本社屋への地中熱ヒートポンプ空調システムが完成してから1カ月半が経過しました。
運転開始から1カ月間の運転データを取得分析し、昨年のデータ(消費電力量)と比較することが初めてでき、システムの運転状況が数値面から明らかになってきました。今回、1カ月間のまとめとしてデータからみたシステムの実力や課題を整理(分かりやすく消費電力量で比較)するとともに、この間の取組みや気づき等についてまとめています。
1.消費電力量の削減は思いのほか伸びず~設定温度や平均気温の影響が大~
8月1日から運転開始した地中熱ヒートポンプ空調システムは、その能力を確かめるため、8月中は連日ほぼ全開運転で運用してきました。本システムでは、ヒートポンプの運転にかかる積算電力量を記録できるようになっており、いつ、どのぐらいの電力量が発生したかのデータを蓄積しています。運転開始後1カ月を経て、1カ月間の積算値を、過去の8月の使用電力量と比較することができました。
結論としては、消費電力量は昨年との比較では思いのほか削減されませんでした。過去4年間の8月分の消費電力量(エアコン用の低圧電力契約分)は次のとおりです。(カッコ内は、2012年の消費電力が占める割合、温度は松江市の8月の日平均気温の月平均値(気象庁データ)とエアコンの設定温度)
年度 消費電力量 平均気温 設定温度
2012年 1,573kwh 28.7℃ 25~27℃
2011年 1,874kwh(83%) 27.2℃ 27℃
2010年 2,119kwh(74%) 29.2℃ 28℃
2009年 1,707kwh(92%) 25.2℃ 25℃
2008年 3,074kwh(51%) 26.7℃ 不明
消費電力量だけみると、昨年比で17%の削減。当初の想定では、ピーク時運転を継続しても3割程度は削減できると見込んでいましたが、そこまでの結果は出ませんでした。しかし、過去に遡って比較すると、もっと削減出来ているケースもありますし、2008年比では約半分です。また、今年は設定温度をかなり低めにし、室内を常時25℃ぐらいに保っていました。一方、2010年、2011年は、経費節減の一環として室温設定を28℃、27℃としており、屋内はエアコンがあるとはいえ、かなり暑い状態でした。そして、2010年と今年はかなりの猛暑で、2009年は比較的涼しかった、という外気温の問題もあります。さらに、当社の社屋は木造2Fで、鉄筋コンクリート造などの建物に比べると断熱性能はかなり低く、外気温の影響をかなり受けます。このため、暑い年はエアコンの出力にも大きく影響を与えるのが実態です。
そう考えると、従来の設備に対してはやはり3割程度、そして使い方によっては最大で半分の電力量の削減が達成できる、と推定することは出来ますが、当社屋において、それを表面的に現れる消費電力量でもって比較することは中々難しいということが見えてきました。この1カ月で結論が出る訳ではないですが、実際にやってみたからこそ分かることがあります。今後さらにデータの分析を進めるにあたり、頭に入れておかねばならないし、具体的な提案を検討していく際にも考慮しながければならない点だと認識しています。
2.補助金申請対応もセットで経験することで次につながる
当社の地中熱ヒートポンプ空調システムの導入にあたっては、一般社団法人環境共創イニシアティブ(以下、「SII」と言います。)が実施主体となっている国の補助事業「建築物節電改修支援事業」を活用しています。現在、工事が完了し、その工事成果品と補助金採択に向けた確定検査資料をSIIに提出し、検査待ちの状況です。事業の執行が適正に行われているかを、提出資料及び現地で確認する確定検査を経て、補助金の交付を受けることが出来ます。
この補助金を受けるための手続きや準備というのが中々大変な作業です。国の税金を頂く訳ですからそんなに簡単には済ませる訳にはいきませんが、補助金の交付申請から採択、中間報告、最終報告、と中々の長丁場で、準備する資料も膨大です。過去から経験の企業に伺うと、年々提出する資料が増え、複雑化しているとのことです。受ける側としては出来るだけ簡単な方がいいですが、新しい技術や設備が定着するまでの間、こういった国の補助金制度などが普及を後押しするというのは、これらの事業に携わろうとする者にとってはありがたいことです。制度があればこそ、導入に踏み切られる方もいらっしゃるでしょう。こういった制度の活用を含めて提案し、投資を誘発していくことも仕事のやり方の一つと認識しています。
今後、当社が地中熱ヒートポンプを活用したシステムを提案していく際には、当面の間、様々な補助金の活用とセットになると考えています。その意味では、自社への導入に際して、補助金の申請から最終的な受領まで、自ら携わって実施できたことは、大きな経験として今後の展開に役に立つと考えています。
3.マスコミ取材・パブリシティへの対応が社内を活性化
地中熱に取り組んだことをきっかけに、このところ、各種地元マスコミや広報誌などで当社のことを取り上げて頂く機会を複数回頂きました。大変ありがたいことです。経済誌などでは取り上げて頂く事が少ない業種ですし、特に当社はこれまで、取材をして頂く機会などあまりありませんでしたので、中々慣れませんでした。しかし、やはり何かしらの媒体で世に出るということは少なからず反応があり、事業運営にとって意味があることだと感じます。
もう一つ大きな機会として、地元のケーブルテレビ局であるマーブル(山陰ケーブルビジョン)の番組で取り上げて頂く機会がありました。“元気で頑張っている企業や商店の取り組みを、経営理念や将来展望等のインタビューを交え紹介します。”という趣旨の番組で、地元ローカルとは言え、そのように認めて頂いて取り上げて頂ける事に感謝したいと思います。
その番組を撮影して頂くにあたっては、全社員が何かしらの形で番組内に登場するようにしたいと考え、取材当日の職員のインタビューや社内での仕事ぶりなどの撮影時に配慮して頂くようお願いしました。また、取材当日だけでなく、自社で撮影したビデオなどを活用して頂き、番組を作成して頂きました。社員にインタビューの対応をお願いしたところ、忙しい中みんな心よく対応をしてもらいました。こういったテレビ番組の取材を受ける機会も早々無い事だと思いますので、いい経験でもあるし、そういう番組に取り上げられるということ自体、多少なりとも社員の士気を高めることになるのかなと感じたところです。
番組は9月13日から放映され、月内に再放送が何回かあります。自分自身で見ると気恥ずかしい気もしますが、少しでも多くの方に当社のことを知って頂く機会となり、また、取引先や社員の家族の方々に当社のことを知って頂けることにも意味があると思います。大変うまく番組を構成して頂いており、そこで紹介された仕事ぶりや将来展望に恥じないよう、さらに努力していきたいと考えています。
システム運用開始からわずか1カ月半ですが、これまで10回(10組)の方々に当社のシステムを見学して頂きました。早速来て頂いたにも関わらず、十分な準備ができず資料も整わないまま説明せざるを得なかったことを申し訳なく思っています。そもそも、会社を見に来て頂くという経験がほとんど無かった会社ですので、対応についてもこれから学んで行かねばなりません。しかし、外部の方に立ち寄って頂けるということ自体が、大変ありがたいことであり、我々自身も緊張感を持ち、襟を正して日々の仕事に携わっていく、いい機会になっていると考えています。