私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。
34箇所目は、島根県隠岐の島町の「隠岐温泉GOKA」です。訪問日は、2011年6月22日です。
隠岐温泉GOKAは、隠岐の島町にある唯一の温泉施設です。隠岐の島町の玄関口である西郷港から車で20分ほどの場所にあります。クアハウス風の水着着用エリアと一般浴場のエリアから構成されている点が特徴です。私は水着着用の施設はあまり入らないので、一般浴場での入浴だけにしようかとも思いましたが、せっかく隠岐まで来たということもあり、両方利用(料金は同じ)してみました。
この温泉の泉質は、ナトリウム-炭酸水素塩泉です。薄く黄色がかった色合いで、口に含むと少し塩からく感じます。成分総計8.94g/kgと比較的濃い泉質である一方、源泉温度は27.6℃と低めです。
ナトリウム-炭酸水素塩泉は、「重曹泉」とも呼ばれ、典型的な美肌の湯として知られています。炭酸水素ナトリウムが肌の古い角質や汚れを落とす石鹸のような効果があり、肌がすべすべになります。この温泉は炭酸水素イオンの含有量も高く、入浴すると直ぐに肌に変化を感じることができます。アルカリ度の高い温泉に入った時と同じような入浴感があります。また、泉質の適応症としては、切り傷、火傷、慢性皮膚病などに効果があるとされています。
前述のとおり、施設は、水着着用のエリアと一般浴場のエリアに分かれています。
水着着用のエリアは男女混浴ということになりますが、私が訪れた時は平日の昼間ということもあったのか、たまたま利用者がいませんでした。打たせ湯、泡風呂、圧水風呂(ジェットバス)、寝湯、などのいくつかのスタイルの風呂があります。注意しなければならないのは、温泉水を使っているのは“寝湯”のみで、後の風呂は水道水を使っている点です。温泉水の湧出量との関係もあるかもしれませんが、“温泉の効能”という観点からは利用する順番も考慮した方がいいかもしれません。
一般浴場のエリアは、水着は着用せずに入るように但し書きがあります。やや大きめの四角形の浴槽と洗い場から構成させるシンプルな造りです。浴槽はやや深めでしっかり肩まで浸かることができます。また、床がやや滑りやすいので気を付ける必要があります。そういうこともあってか、浴槽の3方は壁なのですが、そこに手すりが付いて周囲を囲うようになっていました。また、洗い場は浴室の壁際に沿うように6箇所配置され、ボディシャンプーとせっけんが置いてあり、シャンプー類はありませんでした。
洗面台は4箇所で、ドライヤーが2つおいてありました。脱衣場のロッカーは60個ほどありましたが、スチール製でかなり錆が目立ち、また鍵も壊れているものがかなりある等、この点は古さを感じさせます。
建物も特徴的で、1Fが受付や休息コーナーなどで2Fに風呂、という構成になっています。外観は3階建のように見えますが、2Fの浴室ゾーンの屋根が高くとってあるせいで、そのように見えるようです。周囲は広々とした農地で、その中に忽然と背の高い施設が現れる印象です。土地も十分ありそうなの場所なので平屋でもよかったんじゃないかというな気もしますが、建築的なこだわりを持って作られたのかもしれません。浴室が2Fにあることで、水着着用エリアからは周囲がよく見渡すことが出来、開放感があります。その一方、一般浴場からは外が見えない造りになっており、残念なところです。
入浴料は、大人500円。水着着用のエリアと一般浴場のエリア両方を使える値段であること、さらに特徴的な泉質ということを勘案すればお得感ある設定ではないでしょうか。隠岐の島町内には他に施設がありませんので、競合するということもありません。また、営業時間が14時から20時までとなっています。最初からこの設定かどうかは分かりませんが、午前中は営業しないという運営もランニングコストを考慮した一つのアイデアかもしれません。
ところで、この度訪問した際、受付の方が、みるからに一見(スーツに手ぶらで来館)で受付した私に、親切丁寧に施設の特長を教えて下さり、また、浴室内にはシャンプーがないので、お客さんの忘れもので良ければ使って下さいと申し出てもらったりして、大変好印象でした。
なにぶん離島の温泉施設ですので、訪れようと思って訪れるには中々大変です。島外の方が車で訪れる(フェリーにクルマを乗せて来島)ということも大変ですし、路線バスもあるようですが、乗り換えが必要だったり、時間的な制約があります。西郷港からタクシー利用だと片道5000円はかかるそうです。私は仕事で使ったレンタカーで立ち寄りましたが、島外のからの来訪者が気軽に訪れるにはちょっと大変です。ただ、館内の張り紙には無料送迎バスがあると書いてありましたので、時間が合えば利用するのもよさそうです。
もっとも、基本的に旅行客などをターゲットにした施設ではないでしょうから、交通の便はどうこう言うことではないと思います。隠岐の島町訪問の機会に、温泉好きの方が話のネタに立ち寄ってみればよいのではないでしょうか。