私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。
温泉巡りも10箇所目となりました。第1回目に続き、島根県大田市温泉津町の「温泉津温泉」にきました。訪問日は、2010年1月10日です。
温泉津温泉にある、2つの泉源のうち、第1回目では「元湯」に入りましたが、今回は、もう一つの「薬師湯」に入りました。街並みの中でひときわ目を引く建物です。明治5年の地震により新たに湧出した温泉で、“震湯”とも呼ばれるそうです。
すぐ近くにある“元湯”同様、ボーリング掘削により湧出した温泉ではなく、約46℃の温泉水が自然に出来た割目を伝って地下深くから地上まで到達して湧き出ているという、貴重な温泉です。泉質は、ナトリウム・カルシウム-塩化物泉ですが、成分総量が高い“濃い”温泉です。
湯船はやや小さめで大人が8人ぐらいで目一杯という感じです。底が深く、大人でも湯船の底にお尻を付けて浸かることはできません。中腰でつかるような感じです。体中でしっかりと温泉に浸かるための配慮なのでしょうか。湯が注がれているところからは、毎分20~30㍑程度のお湯が、少しずつ湯船に注がれています。これが源泉から直接湧き出た温泉水のようです。泉温は約46℃という表示ですが、確かに結構熱いです。
湯船には、茶褐色の堆積物(いわゆる湯の花)が大量に付着しており、長年の蓄積を物語っています。注がれている源泉は無色透明のようですが、湯船ではやや濁ってみえます。なお、すぐ近くにある元湯に入浴した際には、「よく見ると茶褐色の堆積物のカスなども浮いている」ということを書きましたが、薬師湯はそこまでではありません。これは、源泉から注がれる水量が多いためお湯が入れ替わる時間も早いためだと思われます。
洗い場は湯船を囲むように5箇所あります。なお、シャワーは3箇所のみで、隣り合った洗い場で共用で使うような感じです。ちなみに、元湯にはシャワーはありませんので、温泉津温泉に初めて訪れた方は、薬師湯から入ってみるのがいいかもしれません。
薬師湯の建物は大正8年の建築だそうで、湯野津の温泉街の中でもひときわ目を惹く、趣のある建物となっています。大きく2つの建物がつながった形で、風呂のある隣の建物には、ギャラリーやカフェがあり、温泉だけでなく様々な楽しみ方ができます。
ところで、薬師湯には、日本温泉協会の審査により『全項目「オール5」の天然温泉として認定』ということがいたるところに書いてあります。全国でも12箇所、島根県内では薬師湯だけだそうです。
日本温泉協会は、”日本で唯一の温泉界統合団体”(同協会ホームページ)です。同協会では、旅館、ホテル、公衆浴場など一般の方が利用する温泉が、「天然温泉」であることを一定の様式で表示する「天然温泉表示制度」を運用しており、その中に、温泉の“自然度・適正度の目安を5段階で表示”するもののようです。計6項目(源泉、泉質、引湯、給排湯方式、加水、新湯注入率)について、5段階評価を与えています。
平たく言えば、自然なものであるのか(極端に言えば、温泉では無いのに温泉を名乗っていないか、効能が無いのにあるように謳っていないか等)、使用方法が妥当か(遠くから持ってきているのではないか、水がたくさん加えられているのではないか等)を評価するもののようです。泉質そのものの優劣を判断しているものではないので、そこはきちんと理解することが必要と思います。
また、薬師湯では、PDP(プラチナダイヤモンドフォトン)と呼ばれる健康法を推奨されているようです。温泉とセットで入ると健康増進効果を高めるそうで、薬師湯の2階には、PDPという新素材をつかったドーム装置(カプセルみたいなもの)が設置してあります。薬師湯さんのホームページをみてみましたが、PDPがどうすごいのか、詳細はよくわからなかったのですが、単なる温泉入浴にとどまらず、健康や癒しということに関して、様々な取り組みをされているのが薬師湯のスタイルということなのでしょう。
多様な成分を含んだ高濃度の泉質、また地下から直接湧き出ているという貴重性を持ち、かつ、単に温泉に入るだけでなく、健康や美容など多様な活用も提案している貴重な温泉だと思います。