私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。
19箇所目は、島根県松江市鹿島町の「鹿島 多久の湯」です。訪問日は、2010年5月12日です。
多久の湯は、松江市(旧鹿島町)が整備した温泉入浴施設で、デイサービスセンター等の福祉施設と同じ敷地に整備されています。泉質はナトリウム-塩化物・硫酸塩泉で、無色透明、無味無臭です。ph値は確認できませんでしたが、入浴した印象では、さほど高くはなさそうです。なお、この施設は“多久の湯”という施設名称を前面に出していますが、温泉名としては、「講武堀部温泉」というようです。
利用料金は、大人400円ですが、松江市内の居住者は300円で入浴できます。これは玉造温泉のゆーゆや八雲温泉の熊野館と同じようなシステムで、松江市の温泉入浴施設は、市民に対しては料金を揃えているようです。
浴室は天井が高く広々とした印象です。風呂の構成はシンプルで、ジェットバスや打たせ湯といった設備はありません。大浴槽の回りを洗い場が囲み、一角にサウナが備わっています。浴槽の枠がヒノキになっており、見た目のアクセントと柔らかい印象を醸し出しています。
露天風呂もあり、内湯と同じタイプの長方形のシンプルな浴槽でした。ここは男女入れ替わり制で、岩風呂風の露天風呂のあるようですが、当日の男湯露天風呂は内湯をそのまま外に出したようなスタイルの風呂で、これもまたいいと思います。変わっていたのは、浴槽の枠がヒノキなのですがですが、その一角が少し削られたようになっており、そこからお湯が越流しています。流れ出たお湯は、石張りの床を流れており、その部分は“寝湯”のように使われていました。入った時に実際に寝ている人がいました。しかし、寝湯といってもスペースがやや狭く、元々そのような設計ではなかったのではないかと思いますが、施設を運用しながら出てきたアイデアなのかもしれません。これ以外には、個室風呂があるようです。
洗い場は10箇所で仕切りの付いたタイプですが、一人あたりのスペースはやや狭めです。ボディソープとリンスインシャンプーがあります。たまたまかもしれませんが、シャワーの水圧が低めで弱く感じました。節水で圧を下げているのかもしれません。
脱衣場のロッカー(鍵付き)は40個程度あります。通常のタイプと、上着等が掛けられる縦長のタイプと両方ありました。また、貴重品用のロッカーもたくさんあり、加えて脱衣籠のみというスペースもあって、この併用で使っている人もいました。車で乗り付ける地元の常連さんは、脱衣籠のみで十分かもしれません。
洗面台は4箇所、なぜかドライヤーは5つありました。さらに、仮設的に鏡と椅子、ドライヤーを置いたスペースが隅に一か所ありました。私も最初の印象で、施設規模の割には洗面台の数が少ないかなと思いましたので、途中で追加されたのでしょう。
島根県内にある公共の温泉施設はどこも同じような傾向がありますが、ここも地域住民を主対象とした施設です。浴場だけでなく、お食事処、休憩室、会議室、土産物屋なども備わっており、多目的な利用が可能な複合施設となっています。特に会議スペースが広くあるようで、訪れた日も会議室利用の団体の予約が入っていました。また、座敷の休憩室に加え、“ラウンジ”という名称の休憩コーナーも併設されていました。
施設の印象としては、地域福祉の色合いが強く、観光的要素は薄い印象ですが、入口では鹿島町にある恵曇港(えとも港)特産の干物が販売されていました。地元の方が買うのかどうかは分かりませんが、会議室利用で訪れた利用者の方などが買い求めていくのかもしれません。
その他としては、敷地の一角には温泉スタンドがあり、100円で200㍑のお湯が汲めるようになっていました。ちなみに、八雲温泉にも温泉スタンドがありますが、なぜか専用コインが必要でした。やはり現金を入れて買える方が便利だなと思います。
訪れた当日は、平日の丁度昼時でしたが、浴室内はかなり人が多く、10ある洗い場がほとんど埋まっているような状況でした。予想以上の利用者で(失礼ながら)意外でした。松江市内には同様の温泉施設がいくつかありますが、島根半島側には少ないので、人気があるのかもしれません。