人財塾

平成24年度「人財塾」(第1回) 社員のモチベーション向上~人間としての喜びを原点とした企業の存在価値~

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島根県が主催する平成24年度「人財塾」に参加しています。

昨年度から参加させて頂いていますが、この塾は2年まで連続参加できるとのことで、今年度も申込させて頂きました。第1回目が2012年6月7に開催され、法政大学大学院 坂本光司教授の講演に続き、株式会社日本レーザー 近藤宣之代表取締役社長の講演を聴かせて頂きました。演台は「社員のモチベーション向上による企業再建」と題し、経営危機からの企業再建、そしてテーマである社員のモチベーションについて話がありました。同社は、MEBOという手法で親会社から独立したことでも有名です。今回、社員のモチベーションのみならず、経営者自身のモチベーションということについても様々な示唆を頂きました。私の感じたことについて整理しておきます。

講演する㈱日本レーザー近藤社長

1.夢と志の経営、そして企業の存在価値

講演の前半、「人間としての喜び」についてお話がありました。人間の喜びとは、周りから必要とされる、周りのお役に立つ、周りから感謝される、周りから愛される、このうち最初の3つは、仕事をしないと得られない。だから、企業の存在価値は次の3つだ、と説明されます。

ア)人を雇用すること(働くことで得られる喜びの提供)
イ)働く仲間に自己成長と自己実現の機会を提供する
ウ)顧客・取引先すべての共存共栄を通じて社会のお役に立つ

このことを前提に、次のような「モチベーションの維持・高揚の要素」を示されました。

1)常に黒字を出す(赤字は雇用不安を生みモチベーションを下げる)
2)雇用安定・人事・待遇面等ハードの要因(頑張ったら報われる仕組み、等)
3)連帯感・一体感を高めるソフト面の要因(イベント、懇親の場、等)
4)社長・上司の笑顔が作る明るい空気

“人間としての喜び”については、何回か同様の話を聴いたことがあります。しかし、今回、それが会社の経営理念・経営方針・経営計画などに、どう活かされ、反映されているのか、を今一度よく考える必要があると認識しました。というのも、モチベーション向上の4要素のうち、2)と3)は様々な企業の取組み施策を学ぶことで真似て実践することもできるし、当社でも様々な取り組みを進めています。しかし、その前提が、ア)~ウ)に示される“企業の存在価値”を高めるために行われているのか、もっと遡れば、人間としての喜びにつなげるために行われているのか、当社においては、そこが不十分ではないかという気がしたのです。

確かに、いい会社の取組みを真似するのが近道。それである程度は成果もでる。しかし、その先を見据えるならば、人間としての喜び、そして企業の存在価値、この根っこから伝わる施策であることを経営者が理解し、また社員が感じられたとき、本当のモチベーションの向上につながるのではないかと感じます。当社の経営指針について、今一度自問自答したいと考えています。

2.企業の存続条件と社長がやらねばならないこと

講演の中で、企業として存続できる3つの条件についてお話がありました。

1)お客さまを継続して創造できること
2)お客様と取引先を自社の応援団にできること
3)継続して人財の確保と育成ができること

このうち2)について、“自社の応援団”として、いまどきの言葉でいう「サポーター」をつくりだしていくことが重要だと指摘されました。いわゆる「BtoC」ではなく、「BtoS(supporter)」。このことは、前述の企業の存在価値「顧客・取引先すべての共存共栄を通じて社会のお役に立つ」にも通じる条件だと言えます。

そのために社長がやらなければならないことも3つ示されました。

ア)社員が頑張れば利益をあげられるビジネスモデルの構築
イ)社員のモチベーションが上がるような仕組みの構築
ウ)率先して人財を育成できること

そして、常に利益を出す強い会社の条件として掲げられたのは、「社員の成長が企業の成長」という理念の徹底、そして“ワクワクする会社”、ワクワクする社風が出来ていること。

この条件、読み直して改めて感じるのは、お客さまや取引先も含めた“人”とのつながりをどうしていくのか、社長の仕事はまさに“人(社員)”に関わる事そのもの、ということです。こういった結論に至るのは、やはり人間としての喜びからつながる企業の存在価値、ここに経営の軸足を置いているからで、至極当然な結論なのでしょう。そしてそのことが企業に好業績をもたらすことを証明されている。経営者としての自分自身の仕事が、この条件に照らし合わせてみてどうなのか、真摯に見つめ直したいと考えています。

3.異質な人財によるダイバーシティ

「ダイバーシティ」、“多様性”という意味合いですが、最近では人財の多様性を意味して使われることも多いそうです。日本レーザーの特徴の一つとして、「異質な人材の採用」ということがあります。性別、学歴、年齢、国籍等にこだわらない異質な人材の登用。具体的には、新卒入社5%、転職者85%、女性社員30%、その1/3が管理職、定年再雇用社員10%(70歳まで雇用)、勤続10年以上の中国籍社員2名、など、まさに多様性にあふれています。

近藤社長は、企業再建の中では人を選べる状況ではなかった、そういう多様性ある人財しか採用できなかった、ともおっしゃいます。だから「人がいなければ居る人でやればいい」と指摘されます。そして、異質な人財だからお互いに刺激し合い、社内が活性化する。そして、「会社が変わるのは、会社が舞台を用意し、そこで踊った同僚を見て、社員が変わり、会社が変わる。社員を激励し、社員が変わることで会社が変わる。」とおっしゃいます。会社の中心は社員、社員あっての会社です。その社員の活躍の場をつくるのが経営者の仕事。そう肝に銘じさせて頂けるお話でした。

なお、昨年度の人財塾(第2回)でライブレボリューションという会社の話を聴く機会がありました。この会社は新卒採用に絞り、会社の価値観の共有化を徹底していることが特徴で、やはり好業績をあげています。人財に関するアプローチは全く異なりますが、共通しているのは大前提として「人を大切にする」こと、そして雇用や人事など人財に関する方針が明確であり、徹底していること。当社で、今後の採用や人財育成、教育を考えていく際に参考にしていかなければならないと感じます。こういった事例比較ができるのも、2年にわたってこの人財塾に参加させて頂いたメリットの一つでしょう。

塾生によるグループ討議結果の発表

近藤社長の講演を通じて繰り返しお話があった言葉、それは「外部環境のせいにするな」ということ。そして、「すべての問題は自分の中にある」と言うこと。あらゆることは自分へのメッセージ。だから、社長に逆らう社員こそ大事にする。言葉では理解できても自分自身が腹に落とすのは難しい事です。しかし、近藤社長は実際にそうやって来たからこそ、企業再生を果たし、新たなステージへと発展させている。それが経営にかかる真実の一つがあることは間違いありません。それを信じて、自分自身も心底、そう思って日々の経営にあたれるよう、精進していきたいと考えています。

最後に、近藤社長が自分自身のモチベーションを維持してきた言葉、「今、ここ、自分」。“今、やらなきゃいつやる?”、“ここで頑張らねばいつ頑張る?”、“自分がやらなき誰がやる?”この言葉を私自身も心に刻み、気持ちを新たに自社の経営に向って行きます。

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