の方から、第二の吉岡さんが現れることを期待したいです。

その後、県職員の立場で支援されていた先代のいずも屋の社長さんの後を引き継ぐ形で、現職に付かれた訳です。結果だけみれば、“応援が過ぎてそのまま自分でやる羽目になった”という感じですが、実はこれが一番すごいことだと思います。私も様々な方から支援、助言等を受けながら会社を経営させて頂いていますが、支援あくまで支援です。責任を持って意思決定し、実践に移すこととはまったく次元が違います。私も時には「じゃあお前がやってみろ」と思います。そんなものです。しかし、吉岡さんは違います。支援者だったのに自分が実践者になってしまった訳です。しかも、県職員という安定的な立場を捨て、農業という先行きの不透明な世界に飛び込んでしまう。その勇気、熱意にまず敬意を表さずにはいられません。

2.家族の理解と支えがあってこそ、やりたい仕事ができる

東京でオリエンタルランドに就職、県職員としてUターン、農業生産法人の社長へ転職、という異色の経歴を持つ吉岡さんですが、やりたい仕事に専念出来てきたのも家族の理解、支えがあればこそ、そんなお話も伺うこと出来ました。

実は、吉岡さんはご両親とも県職員というご家庭だそうで、ご両親は、一度東京で就職した息子が県職員としてUターンされたことについて大変喜ばれていたそうです。そのため、県職員を辞める際にはお父さんに大変な反対にあったそうです。一般的な感覚として反対されるのはよくわかります。一回は説得をあきらめかけたそうですが、ケンカ別れ的に退職することはぜず、最終的にはお父さんの理解を得ることに成功し、現在は一番の支援者になって頂いているそうです。そうやって最後には家族の理解を得て新しい仕事に取り組まれたことが、現在の活躍を下支えしていることは間違いないと思います。経営に限らないかもしれませんが、家族の支えがあってこそ自分がある、さらには、社員、お客様、取引先、様々な方々の支えがあって今があることへの感謝の気持ちを思い起こさせて頂ける話でした。

また、社長を引き受けるにあたっては、それ以外にも様々な障害や葛藤があったと思います。しかし、そこは多くを語られず、「むしろ、やりたいことが見つかったという気持ち」とだけ述べられた吉岡さんの前向きさ、熱意、そして男気ともいうべき姿勢に感銘を受けました。

3.農業にこだわり、自家栽培農園で“しまねを耕す”

株式会社いずも屋の主力商品は、自家栽培したモロヘイヤを使ったサプリメントです。原料を自家農場で無農薬栽培されるので消費者としても大変安心な訳ですが、そのこと自体は“当たり前”だというのが同社のスタンスです。もっと根底にあるのは、島根の農地を耕し、次世代に残すこと。荒れ地を作らず、少しでも耕地を増やしていく。そのことが島根の地域文化を次世代に残していくことにつながるのだという吉岡さんの想いを聞くことができました。その後、“自分たちが耕している”こと自体を企業の価値にしていきたいという考えを聞き、自らの夢と企業理念とのつながりの素晴らしさに感心しました。だからこそ、単なる健康食品屋ではない、いずも屋さん独自の魅力を生んでいるのだろうと感じます。

ビジネス的にも様々な工夫や施策に取り組まれています。自家栽培を選択されたのは、外注すれば安くなるが品質を担保出来ないという背景があり、その結果、現在の栽培面積は7.2haに及ぶそうです。スケールメリットと安定供給の2つの効果を狙われたものではないでしょうか。また、“商品がお客さんから遠ざかるほど値段が安くなる”という法則を重視し、自家栽培作物によって作り上げた商品を直接お客様に届ける、というスタイルを徹底されています。一方で、作物(モロヘイヤ)自体の価値を高めるために複数の大学との共同研究に取り組まれており、自社の独自価値を構築するための仕掛けづくりを地道にかつ、したたかに取り組まれているという印象を受けました。また、島根県産の機能性食品を一括して取り扱う別会社を立ち上げる等、販路開拓の効率化にも取り組まれています。幅広い視野を持たれ、バランスのとれた経営をされているという印象を強く受けました。

株式会社いずも屋は、吉岡さんとその素晴らしい理念と熱意に引っ張られ、今後、企業として益々発展されるのではないかと思います。応援したい会社というのは、こういう会社を言うのではないでしょうか。私がこうやってブログに書くことで、ほんの少しでも力になればとも思います。そして私自身は、今回教えて頂いた実践・チャレンジする熱い気持ち、家族を大切にする心、独自の企業価値を生み出すための理念・工夫・努力、といったものをよく学び、自社の経営に役立てていきたいと考えています。

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