私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。
53箇所目は、島根県松江市の松江しんじ湖温泉の「松江ニューアーバンホテル」です。訪問日は、2012年4月30日です。
松江しんじ湖温泉は、その名のとおり、島根県松江市の宍道湖北側の湖畔に広がる温泉地です。かつては「松江温泉」と称されていましたが、2001年に現在の名称に変更されました。松江しんじ湖温泉には、2つの泉源があります。第一泉源の源泉温度は76.5℃、湧出量は200㍑/分、第二泉源は、源泉温度82.3℃、湧出量200㍑/分、の能力(いずれも源泉地の成分分析表による)を誇り、島根県内で最も湧出温度の高い温泉です。それぞれ温泉街の中にあり、2つの泉源の距離は800mほどです。この近い距離にある泉源で、かつ自噴泉。合計で約400㍑/分を湧出するのは、中々優秀な温泉井戸といえます。現在は、第一泉源が各温泉施設への給湯用に使用されており、第二泉源では温泉スタンドでお湯を汲むことが出来ます。
松江しんじ湖温泉の泉質は、ナトリウム・カルシウム‐硫酸塩・塩化物泉です。お湯は無色透明です。浴室に掲示されている成分分析表(第一泉源の分析表が採用されています)によると、成分総計は1.93g/kgとほどほどの含有量ですが、源泉の温度が高いため加水されています。また、この施設では、循環式が採用されています。いずれにしても、成分的には濃過ぎず、かつ適度な成分量を有する、入りやすいバランスのとれた温泉と言えます。泉質の特徴としては、硫酸塩泉が有する「傷の湯」の効果と、塩化物泉の有する「温まりの湯」の2つの特性を有します。特に、成分的には硫酸イオンの濃度が高いので、打身、切傷、火傷、捻挫などへの効果、皮膚の湿疹、ニキビ、かゆみ、などにも効果が期待できます。美肌の湯としてみると、ナトリウム-硫酸塩泉は、皮膚に皮膜をつくるしっとり肌効果、カルシウム-硫酸塩泉は、肌の弾力回復や引き締め効果、が高いとされており、その両方の特性を有しています。この点については、島根県東部の主要な温泉、松江しんじ湖温泉、玉造温泉、鷺の湯温泉、いずれにも共通する特性と言えます。
お風呂は、内湯のみの構成ですが、「展望温泉」とホテルの前面にも看板が掲示されていますが、ホテルの3階、宍道湖の前面に浴室を配置し、宍道湖の眺望を楽しみながら入浴できるのが売りの一つとなっています。浴室内は、濃い茶系のタイル張りで構成され、落ち着いた雰囲気です。風呂も大浴槽のみのシンプルな造りで、宍道湖側に横長の浴槽を配し、反対側に洗い場が配置されています。浴槽は、長方形で一部に曲線を使った形状で、洗い場側にずっと段がつけてあります。この段に腰掛けて、前面の宍道湖を眺める、という趣向です。女湯はどうかわかりませんが、男湯については、ホテルの建物の柱の関係で、眺望の良いゾーンが浴槽の2/3程度に限られてしまっているのが、やや残念ではありました。訪問したのは日中だったので、夜はまた違った景色が楽しめるのではないかと思います。
洗い場は7箇所、シャンプー、コンディショナー、ボディソープが備わっています。仕切りは無いタイプですが、洗い場の間隔はゆとりがあり、使いにくさはありません。脱衣場には、鍵付きのロッカーは無く、籠に衣類を入れておく形式です。貴重品用は専用のロッカーを利用するタイプです。基本的にホテルの宿泊客の方々の利用を前提としているので、これはこれでいいかと思います。洗面台は3箇所、ドライヤーは2つ設置されていました。ちなみに、この脱衣場も宍道湖を眺望できる位置にあるのですが、目隠しの為、窓は擦りガラスとなっています。添付の写真は少し窓を開けて間から撮影したものです。せっかくの眺望ですので、脱衣場の窓もクリアにして(もちろん外からは見えないタイプで)、湯上りにも眺望を楽しめるようにすれば、もっと魅力が増すのではないかと感じたところです。
利用料金ですが、日帰り入浴の場合は大人1000円です。“温泉のみの利用”と考えると割高感は否めませんが、館内のレストラン等を利用する場合は、150円で入浴できるとホームページに記載があります。宿泊の場合はもちろん無料です。ですので、日帰り利用の場合は、昼食など食事とセットで活用するのがお得な使い方と言えそうです。あくまでビジネスホテルですので、敷居も高くありません。昼食がてら温泉にも入ってリフレッシュ。地元の方も、出張の方も、肩ひじ張らず、気軽に使える雰囲気が魅力と言えます。
松江しんじ湖温泉では、8つの旅館・ホテルが温泉街で営業(松江しんじ湖温泉組合)しています。各宿がその特徴を活かし、宍道湖の北側湖岸に位置し、宍道湖や大橋川の眺望や四季折々の変化を楽しみながら温泉を楽しむことが出来ます。また、島根県市町村職員共済組合宿泊所(ホテル白鳥)も2012年12月にリニューアルし、入浴施設も新しくなったようです。さらに、温泉街エリアでの再開発ビルが計画されており、そこにも新しい温浴施設が計画されているようです。また、一畑電気鉄道の松江しんじ湖温泉駅前には、足湯も整備され、日頃からたくさんの利用者で賑わっています。
当社も松江市に立地する会社です。そのお膝元の温泉地ながら、これまで温泉めぐりで取り上げる機会がありませんでした。今回、遅ればせながら取り上げることができましたので、今後、他の施設も順次回ってみたいと思います。島根県の県都松江の温泉地。前述のとおり、今後大きく変化していきそうな松江しんじ湖温泉。今後が楽しみな温泉地です。松江ニューアーバンホテルは、その中では最もビジネスユース寄りの宿泊施設と言えます。日頃のビジネス利用だけでなく、手頃な価格設定もあってか観光シーズンには多くの観光利用もあるようです。様々なタイプの温泉宿がさらに、発展されることを期待したいと思います。