2012年10月、当社としては初の試みである、「お客さまアンケート」を実施ました。当社は島根県、松江市など、地方公共団体発注の業務や工事を主な仕事としていますが、民間のお客さまからのお仕事や、公共発注の案件の一部を下請として民間企業から受託するケースがあります。この度、昨年度お仕事を頂いた民間のお客さま(60案件)を対象にアンケートを実施しました。
公共案件は入札で仕事の受注が決まりますので、基本的に値段勝負です。「少し高くてもサービスがいいからお宅で」という訳には中々いきません。これに対して、民間のお客さまの中には、当社の仕事の品質や技術力・サービスを評価して頂き、少し値段が高くてもお仕事を頂けることもあります。大変ありがたいことです。しかし、このようなお客さまが、実際のところ当社の仕事の品質やサービスに対してどのような評価をお持ちなのか、直接的に把握するという取組みをこれまで実施してきていませんでした。
今回、今更ながらではありますが、お仕事を頂いたお客さまにアンケートをお願いし、当社の評価を伺いました。アンケートにお答え頂いたお客様へのお礼も兼ねて、その取組みを通じて分かって来たこと、感じたことをまとめてみます。
1.お客様の声を聴くという基本の意味すること~異業種では当たり前のことだが~
冒頭で示したとおり、当社でこのようなアンケート調査を実施したのは、おそらく創業以来初めだと思います。数百円のランチを提供するレストランでもテーブルにお客様の声を聴くアンケート用紙が置いてあるのに、何十万、何百万円という仕事をさせて頂く当社のような業種で、このような取組みがなぜ無かったのか、改めて考えると不思議です。
もっとも、お客様の声が全く事業運営に反映されていない訳ではなく、営業担当者や現場の実務担当者を通じて、お客さまからのご意見やお礼、時にはクレームを伺うことがあります。しかし、そこで頂くご意見は、ある案件のある特定の部分に関する事がらであり、当社の成果や品質に対するトータルの評価ではありません。その一方、今回のようなアンケートであれば、こちらが聴きたいことを一とおり伺い、結果をまとめて現状を把握したり、改善に役立てたりすることが出来ます。そういった意味で、やはり必要な取り組みであることは間違いありません。ちなみに、公共案件には「業務評点」「工事評点」といった公式な評価がありますので、今回はアンケートの対象にはしませんでした。
このアンケートを実施しようと思い立ったヒントは、異業種の取組みの学びからです。島根経営品質研究会の取組みとして実施しているワールド・カフェ・シリーズでは、㈱ブロックスさんのDOIT!を題材に、元気のいい会社、業績のいい会社の取組みを学んでいます。今年度は、年間計8回開催予定です。私はほぼ毎回参加しているのですが、何回か参加してそこで紹介される企業の共通点の一つに、「お客様の声に耳を傾けていること」があります。世の中では当たり前のことが当社では実施されていないことに今更ながらに気づいた訳です。気づきのレベルが低すぎますが(笑)、それでも、“お客さまへのアンケート”という発想が今まで全く無かった当社でこの取組みを実践できたのは、当社にとってはいい学びとなりました。
2.予想以上に好評価を頂いていることへの感謝と今後~回収率の向上が課題~
今回のアンケート結果ですが、「予想以上に好評価を頂いていた」、というのが結果をみた感想です。そのことにまず感謝したいと思います。アンケートの回収率は、66.7%(40/60)となりました。今回伺った項目は、1現地説明・対応の妥当性、2見積り時間、3管理者の対応、4安全管理、5挨拶マナー、6工期順守、7現場清掃、8成果品の品質、9価格、10総合評価、11再度利用(次回も利用して頂けるか)、という10項目です。
総括すると、いずれの項目も、概ねよい評価を頂いており、特に、「再度利用(次回も利用して頂けるか)」については、5.思う、4.少し思う、の合計で9割に達しました。一方、相対的にみて弱い部分は、「2.見積り時間」と「9.価格」となりました。また、一部では、「2.やや不満」、「1.不満」との回答を頂きました。それぞれに理由がありますが、改めて内容を検証して今後の対応に活かします。また、全回答のうち、6割弱の案件について、“ご意見欄”へのコメントを頂きました。お礼や励ましに加え、当社の不足する点を直接ご指摘頂きました。この貴重なご意見を真摯に受け止め、今後の改善に活かしたいと考えています。
一方で、前述のとおりアンケートの回収は40/60、数にして20件のお客さまからはご回答を頂けませんでした。そういったお客様の評価は必ずしも高くないかもしれません。“いい印象を持って頂いているお客さま(ご担当者さま)だからこそアンケートに回答して頂けたのではないか?”、と考えれば、好評価の集計結果を単純に喜んでばかりもいられません。そう言った意味でも、今後の課題は回収率をもっと高めて、アンケート調査対象とした全てのお客さまからのご意見をしっかり頂けるようにしたいと考えています。
3.お客様の声の共有化を通じて仕事の改善・士気向上につなげる
今回、アンケート結果は集計して資料として整理するとともに、回答用紙(はがき)を社内の一角に掲示しました。ハガキそのものを掲示した訳は、特に「コメント欄」に記載して頂いた生の声(直筆の文章)を、ぜひ社内で共有したいと考えたからです。どの案件のどのご担当者さまから回答を頂いたのかもわかるように整理し、そのことで、自分が担当した案件がどのように評価で返答されたのか、分かるようにしました。担当者とすれば、思いどおりの評価の場合もあるでしょうし、思ったほど評価が高くなかった場合もあるでしょう。しかし、どのように評価されたのかが直接分かることこそ、一番の勉強になるのではないかと考えています。
飲食業など不特定多数のお客さまを対象にするアンケートでは回答者が誰であるのか特定されるケースは少ないと思いますが、当社の場合は、“この案件の、このご担当者様”と決め打ちで、アンケートを送付することになります。直接のご担当者からのご回答でなければ意味が無いからです。お付き合いの長い取引先においては、顔見知りである場合も多く、そういった意味では、率直な指摘はしにくかったかもしれません。それでも、いくつもの厳しいご意見、ご指摘を頂きました。そういったお客さまの声を頂き、皆で共有できるということ自体、当社にとって大きな財産となりました。今後の改善にぜひとも活かしていきたいと考えています。
実際に社内に掲示してみて感じるのは、お客さまが直接回答用紙(ハガキ)に書いて頂いた直筆の文字を見るとやはり嬉しいものだということです。良くも悪くも当社の事を考えて頂いているから、コメントを記載して頂ける。その回答用紙を見ることが私自身としても士気の向上につながるし、もっと喜んで頂けるようにしなければならないという想いにかられます。社内全員が、そう感じてもらえればと考えています。
このアンケートは、当然ながら単発ではなく、今後長く続けて行くことに意味があると考えています。そのために、質問項目は今後もあまり替えなくてもいいような項目を設定しました。同じ項目での質問を毎年繰り返してその傾向を見ることで、当社の仕事、サービスの特性や課題も見えてくるのではないかと期待しています。最後に、アンケートにご協力頂いたお客さまに改めてお礼を申し上げ、また、ご指摘頂いた様々なご意見を今後の事業運営に活かしていくことをお約束し、今回の報告とします。