島根県中小企業家同友会

島根同友会 幹部研修会~中堅・幹部がたくさんいる会社は強い~

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2014年1月25日(土)、島根同友会の幹部社員研修が開催されました。会員企業の幹部社員(役員、部所長、幹部候補生等)を対象とした研修で、島根同友会としては初の試みです。今回、9社(9名)の参加者がありました。限られた要員で事業に取り組む中小企業では、当然、幹部社員も限られます。その幹部社員がどのような姿勢で社業に取り組むかは、事業に大きな影響を与えることは間違いありません。当社からは1名参加予定でしたが、急用で欠席。私が、聴講者として参加させて頂きました。講師としてお迎えしたのは、広島同友会求人社員教育委員会の川中英章委員長(株式会社イベントスコミュニケーションズ代表取締役)です。川中さんは、広島で飲食業を中心に事業を展開されており、創業以来の紆余曲折、様々な経験を経て、現在は素晴らしい経営を実践されています。幹部研修という枠を超えて、本当に学びのある素晴らしいお話を伺う事ができました。その一部を整理しておきます。

講演する川中さん(広島同友会 求人社員教育委員長)

1.一人一人がすごくてもバラバラだと立派な会社にならない

経営指針は、“会社のエネルギー”そのものだと、川中さんはおっしゃいます。

「会社のエネルギー」と呼ぶのは、一人一人がすごくてもバラバラだと力を発揮できない、という意味合いです。すごい能力を持つ人が協力することで、大きな力を発揮する。まさにその通りだと思います。経営指針を使ってそれをどう実現していくのかが問われます。そして、“経営指針が浸透していないと当たり前の事が出来ない”、ともおっしゃいます。一方で、当たり前のことを当たり前以上にやっていると、それに周囲が巻き込まれていく。経営指針を用いて会社をうまく回していくための基本が、そこにあると感じます。

さらに、「上手く行っていない会社はルールが多い」とも指摘されます。マナーが無い会社にはルールが要る。しかし、規制が多いと逆らおうとする。その悪循環が始まる。自らの規範に基づいて判断して行動する会社と、ルールだからそれに基づいて行動する会社、どちらがいい会社なのか、言うまでもないでしょう。しかし、現状は、とかくルールを作ろうとする風潮です。そうしておかないと、いざというとき企業に損失が生じるから。企業防衛のテクニックとして、そういう対策が必要な部分もあるでしょう。しかし、それが企業経営の本質ではないことは、肝に銘じておく必要があると改めて感じたところです。

もう一つ、今回の講演で印象に残っている言葉があります。「会社の出しているオーラは入社前から人を染めてしまう」というものです。これは、広島同友会での経験談ですが、共同求人によって採用した新入社員の合同研修などに訪れる社員をみると、あれはどこそこの会社の社員ではないか?という予想が当たる、とおっしゃいます。正式採用前のインターンシップや事前研修によって、入社予定の新卒者が既にその会社の風土に染まってしまう、という訳です。挨拶の出来る会社の社員は挨拶ができる。元気のいい会社の社員は元気がいい。その逆もある。いい会社でこそ、いい人財が育つ。当たり前だけど、その言い循環をつくり出すこと。それを継続することが、経営者の仕事ではないかと感じます。

2.「タコ野郎」を無くすことが幹部の仕事

“幹部の仕事”について、「タコ野郎」という話をして頂きました。タコというのは、自分の経験からしか学習できない生き物だそうです。母親は卵の孵化とともに息絶えるそうで、子どもに自分の経験を伝えることはない、という話をされました。だから、タコは先祖の失敗を継承して成長できない。「タコ野郎」とは、同じ失敗を繰り返す人のこと。これを無くすのが幹部の仕事だと明言されます。

最近の幹部の特徴として、「若い人のメンテナンスをする時間、面倒をみる時間が減っている」という指摘がありました。そして、上手くいっていない会社は、幹部が若い人の声を聴いてあげていない、とも話されます。その上で、“近頃の若い人は、、、、”というよくあるセリフに対し、その「近頃の若者」をつくっているのは、他ならぬ「幹部」であると、おっしゃいます。その根本原因として、若い人を辞めさせることは会社に多大な損失を与えること、幹部にその意識があるのかどうか、と指摘されます。長く勤めている社員が居るから、失敗事例を含めて経験を伝承していける。社員が辞めていく会社にはそれが無い。そのことがどれだけ会社にとって損失なのか、そのことを認識できるのが幹部である、との指摘はまさにそのとおりです。

そして、幹部が担うべき2つの仕事について話がありました。一つは、安心して失敗できる社風を作ること。もう一つは、過去からの仕事を、勇気を持って若い人に手渡すこと。失敗が怖いのは当たりまえ。しかし、その失敗がなければ成長しないし、その経験を後々に伝承することもできない。だから、後は安心して失敗できる社風があるかどうか。そのためには、まず若い人に仕事を渡すべき。そして、仕事を渡したベテランは新しいことに取り組む。新しいことへの挑戦と若手の育成。これは別々の事ではなく、全てつながっているのだと、改めて理解させて頂きました。

3.「魅える化」で生きざまを示す~ビジョンポスターで将来を可視化する~

補足報告において、「見える化」ならぬ「魅える化」について、思いもよらぬお話を聴くことができました。

「魅える化」とは、言うなれば“魅力ある未来を可視化する”といったような事だと理解しています。その具体的な方策が「ビジョンポスター」。㈱イベントスコミュニケーションズのホームページにも載せているということでしたの、確認してみました。これは、同社が運営する「チャレンジ農園吉山」という里山支援事業の将来の姿を描いたものです。これは、“2018年10月1日にこのようになっている”というビジョンを具体化したものだそうで、社員のみなさんも含めて、そのチャレンジ農園で活き活きと過ごす姿が描かれています。そして、それを実現するために逆算して計画を組み立てているということです。さらには、この2018年の決算予定書を作成し、社員に公表、共有しているということです。

具体的に書くことで様々な落とし込みが出来る、ということ。経営者の仕事の一つに、社員に対して将来像を示す、という事があります。明るい未来が展望できるから、社員の意欲も高まるし、一致団結してそれを目指そうという機運も出てくる。言葉で言うのは簡単ですが、中々できるものではありません。今回、その一つの形として、ビジョンポスターという方法を見せて頂きました。このポスターは、社員と一緒に作成されたそうです。よく、経営指針を一緒につくる、と言いますが、その実践の究極の形の一つではないでしょうか。自分で描いた将来像だから、自分自身もそれを目標として頑張れる。そういった会社、社員で構成される職場の空気は、新しい社員をそれに染めていく。そこに良い循環が生まれてくるのだと感じます。

川中さんは、最初に商売を始めた時、「まわりの人をワクワクさせる」という使命を定めたそうです。挫折や紆余曲折を経て、いま、その原点に立ち返って心がけていらっしゃるのは、「自分自身が魅力的に生活すること、活き活きと生活する姿を見せること」だとおっしゃいます。それが、前述の「魅える化」の究極の姿と言えそうです。その姿は、周囲の社員に広がり、将来像の実現を確実なものにし続けている、そんな印象を持って聴かせて頂きました。

参加幹部社員によるグループ討議

講演の最後に、「幸せのリーダーシップ」という話がありました。「あなたが居なくなったら困る」、そういう会社を造っていく。自分自身がやりたい、だから仲間を増やす、その先に売上や利益がある。自分の幸せをつかむために先頭に立って走っていくこと。そして幸せの仲間入りを果たすこと。経営者が、幹部が、それを率先して実践し、若い人に魅力ある大人の姿を見せる。それが、幸せのリーダーシップ。結びの言葉は「元々いい会社はない、そういった気持の会社がいい会社にみえる。」まさに、経営者そして幹部の目指すべき姿があると納得します。自分自身、仕事が楽しくて仕方がない、仲間を増やしたくて仕方がない、そういう経営者を目指すことを改めて心に誓う事ができた、素晴らしい講演でした。

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