まちエネ大学

まちエネ大学山陰スクール(第2回、第3回)~長くても3年先までに事業化する~

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2013年12月13日、2014年1月30日、まちエネ大学山陰スクールの第2回、第3回講座が開催されました。この「まちエネ大学」は、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」といいます。)の普及促進施策の一環として経済産業省資源エネルギー庁が実施するもので、持続可能なまちづくりの推進に向けて、再生可能エネルギーの活用による、地域での新しいビジネス創出のための人材育成事業です。全国5箇所で計4回の講座が開催され、この山陰エリア(松江)も会場の一つに選ばれています。2013年11月に第1回講座が開催され、その後第2回、第3回と続いてきましたので、引き続きその概要をまとめておきます。

水上弁護士を囲んでミーティング(第3回)

1.市民がやるにしても一定の規模感があった方がインパクトがある

第2回講座では、全国各地で再エネ事業のプロデュースに多く関わっている、サステナブルコミュニティー・プロデューサーの大和田順子さんを講師にお迎えし、各地の成功事例を参考に、再エネ事業を展開していく上でのポイントを説明して頂きました。

第一に掲げられたのは、「市民リーダーの存在」ということです。やはり、成功している事例には素晴らしいリーダーがいらっしゃる、ということです。これは、事業であっても、まちづくりであっても、外せないポイントの一つでしょう。そして、詳しく紹介頂いた「いわきコミュニティ電力」の事例では、3人のリーダーがいて、それぞれ役割分担をされている、という話もありました。一人ですべて抱え込むのではなく、役割分担し、協力しながら前に進めていく。これもとても大事なことだと感じます。

そして、今回の講演で一番印象に残った言葉は、「市民がやるにしても一定の規模感があった方がインパクトがある。社会への訴求もある。」というものです。確かに、市民が実施する再エネ事業の規模感は、いわゆる“メガソーラー”等のような1万kWクラスの発電規模ではなく、数十kW程度であることが多いと思います。資金的にも事業運営的にも一つ一つの発電規模は小さい。しかし、それをまとめることで1,000kWを確保する。50kWも20箇所あれば1,000kWになる、という考え方です。私自身、これまでは、「地域の事業だから小規模でも致し方ない、やることに意義がある」という考え方をしていましたが、社会への訴求を考えて行く際には、やはり発電規模に着目していくことも重要で、1箇所だけで実現しようと考えなくてもいい、という発想の転換に気づく機会となりました。

もう一点、事業者(企業)の立場で参画している私のような者にとってのキーワードとして、「CSV(クリエイト・シェアード・バリュー)」という考え方を紹介して頂きました。“一緒に新しい価値をつくって共有する”という考え方です。すなわち、企業の本業にとってもいい影響を与える新しい価値をつくる。具体例としては、全国ホテルチェーンのスーパーホテルが取り組むメガソーラーでは、売電収入の一部を使って地元の農産物を購入する、という取り組みを実施されています。年間2,000万円が地元に落ちるそうです。スーパーホテル側も、売電収入を地域に還元していることで企業イメージ、そして業績への向上につながることが期待されます。そういう観点から、当社のたずさわる再エネ事業の価値はなにかを考えなくてはならない。漠然と、再エネが立ちあがることによるインパクトが価値になると考えていましたが、“お金が地域に落ちる”といった目に見える波及効果についても、何か見出していけるよう、引き続き考えて行きたいと思います。

2.長くても3年先までに事業化する~代替プランも準備しながら進める~

まちエネ大学山陰スクール第3回の講師は、各地の再エネ事業について法務面からアドバイスすることを目的とし、NPO法人再エネ事業を支援する法律事務所の会」の代表を務める水上貴央弁護士を講師にお迎えしました。

第3回の受講に先立ち実施された事前学習は大変参考になりました。事業が具体化してくる際に必ずつきまとう法務面のリスク。例えば、事業用地の賃貸借については、長期間にわたって実施する事業だからこそ、その権利関係を最初にしっかりしておく必要があります。また、事業途中に起こりうる様々な訴訟リスクにどう備えるか。太陽光発電については先行しているだけに、事業にまつわるトラブルも事例が多くなっているということです。

また、山陰スクール内にできたグループに対して、3つの宿題というものが出されました。「どのような事業をやりたいのか?何を目指すのか?」「事業の中で自分が果たす役割は?」「計画している事業を自分たちが担う必然性は?」という3つの質問に明確に答えられるようにしておく、というものです。漠然と再生可能エネルギーを使って何かできないか、というところからスタートしている各グループが、一つ先のステップに進むため必要な設問と言えます。まちエネ大学は、再エネを活用した事業を具体化していくことが目的ですが、この質問は、再エネに限らず、広く事業一般に当てはまります。再エネを活用した事業であっても事業は事業。多くの場合は、会社をつくって再エネを通じた収入で会社を運営していくことになります。その時、事業の目的やその事業の存在価値を考えた上で具体的な検討に移るのはごく自然な流れと言えます。

もう一点は、「長くても3年先までに事業化する」というアドバイスです。いつかやろう、そのうちできたらいい、では駄目ということです。「いつか、いつかと思うなら今」という訳です。長期的に考えざるを得ない案件でも、それと並行して今できることが何かないのか、それを考え、実行に移しておくことが大事だと言う指摘を頂きました。確かに、長期的なスパンで考えていた事業を結果的に断念せざるを得ない場合、それ一本に絞っていれば、それを断念した時点で全てが消失してしまいます。事業プランの代替性を確保しておくという視点、事業の継続性という観点では重要な視点です。

今回、再エネ事業を念頭に置いて助言を頂きましたが、事業一般に共通する気づきを頂きました。自社で進めている新たな取り組みにおいても、これらの観点を踏まえながら、進めて行きたいと考えています。

3.役割分担による具体的事業計画の深掘り~各地の同志とつながりあう~

まちエネ大学山陰スクールでは、第2回講義で7つのグループが誕生し、第3回も引き続きグループで具体化に向けた協議を深めました。

私は、「有福温泉地熱発電+カスケード利用支援プロジェクト」というグループを立ち上げ、そのリーダーを務めることとなりました。このプロジェクトは、島根県江津市の有福温泉で地熱発電を行い、発電後の温水を地域内で有効活用することで地域の活性化を図ろうというものです。発電は、現在の泉源に影響を与えない場所で新しく温泉井を掘削した上で実施するという計画です。とても大胆な計画ですが、有福温泉の地下深部にかなりの熱源が存在することはこれまでの調査で明らかになりつつあり、後はそれをどう具体化していくか、検討を進めているところです。このプロジェクトは、まちエネ大学が有る無しに関わらず、有福温泉のみなさんと一緒に進めている案件です。

まちエネ大学でプロジェクトとして提案したのは、まちエネ大学に参加して頂いているみなさんにこういったプロジェクトがあることを知って頂き、再エネ事業にかかわる専門家のみなさんからこの事業に関する助言やアドバイスを頂きたいと考えたからです。グループに参加して頂いたメンバーのみなさんからは、地域での合意形成や理解促進の場に、他地域で再エネ事業を実施しているメンバーが加わることで、より客観的で分かりやすいメリットの説明ができるのではないか、などのご意見を頂いています。有福温泉で実施しようとしている事業ですが、地域単独で進めるのではなく、再エネをつかって地域を良くしていこうとしている各地のメンバー、いわば同志と一緒に事業を進める。そういったアイデアは、私たちだけでは思いつきません。そういった広がりを得られるのも、こういった場に出て、自分達のやりたいことをアピールできたからこそだと思います。

まちエネ大学は、全国5箇所で開催されていますが、山陰地域が開催地の一つに選ばれたのも、一つのご縁だし、非常に貴重な機会を頂いたと思います。事実、山陰スクールには、広島や兵庫など、山陰エリア以外からの参加者もいらっしゃいます。その機会をしっかりと活かし、有福温泉におけるプロジェクトを少しでも前進させることが出来るよう、引き続き取り組んで行きたいと考えています。

各グループが熱心に議論(第3回)

まちエネ大学山陰スクール、次回はもう最終回です。各チームによる事業計画のプレゼンテーションが実施されます。単に発表するだけでなく、審査員の方がいらっしゃって、その内容が評価されるとのこと。また、まちエネ大学は、各地域の金融機関が協賛されているので、評価の高い案件については実際の事業化に向けた助言やアドバイスなども頂けるようです。私のグループもいい成果を発表できるよう、頑張っていきたいと思います。

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