私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。
29箇所目は、11箇所目で取り上げた、島根県川本町の「ゆだに温泉」です。
2010年温泉めぐり総括にて取り上げたところ、若干の反響(ありがたいことです)を頂きました。新年の挨拶回りの途中で機会があったので、もう一度行ってきました。訪問日は、2011年1月13日です。ここは、協和地建コンサルタントが、平成7年度に調査、平成8年度に掘削工事をさせて頂いた温泉です。自噴泉で、毎分500㍑の湧出量があります。
ゆだに温泉の泉質名称は「含二酸化炭素・鉄-ナトリウム-塩化物強塩冷鉱泉」と特殊で、成分の濃さは島根県内随一だと思います。炭酸ガスの含有量が多いことで知られていますが、塩素イオンの含有量が桁違いに多い“強塩泉”であるのも特徴です。
塩素イオンが豊富な温泉は体を温める効果が高く、この温泉に入ると入浴後かなりの長時間、体が温まり続けます。また、切り傷、火傷といった皮膚のトラブルにも有効性が高いと考えられます。その一方、“湯あたり”には注意する必要があります。人によりますが、長時間入りすぎない配慮もいると思います。濃ゆ過ぎるので加水して薄めてあるようですが、それでも口に含むとかなりの塩味がします。なお、鉄泉でもあるのですがお湯は無色透明(通常は酸化して茶色くなる)で、鉄分については濾過してあるそうです。
今回、最初に訪れたときは男湯と女湯が入れ替わっており、違うタイプの浴場に入ることができました。今回の方は、比較的大きな、広々とした浴槽が中心で、その一部がジェットバスのようになっています。もう一方の浴場には、炭酸泉をより効果的に活用するための低温湯があったのですが、こちらにはありませんでした。その一方、こちらには打たせ湯があり、違った風呂の楽しみ方ができるようになっています。その他には水風呂があり、サウナも併設されています。
洗い場は6箇所(もう一つの浴場は5箇所)、仕切りがしっかりついたタイプで隣の人を気にせず使用することができます。ボディーシャンプー、リンスインシャンプーが備え付けてありました。脱衣場の洗面台は3箇所、いずれもドライヤーが備え付けてあります。ロッカーは鍵付きですが、一部鍵無し(壊れた模様)のもありました。浴室入口脇には水飲み用のボトルが置いてあり、入浴前後に給水することができるので、大変良いと思います。
さらに、今回、お願いして家族風呂を見せてもらいました。家族、グループ、カップルなど、限られたメンバーでゆっくりと温泉を楽しむことができる家族風呂は、温泉の利用方法の一つとして定着した感もあります。こちらの家族風呂は、まず専用の和室があり、そこからの続きで家族風呂を利用するようになっています。施設内の食堂から個室に食事を運んでもらうこともできるようです。風呂は、木造の別棟になっており檜風呂でした。一般の浴場とは異なり、木材の柔らかさを前面に出した和風の造りとなっています。
なお、一般浴槽では鉄分を濾過して使用している(濾過しないと参加して湯が茶色く濁る)そうですが、この家族風呂は濾過無しの源泉そのままで使うそうです。そのため、浴槽に湯を貼ると茶色く濁るものと思われ、一般の浴槽とは異なった入浴感を味わえるようになっているというお話でした。
使用料は、部屋代が500円、家族風呂は1人あたり1000円とのこと。2人で使えば、2500円ということになります。利用時間は概ね1時間で、基本的に予約制だそうです。
ところで、前回、およそ1年前に訪れたときはドコモの携帯が圏外でしたが、今回は普通に使うことができました。通信関係のインフラも少しずつ改善されていることを実感しました。道路については一部で改良工事がされていましたが、離合できない部分がまだ多く、もう少しよくなると訪れやすくて良いと思います。
ゆだに温泉の泉質の特殊性は群を抜いています。こういった温泉が身近にあり、度々利用できる環境は大変素晴らしいことです。今後とも、様々な形でこの温泉が有効に活用されることを願っています。