島根県中小企業家同友会

島根同友会松江支部10月例会 「形から入って心に至る」~同じ目的・目標を持つ同士が前に進むために~

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2013年10月11日(金)、島根県中小企業家同友会 松江支部・雲南地区会合同10月例会が開催されました。この日は、「『私の経営道』~人づくりは環境作りから、形から入って心に至る~」と題して、株式会社さんびる 代表取締役 田中正彦さんから報告を頂きました。さんびるさんとは、島根経営品質研究会の活動を通してお付き合いがあり、経営方針発表会に参加(第35期第36期)させて頂くなど、たくさんの学びを頂いております。さんびるは、2013年3月に「日本で一番大切にしたい会社大賞・審査委員会特別賞」を受賞されたことでも、一躍話題になりました。今回、同友会の報告者として田中正彦さんから改めてお話を伺う機会得て、さまざまな気づきを頂くことができました。本当にごく一部ですが、整理しておきます。

報告する㈱さんびる 代表取締役 田中正彦さん

1.市場にはライバルとお客様しかいない~“親密な顧客関係”で差別化~

冒頭、「市場にはライバルとお客様しかいない」という話がありました。

企業は、その企業が取り扱う商品やサービスを提供する“市場”を相手に事業を運営しています。市場という外部環境には様々な制約や条件があるように感じますが、突き詰めれば、ライバルとお客さましかいない。その2つしかないことを認識すれば、お客様は自社のファンにし、ライバルとは戦っていく、という明確な方向性が見えてくる。後は、戦う時にどこで戦うのか、何を持ってライバルに勝つのか、ということになります。

田中社長が示された3つの選択肢は、1)製品の優位性、2)業務の卓越性、3)親密な顧客関係、の3つです。そして、さんびるでは、3)の親密な顧客関係、を強みにライバルと戦っている。平成13年に田中社長が代表取締役専務に昇格された際、経営品質の考え方に触れ、この「親密な顧客関係」を差別化に経営を進めることを決断されたそうです。“貴方から買う、貴方だから買う”という戦略。“人”で差別化している訳です。

この“人”で差別化するという考え方、企業経営ではよく指摘されることです。しかし、中々できません。さんびるでは「社員同士お客様」という基本精神があり、社員同士で感謝し合う、尊重し合う、そういった社風をつくり上げられています。さらにそれを定着させるための社員教育の仕組みが構築されている。そして、なによりも、一人一人の社員がこの会社に入って良かったと思えるような会社づくりに向けて、社長である田中正彦さんが社員一人一人と向き合い、ひざ詰めで対話を継続されています。“人”による差別化、それが出来る・出来ないは、経営者の想い、考え方、を一人一人の社員に徹底して伝える努力が出来るか出来ないかに大きく関わっているのではないかと改めて感じたところです。

2.プラスアルファの魔法が成功を導く

報告の中で、「プラスアルファの魔法」という話がありました。

ほんの小さなプラスアルファを加えることで、相手が受ける心像に大きなインパクトを与えることがある、という成功法則の一つだそうですが、田中正彦さんは、挨拶を例にとって説明されました。挨拶は大事だが、ただ「おはようございます」と挨拶するのではない。「○○さん、おはようございます!」と名前を呼んで挨拶する。さらに、「○○さん、おはようございます!今日もすてきな笑顔ですね!」と声をかける。小さなことだが、それを続けることで後々どれだけ大きな変化につながるか、と語られます。

仕事でもそうでしょう。指示されたことだけする人と、指示されたこと以上の仕事をする人。どちらがその先成長するのか。企業全体で言えば、頂く対価どおりの仕事しかしない会社とそれ以上の仕事をする会社、どちらがお客さまに可愛がってもらえるのか。そして、大事なのは、過剰なサービスやタダ働きが必要だと言っている訳ではない、という事です。わずかなことであっても、いや、わずかなことこそ、将来につながる可能性があるという事です。ちょっとしたお礼をする、他社より丁寧に掃除する、色々な形がありうるでしょう。だからこそ、さんびるでは「凡事一流」という考え方を大事にされています。そのことを、(A)あたり前のことを、(B)バカにしないで、(C)ちゃんとやる、というABC活動として実践されてきています。

このABCのうち、“バカにしない”という部分、違う見方をすれば「やっても意味がない、無駄だ」などという決めつけや思いこみと言ってもいいかもしれません。というのは、“プラスアルファの魔法”のポイントは「見返りを期待しない奉仕の心」だそうです。「意味が無い、無駄だ」という考え方自体が、見返りがあるかないかと前提としています。得か損か、といった価値観ではないところに成功に秘訣がある。それは、さんびるという会社がその成長をもって証明していると改めて感じるところです。

3.形から入って心に至る~心は見えない、だから形をつくる~

今回の報告のタイトルにもある「形から入って心に至る」という言葉。形だけでもできるようになれば、心の方は自然とついていくる。また、形ができるようになれば、その理由や本質も自然と理解できるようになる、という意味です。経営に際してこの言葉がどう当てはまるのかについて、田中正彦さんは「人の心の中は見えない。だから、形をつくる。」という端的な説明をされました。心に問いかけても駄目、形にしてさせてみて、何かに気づかせることが大切だ、という訳です。

そして、さんびるで実施されている「環境整備」という徹底した整理、整頓、清掃も“形”の一つであり、社員はそれを強制されます。そのことについて、「企業とは共通の目的、目標を持って集まった集団であり、同志である。しかし、一人一人の背景は全く異なる。それが同じ目標に向かうためには、「形」をつくらないと進まない。会社が持っている価値観に揃えるためには、何らかの形で強制するしかない。それが必要だということを教えるのは経営者の仕事だ。」と話されました。

“強制”などと言うと、社員から反発がありそうな気もします。しかし、その根底には、社員の幸せを本気で考える経営者の姿があり、その背中を見せ続けるからこそ、つくった「形」に社員を従わせることもできる。「さんびるの商品は社員だ」と明言される田中正彦さん。だからこそ、形にこだわる。その本質と実践を教えて頂いたと思います。

たくさんの参加者で大盛況の例会

大きく飛躍している株式会社さんびる。その会社を率いる田中正彦さんが今回の報告を総括しておっしゃられたのは、「一つ目は、経営者の哲学と覚悟と信念。二つ目は、仕組みをつくること。」という2点です。そして、最も大事だと言われるのは、「社長が本気にならなければ駄目だ」ということです。経営に際して大きいのはリーダーの存在。リーダーは、「決めたらやる、やったら続ける」。言葉にするのは簡単ですが、決めたことはやりとおす、リーダーの覚悟と強い意志が必要だということです。しかし、一方で、決める前に社員としっかり語ることが必要だとも話されます。そして、その言葉どおり、さんびるには会社の仕組みとして、経営者と社員とが語り、話し合う様々な場が設定されている。そういった仕組みを「形」にし、リーダーの強い意志で運用し続けていることが、さんびるの強みであり、飛躍の原動力になっていると感じます。自分自身に足りない部分、いつの間にか意識が薄れていた部分、たくさんの気づきを頂いた田中正彦さんに、改めてお礼申し上げます。

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