温泉めぐり

社長の温泉めぐり56 立久恵峡温泉(御所覧場) 島根県出雲市

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私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。

56箇所目は、島根県出雲市乙立町の「立久恵峡温泉(御所覧場(ごしょらんば))」です。立久恵峡温泉は、出雲市を代表する景勝地である“立久恵峡”にある温泉で、渓流沿いにある2軒の旅館で入浴することができます。いずれも日帰り入浴が可能です。今回は、そのうち松江藩主 松平不味公の別荘跡地に立地するという「御所覧場」に、日帰り入浴で伺いました。訪問日は、2013年7月3日です。

御所覧場の建物

この御所覧場のお風呂の特徴は、「露天風呂しかない」という点です。しかも、旅館敷地と道路を挟んだ向かい側、すなわち渓谷の川辺に面して風呂があります。渓谷脇の道路から川沿いに少し降りる形で露天風呂に向います。建物の入口に“料金はフロントで”という但し書きがありますが、勝手に入る人はいないのかと心配になってしまう雰囲気です。入口から向って左手が男湯、右手が女湯、と分かれていました。(※なお、昨年のリニューアルでお風呂が新設されたお部屋もあるようです。)

露天風呂の中は、岩風呂風のつくりで、露天風呂といいながらもかなりの部分が屋根で覆われています。むしろ、内湯の一部が開口しているといってもいいかもしれません。しかし、前面に広がる立久恵峡の渓谷に向った大きく開けており、山陰随一の景勝を眺めながらゆっくりと浸かれる広めの露天風呂は、非日常的な秘湯の雰囲気を十二分に堪能させてくれます。そして、この風呂は、ややぬるめの温度設定(季節が変われば調整されるのかもしれませんが)になっていました。秋口以降もこの温度であればちょっとぬるいとかと思いましたが、実は、風呂の一角が1~2人用に小さく仕切られており、そこに熱いさし湯がそそがれ、越水が大きな風呂に流れ込むようになっていました。このため、この小さな風呂は温度が高く、熱い風呂がいい方はこちらに入る、というスタイルなのでしょう。なお、先に小さい方に入ってから大きな風呂に入ると、最初はかなりぬるく感じてしまいます。

露天風呂(男湯)の様子

立久恵峡温泉の泉質ですが、見た限り建物内には正式な成分分析表の掲示が見当たらなかったのですが、浴室の看板には「含砒素石膏食塩泉」と記されていました。これは、現在の表記で言うと、ナトリウム・カルシウム‐塩化物・硫酸塩泉という泉質名になると推定されます。また、“含砒素”というのは現在の泉質表記では表現されませんが、成分に微量の砒素が含まれているのでしょう。この他、インターネット上の情報では、源泉温度31.8℃、成分総計9.87g/kgというデータもありました。実際、口に含むとかなりの塩味を感じます。加水もされていない(加温、循環式との表示あり)ようなので、成分的にはかなり濃い温泉と言えるでしょう。

適応症としては、塩化物泉の特性により、湯冷めしにくく強い殺菌効果を持ち、また、硫酸塩泉の特性により、傷や火傷等の治癒効果が高く肌の弾力回復や引き締め効果が期待できます。前述のとおり成分濃度もかなり濃いと思われ、その特性が強く表れる温泉であると考えられます。入浴感はさっぱりとした感覚で、ぬるめの温度設定とあいまって比較的長い時間の入浴にも向いていそうです。ただ、正確なところは分からないものの、かなり成分濃度が高いので、肌の弱い方をはじめとして、湯あたりには注意が必要です。

洗い場は5箇所ありました。かなり狭いスペースに苦労して配置された様子が伺えました。シャンプー、コンディショナーとボディソープが備わっています。洗い場の間隔は狭く実際に5人が使うのは中々大変そうです。また、洗い場の前には鏡はありませんでした。脱衣場は、建物の入口からすぐのところにあり、鍵付きのロッカーが6個あります。別に籠のみが6つほどおけるようになっていました。洗面台は入口脇の待合コーナーのようなところに1箇所、ドライヤーもそこに1つだけ設置されていました。利用料金は、大人500円という設定です。

ところで、この施設を訪れるにあたり一つ注意が必要なことがあります。御所覧場がある場所は、渓谷の中でも最も急峻な場所(だから眺めもいい)のようで、道路がセパレート(上下線が離れている)になっている点です。建物はその上下線の間の敷地に立っています。そして、主要な駐車場は上り線(中国山地側から出雲市内に向う方向)の道路沿いにあるため、出雲市内側から向うと一旦しばらく先まで進んでから折り返す必要があります。山陰地方有数の景勝地ですから、それだけ地形的にも急峻だということでしょう。

露天風呂入口(左に降りると男湯、右が女湯)

“露天風呂のみ”というこの温泉。心を落ち着けたい時、日常の雑踏を離れたい時など、立久恵峡の四季折々の景観を楽しみにしながら訪れるのもよさそうです。なお、貸し切り露天風呂もあるようです。実は、男湯の入口横に「絶景の湯」という看板があり、入れるのかと思いきや鍵がかかっていました。ここがそれに当たるのかもしれません。ホームページによると、宿泊の方は無料で利用できるようです。またいつか機会があればと思います。また、御所覧場は、昨年、宿の中をリニューアルされたようで、お部屋からの立久恵峡の景観も絶景のようです。

「山陰の耶馬渓」と称される立久恵峡(「耶馬渓」をそもそも私は知りませんでしたが)。1時間ほどで渓谷を周遊することが出来るようです。ゆとりを持ってゆっくりと訪れ、絶景を楽しみながら心地よい汗を流した後の一風呂。さらには宿泊して美味しい料理とゆっくりと入浴を楽しむ。これが本来の立久恵峡温泉の楽しみ方なのでしょう。初めて訪れましたが、とても魅力的な、そして、またいつか訪ねてみたいと思わせる、すばらしい温泉でした。

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