私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。
24箇所目は、島根県飯南町の「加田の湯」です。訪問日は、2010年8月25日です。
この場所には古くから温泉施設があったようですが、現在の施設は比較的最近新しくされたもののようです。木造瓦葺の建物は、田舎の素朴さを出しながら小奇麗にまとまっており、好印象でした。(古い施設は、かなり鄙びていたらしいのでそれも興味ありましたが。)
泉質は、ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物泉ですが、溶存ガス成分が高いのが特徴です。成分表によれば、遊離二酸化炭素が942mgとなっています。これは、島根県内では、ゆだに温泉、頓原ラムネ温泉などに次ぐ含有量で、“炭酸泉”こそ名乗っていませんが、それに近い特性を有しています。
利用料金は、大人400円です。同じ飯南町のラムネ温泉も400円ですので、町内の施設として値段を揃えているのかもしれません。この2つの温泉は、泉質的にもよく似ており、同じ町内(合併前は別々の自治体だったが)に似た泉質の温泉施設が近接して存在するというのは、いいような悪いような。値段は一緒ですので、どちらかが混みあっていれば、もう一方を利用すると言う使い方もあるのかもしれません。ちなみに、温泉施設としての風情という点では、加田の湯に軍配が上がると思います。
この温泉は源泉温度14℃ほどの冷泉で、黄色く濁っています。いわゆる“黄金の湯”などと称されるタイプのお湯ですが、こういった濁り湯はいかにも温泉らしく、いいものだと思います。源泉かけ流しで利用されているようで、お湯の鮮度がよく特長である炭酸成分に鮮度良く触れられる点もいいところだと思います。湯あがり感もさっぱりしており、濁り湯の見た目の印象と異なり、気持ちよく入れる温泉です。
お風呂ですが、浴室はシンプルで長方形の大浴槽があるのみで、ちいさな水風呂とサウナが付いています。露天風呂はありません。岩風呂と檜風呂の2種類あり、男湯と女湯が定期的に入れ替わるようです。私が訪れた日は檜風呂が男湯でした。浴槽や床には温泉成分がかなり付着しており、成分量の多さを物語っています。檜風呂といわれても檜なのか何なのかわからないぐらいでした。室内は天井が高めで、木造建物の特長を活かし、梁を見せるつくりが心地よい印象を与えています。
洗い場は7箇所で仕切りなどはありません。ボディソープとリンスインシャンプーが備え付けてあります。一人あたりのスペースは比較的広めだと思います。脱衣場のロッカーは、鍵付きが24個、扉が無く脱衣カゴだけが置いてあるスペースもあり、貴重品などを持ちこまない地元の方向けの配慮もしてあります。洗面台は3箇所ありましたが、ドライヤーは2つでした。
加田の湯の施設ですが、温泉だけでなく畳敷きのホールや交流室などがあり、有料で使用できるようになっていました。フロント付近では地域の産物などを売っています。また、地域の集会施設が併設されており、地域の交流施設の役割も果たしているようです。食堂もあり、食事や喫茶が楽しめるようになっています。チラシには“各種宴会料理もご相談下さい”とあり、地元の宴会などでも使われていのでしょう。
ところで、私は普段サウナは利用しないのですが、今回サウナと水風呂を利用してみました。というのも、今年の夏は特に暑かった(この日もまだ暑かった)ので、水風呂が気持ちいいのではないかと思い、それならと思ってサウナも使ってみました。好き好きではありますが、夏には水風呂でさっぱりするのもいいものだと再発見したところです。