2013
06.28

2013年6月27日、島根経営品質研究会 特別講演会が開催されました。

今回のタイトルは、『第3回「日本でいちばん大切にした会社大賞」審査委員会特別賞 受賞記念講演会』と銘打っています。島根経営品質研究会の代表幹事でもある田中正彦さんが代表取締役を務める「株式会社さんびる」さんが、この栄誉ある賞を受賞されました。島根経営品質研究会としてもそのことを広く周知し、共有したいと考え、企画したものです。基調講演には、同賞の審査委員長である、法政大学大学院の坂本光司教授を迎え、「驚嘆する中小企業!」と題して講演を頂きました。

坂本先生からは、「日本でいちばん大切にした会社大賞」の創設趣旨と、我が国に残すべき驚嘆すべき中小企業について、また、田中社長からは、㈱さんびるの経営、取り組みについて報告を頂きました。今回の気づきの一部を整理しておきます。

講演する坂本光司先生

1.企業の目的は人を幸せにすること~大賞創設の目的と目指すところ~

講演会の冒頭、坂本先生は、今回の講演のきっかけとなった「日本でいちばん大切にした会社大賞」の目的について話をされました。創設の目的を「お金優先、効率優先、成長優先ではない、人を大切にする会社、少しずつであっても着実に成長していく会社、正しいことをしている会社を表彰し、世に知らしめることが私の使命だからだ。」と説明されます。

坂本先生がいつも断言されるのは、「企業の目的は人を幸せにすること」。そして、正しい経営とは、「人を大切にする経営」。技術もお金も人を幸せにするための道具であり、手段である。真に人を大切にしている会社は業績も伸びている。それは、7000社以上の会社を実際に訪問して取材した中で見出した真実だと。毎回伺う話ではありますが、とても説得力があり、迫力があります。(なお、ここで言う「人」とは、1)従業員とその家族、2)外注先・仕入先、3)顧客、4)地域社会、5)株主の5者を指します。)

そして、この賞は「応募資格」に高いハードルを設定していることが特徴だと説明されます。具体的には、過去5年以上にわたって、人員整理、会社都合による解雇をしていないこと、下請・仕入先企業へのコストダウンを強制していないこと、障害者雇用率は法定雇用率以上であること、黒字経営(経常利益)であること、重大な労働災害がないこと、となります。この要件であれば、日本を代表する大企業は応募も出来ません。当社はもちろん応募できませんが、今回受賞された「さんびる」さんが、この要件を満たしているという時点で驚きを隠せません。

どんな状況でも、リストラやコストダウンの強要を行わず、社員の幸せと生活を守る会社。それは素晴らしい会社である一方、想像もつかないような大変な努力が必要でしょう。しかし、現にそういった会社が多数、我が国には存在している。坂本先生は、そのことを「誇らしい、日本も捨てたもんじゃない」とおっしゃいます。まさにそのとおり。そんな会社で働く社員は間違いなくいきいきとしているでしょうし、自分自身の会社を誇りに思っていることでしょう。現在の当社にとっては全く届かない高いハードルですが、だからこそ、その高みを目指す価値もある。少なくとも10年は必要かと思いますが、10年後、その高みに到達することを目指し、また明日から頑張っていきたいと考えています。

2.我々ができないことをしている会社を支援するのは我々の使命

坂本先生は、今回の講演の中で、障害者雇用とその事例についてかなり時間を割いて話をされました。後半はほとんどその話だったので、初めて坂本先生の講演を聴かれた方にとっては、少し違和感があったかもしれません。しかし、坂本先生の伝えたかったことは、講演の最後の言葉に凝縮されていると感じます。「我々の出来ない正しいことをしている会社があれば、それを支援するのが我々の使命。卑怯なのは傍観者であること。」

先生の言われる、“正しいこと”とは、前述のとおり「人を大切にする」ことであり、働く場を求めている障害者に雇用の場を提供することも正しいことです。その正しいことをしている企業が認められなければならないし、そういった企業を発見し、世に知らしめ、共感を得て、そういった正しい企業が継続することで、この世の中が、日本がいい方向に変わっていくと考えていらっしゃるからでしょう。だから、研究者である先生は、自分自身の役目である、“正しい企業を世に知らしめること”に全力を尽くされる。

我々経営者は、常に気持を律していないと、いつの間にか、正しいことと、そうでないこととが分からなくなってしまうように思います。正しいことと分かっていても、利己的な自分が顕在化し、出来ない理由を考えてそれを実行しないように納得させてしまう。先行きが不透明だから、財務体質が悪い、人財がいない、等などいい訳となりうる経営の不安要素を挙げればきりがありません。だから、理念が要るのでしょう。人を大切にする経営、地域にと共に歩む経営、その理念を掲げてその実践を約束し、逃げることのできない環境をつくって実践していく。だが、それでも中々できない訳です。

しかし、こうやって坂本先生のような方が、「正しい経営」を実践して成果を上げている会社にスポットを当て、我々の前に示してくれる。その姿を見せつけられる我々は、いい訳ができず言葉を失う。そこで、一部の経営者は自分自身を反省し、進むべき方向に気づき舵を切る。そういうことの繰り返しが、この日本を、自分達の地域を良くしていくことにつながるのでしょう。先生の言われる傍観者とは、「人を大切にすることで素晴らしい経営を実現している企業が実際に存在する」という現実から目をそらすこと。我々中小企業経営者に求められるのは、傍観者とならず、人を大切にする経営に舵を切る実践者となること。そのことを強烈なメッセージとして届けて頂いたのだと理解しています。

3.「社名を名乗れない会社」からの脱却~自分の子供を働かせたい会社へ~

講演会の後半では、田中社長からさんびるの取り組みについて紹介頂きました。

さんびるが大きく変わる転機となった出来事として、「社員が会社の名前を名乗れなかった」という事件があるそうです。それは、ある病院で清掃業務に従事していたさんびるの社員が、自分の子供を預けた保育園に対し、勤務先をその病院(本当はさんびる)であると申告していた、という事件です。経営者としては、とてもショックな話です。自分の会社を自信を持って名乗れない社員がいる。もちろん全員では無いにしても、そういう社員がお客様に対して、いいサービス、いい成果を提供できるはずがありません。それは、その人のためにもならないし、もちろん会社の為にもならない。だから会社を変えようと決意された訳です。

そして、さんびるが目指すべき会社の姿として「自分の子供を働かせたい会社」という目標像を掲げられます。もちろん、子供の人生は子供のものであり、どんな人生を歩むかは子供が決めるべきものでしょう。それでも、子供の幸せを願う親として、「この会社で働ければとても幸せだ」と思える会社をつくるという姿勢は、素晴らしい考え方です。今、自分の会社で自分の子供を働かせたいと考えている人が、この日本にどれだけいるでしょうか。当社には居るのだろうか。そう自問自答するとき、このさんびるの目指す“高み”を尊敬の念で見ずにはいられません。

そして、さんびるという会社に流れる大きな考え方の一つに「社員どおしお客様」ということがあります。社員お互いが、お客様に対応するときのように誠意持って真摯に接する。働く仲間がお互いに尊敬し、認め合う。感謝の気持ちを持ちあう組織。お題目として掲げるだけでなく、それを実現するための様々な仕組みを導入していく。それを当たり前のこととしていくための努力に敬服します。

さんびるの取り組みについては、経営品質研究会の仲間としてこれまでも色々と伺う機会がありましたが、注目すべきは、今でこそ元気で特色ある企業として取り上げられるこの会社も、最初からこのような状態ではなかったということです。「やるべきことを皆で追いかける」という姿勢を徹底していったことが、現在の姿を形作ったということを改めて感じさせて頂きました。その期間は10年以上。会社を良くしていくための取り組みは、あせらず、しかし、あきらめず、愚直に続けていくことが肝であると改めて理解したところです。

受賞報告する田中正彦社長

今回の特別講演会、150名近い参加者を得て、盛大に開催することができました。「日本でいちばん大切にしたい会社」シリーズの大ヒットにより、日本全国から注目される坂本先生ですが、初めて話を聴かれた方も多かったと思います。坂本先生の講演も、さんびるの田中社長の報告も限られた時間であり、意を尽くせなかった部分もあろうかと思います。このブログが、講演会の理解の一助になれば幸いです。最後になりますが、改めて、坂本先生にお礼を、そして田中社長にお祝いを申し上げます。

2013
06.21

2013年6月18日(火)、島根県中小企業家同友会 出雲支部総会記念講演が開催されました。この日は、『一生懸命だけで社員がついてくるかい!とことん本氣でやらなアカン!!~経営者の覚悟と徹底実践が会社を変える~』と題して、株式会社山田製作所 代表取締役 山田茂さんから報告を頂きました。同社は、徹底した3Sの実践で知られ、工場には年間200社以上が見学に訪れるということです。山田さんは大阪府中業企業家同友会の副代表理事も務められるなど、同友会活動にも精力的に取り組まれています。今回、元々は営業目的で始めた3Sが企業風土の変革にまで昇華した経緯、その途中での経営者としての様々な苦難と葛藤、それを乗り越えた先にあるもの、等多岐にわたるお話を頂きました。山田製作所の経営の神髄を理解するには私では役不足でしたが、私なりの気づきを整理しておきます。

講演される㈱山田製作所 山田社長

1.経営者の経営姿勢とは?~経営者の言葉にウソがあってはならない~

今回の講演の中で考えさせられたことの一つに、「労使の信頼関係」があります。信頼関係とは何なのか。私と社員との間に信頼関係はあるのか。大いに考えさせられるお話を頂きました。経営者の「経営姿勢」が信頼関係を結ぶためのベースにあることは間違いありません。では、経営姿勢とは何なのか。同友会的には、明文化された経営理念をはじめとした「経営指針」がそれにあたるのでしょう。しかし、当然ながらそれだけでは足りません。経営指針で示したことが実際に実践されていなければならない。社長が自分で決めたことを自分でしていなければ、社員が信頼するはずもありません。山田さんは「経営者の言葉に嘘があってはいけない」とおっしゃいます。当たり前のことのように感じますが、何かあれば都合の良い“いい訳”を考えて実践を怠っていることが多いのではないか。改めて身につまされます。

「『儲かったらハワイ旅行に行こう!』などと言っていませんか?」と山田さんはおっしゃいます。それも経営者の言葉のウソだと。社長としては冗談のつもりであっても、社員からすれば“もしかしたら?”という思いもあるでしょう。良く言われることですが、社員は社長の一挙手一投足を注視しています。だからこそ、社長の発言や行動のブレにはとても敏感です。社長が決めたことをやらない、実行しない、ということでは、社長と社員の間に信頼関係が生まれるはずもないし、日頃実践していても、一つの失敗でもそれが失われてしまう可能性もある。それだけ、経営者は一日一日を、一つ一つの行動を自覚し、取り組んでいかなければならないということだと、つくづく感じます。

当社のことになりますが、実は、この6月に、私が社長就任以来では最大の昇給(といっても大した増額ではありませんが)を実施することにしました。社長に就任して4期が過ぎ、過去3期は様々方のおかげでまずますの業績を確保することができました。特に前期はあらゆる方面の受注が順調に伸び、会社としても大きな転機を迎えた、ということを理由にしています。しかし、本当の理由は、自分自身の言葉にウソがあったと気が付いたからです。私は、これまで、社員には「業績がよくなれば昇給もする。賞与も増やす。」と言ってきました。賞与については、過去3期、当初の予定よりも多く(これも額はわずかですが)支払っています。しかし、月例賃金はあまり大きく変化していません。財務的に脆弱な状況であるなど理由は色々ありますが、経営サイドからすれば月例賃金よりも賞与でバランスを取りたい思いがどうしてもあります。ですが、社員からすれば、それは経営側の都合に過ぎません。だから、過去3期の好業績は社員に我慢を強いて得た成果とも言えます。

いずれにしても、「業績がよくなったら給料を増やす」という私の言葉は、過去3期はウソになっていたと思っています。そのウソは改めなければならない。もちろん、昇給するには勇気が要ります。また、社長の気分で昇給していてもいけません。現在の給与規程に則って昇給します。しかし、基本的な認識として、一昨年、経営指針を策定して新しい方向を目指し、少しずつ成果がでている。それなのに社員の給料を据え置いていた(もちろん、全く昇給していない訳ではありませんが)のでは、いい方向に動くはずもありません。むしろ、そのタイミングだからこそ、勇気を持って社員との約束を果たし、会社全体を前向きに切り替えていく。その決断を行う勇気を頂いたのは、今回の講演でした。とてもいいタイミングで話を伺えたことに感謝し、社員とともにさらなる会社の成長を達成することで、お返ししたいと考えています。

2.人間尊重の経営とは?~社員の可能性を見つけることに全力をかけているか?~

同友会では「人間尊重の経営」という考え方を重視し、経営の柱に据えています。この言葉、何となく意味は分かりますが、具体的にはどういうことなのか。先日松江で開催された、中同協(中小企業家同友会全国協議会)の役員研修会でも同じテーマで話があり、間をおかずに今回の話を聴くことで、更に理解が深まったように感じています。

山田製作所の事例として、弟さんである専務がある社員の可能性を見出し、仕事の合間を縫って4カ月間休みなしで一緒に勉強を重ねた結果、現在ではバリバリの営業技術者に育った、という事例を丁寧に話して頂きました。それこそが、人間尊重の経営だと語られます。社員を甘い意味で育てるのではない。経営者が真剣に社員と向き合って一緒に育っていく。社員が育つという結果、それは、社員の得意分野が明確になり、会社にとってなくてはならない存在になること。或いは、お客さまから信頼され、社員自身も自信を持って仕事ができるようになること。そんな社員を育てることこそ、人間尊重の経営なのだと。このお話でも、ともすれば社員の顔色を伺ってしまっている自分自身に気がつくとともに、本氣の経営、本氣で社員と向き合う、といった要素に欠けていることを痛切に感じます。

社員は潜在能力を持って入社してくる。無限の可能性を持っている。確かにそのとおりではあるが、本に書いてある話しとしてではなく、経営者が本氣でそう思っているのか。そういうつもりで社員に接しているのか。それを問いかけられているのだと理解しています。だから、最も大事なことは、経営者自身が「社員の可能性を見つけることに全力をかけているか?」ということ。山田さんは、その状況を「100%の力で社員を引き上げる。社員も100%の力でついてくる。」と語られます。今、当社の中にそんな本氣のやりとりがどれだけあるのか。私自身が、どれだけそのやり取りに加われているのか。一昨年、経営指針は創った。その内容に基づいて取り組んでいる。しかし、社員と経営者との係わりがどれだけ変化したのか。社員は本当についてきているのか。今一度考えることのできる、いい機会を頂きました。

3.社員教育力のある会社とは?~先輩がそっと横に立っていてくれる会社~

山田さんは、現在の山田製作所について、「正直、業績的には厳しい。しかし、雰囲気はすごくいい。いつからそうなって来たのか。振り返えると、9年前、新卒採用を始めてからだ。」と語られます。

新卒採用には大きな意義がある。その一つは先輩が伸びる、ということ。人が子を持って初めて親になるように、社員も、後輩が入って来て初めて先輩になり、部下を持って初めて上司になる。その役割が、新しい気づきをもたらし、その人を伸ばすきっかけになる。当社も新卒採用をはじめて2年になります。新卒の新しいメンバーが加わることにより雰囲気が変わるのはもちろん、先輩たちの意識や姿勢が変わってくるのが分かります。私自身も変わります。いや、変わらざるを得ない、と言った方がいいかもしれません。「育てなければならない」という使命感。「成長して欲しい。」という応援する気持ち。即戦力の中途採用とはまた異なる、新卒採用が持つ力を感じるところです。そしてその次のステップとしては、会社としての教育能力、ということになります。

今回、「社員教育力のある会社」とはどんな会社なのかというお話がありました。それは、「後輩が、もっと勉強したい、もっと技術をつけたい、と感じた時、そばにそっと先輩が立っていて一緒に取り組んでくれる会社、そんな雰囲気のある会社」ではないか、と話されます。別のいい方をすれば、お互いがお互いに関心を持ち、その上で、それぞれが求めていることに気づき、さらには、そこにきちんと手を差し伸べることができる社員が集まる会社、ということではないでしょうか。この関係をつくり上げていくのに重要な役割を果たすものの一つが「新卒採用」。手を差し伸べる後輩がいなければ教えようもありません。

そして、もう一つ大事なこととして、「人手」から「人財」への転換、という話をされました。仕事が忙しくなると「“人手”が足りない」とよく口にします。この段階の認識は、仕事量をこなすための“頭数”でしかない、という指摘です。“人手”ではなく、“人財”として雇用する。当たり前のようだけど、そうなっていない場合も多い。“人財”だから、新卒で採用して育成する。経営者が、社員をそういう観点で見ているのか。私も過去2年、新卒採用に取り組んできましたが、なぜ新卒採用するのか、なぜ新卒採用しなければならないのか、その本当の意義が初めて理解できたような気がしています。当社は、これからも新卒採用に取り組み続けます。

100名を超える聴講者

最後の結びに、山田製作所を大きく変貌させたきっかけである3Sについて、「誰でもできることを、誰でも出来ないぐらいやる。」とおっしゃいました。たかが3S、されど3S。3Sが徹底していれば仕事が来るんじゃないか?という発想からスタートした3Sが、誰にも真似の出来ない素晴らしい企業文化として確立し、社員が生き生きと働き、共に育ち、共に学び合う会社になった。その原動力が、山田製作所では3Sだった。他の会社では他のやり方があるかもしれません。しかし、その根底にある「守ることを決めて、決めたことを守る」企業文化をつくっていくこと、は共通の価値観として持ち、当社も当社に合った方法で新しい企業文化を作っていき、社員の活躍によって伸びていく会社を実現したいと考えています。また、実際に山田製作所にお伺いし、いきいきと働き、自信をもって自分の会社を説明する社員さんを、ぜひ自分の目で見て、肌で感じてみたい。そして、いずれは当社がそういう会社になる。そんな前向きな目標を持たせて頂ける、素晴らしい講演でした。

2013
06.13

2013年6月11日(火)、島根県中小企業家同友会 松江支部総会記念例会が開催されました。この日は、『社長さん!!『夢』をみるのはいいけれど・・・具体化しなければ実現できない!NO2が会社を変える!!~「夢」の具体化・「数字」の見える化してますか?~』と題して、モルツウェル株式会社 専務取締役 野津昭子さんから報告を頂きました。同社は、平成8年にほっかほっか亭FCとして創業。その後、平成16年にシニアフード事業に参入するものの、業績が悪化。その後、経営指針の策定をはじめとする様々な改善施策に取り組み、復活。現在は全国はもとより、海外進出を視野に入れるまで成長されています。

野津専務は、社長である野津積さんの奥様です。妻であり、右腕でもある、創業時代から公私を共にするパートナーです。苦しい時代を共に過ごし、社員との係わりに関しては大変苦い思いをされたそうです。それを乗り越え、現在の成長を実現されるまでの取り組みをNO2の視点で報告して頂きました。大変興味深い報告でした。ごく一部ですが整理しておきます。

報告するモルツウェル㈱野津専務

1.人は評価されたがる生き物~社員全員で評価する「360度評価」の導入~

今回の報告の中で、私も含めて多くの方が興味を持って聴いたことの一つに「360度評価」の導入があります。モルツウェルでは賞与を年4回(額はわずかとのことですが)に分けて支給し、その評価は社員(現場のパートさんを除く)全員がipadを使って入力し、その集計結果によって評価(支給額)が決まるというシステムだそうです。野津専務は、「人は評価されたがる生き物」だとおっしゃいます。だから、みんなで評価してあげる。「評価」という言葉を「認める」と置き換えてもいいかもしれません。お互いをお互いで認め合う。それが社員の意欲を高め、新たな行動に移すための原動力になるのでしょう。

具体的な運用に関しては、社長、専務は評価に加わらず、それ以外の社員全員で評価するとのこと。評価するのは、モルツウェルの行動指針に示された10項目の行動を実践できているかどうか。全員が全員を評価するから不公平感がない。少なし、経営者の好き嫌いで評価されているのでは?といった疑心暗鬼は生まれません。全員でやると決めた行動指針について、各人の実行状況が明確に見えてくるので、社員一人一人も自らの行動を反省し、改善に活かすことが出来る、という前向きなスパイラルを生み出すための仕組みと言えます。

この話を聴いて思い出すのは、平成23年度人財塾(第3回)で講演を聴いた株式会社ライブレボリューションが採用されているシックス・メンバーズ・バリエーションという仕組みです。「自分達の給料は自分で決める」というコンセプトの制度で、給与と賞与を従業員自らが決めるという仕組みです。現在のモルツウェルさんの制度は賞与のみが対象のようですが、基本的な考え方は通じるものがあると思います。なお、この時の講演では“人格的に優れ、かつハイパフォーマンスの人を採用していないと出来ない仕組み”と話をされていました。一人一人が誠実に、謙虚に他人を評価できる前提ですので、考え方は興味深いものの、自社にすぐさま取り入れる状況にはないという感想を持った記憶があります。

導入に際しては様々な懸念もあったのではないかと思いますが、こういった新しい試みを思い切って取り入れ、実践に移していくというモルツウェルさんの行動力に大変感心するところです。報告後、会場からもこの仕組みに関して様々な質問が出ていました。モルツウェルでも回を重ねるごとに評価が安定してきているというお話もあり、いずれ詳しく聴かせて頂きたいと考えています。

2.“人”で描く組織から“役割”で決める組織へ

野津専務の報告のポイントの一つに「業務分掌の大切さ」がありました。モルツウェルでは組織図を描く際に、業務分掌(職務)、部門理念、評価対象数字、をあわせて整理し、明示されるそうです。そして、組織図を描く際は、“人を先に配置するのではなく、役割を先に描く”。これが重要だという指摘です。

モルツウェルでも以前は“人”を思い描きながら組織図を描いていたそうです。しかしそれでは、仕事がその“人”個人に依存してしまう。また、その組織の仕事の領域が不明確になる場合もあるかもしれません。要員的にも限られる中小企業では、人の顔を描いて組織を作りがちです。当社もそうです。しかし実は、そのことが、“○○さんの代わりがいない、困った”という中小企業にありがちな問題の要因の一つなのではないかと感じます。有能な人であればあるほど、その人の代わりが居ないと思い込んでしまう。それを、“人”ではなく、“仕事(職務)”で見ることで解決する。そう簡単なことではないですが、中小企業の組織問題を解決する糸口になりうるのではないかと感じます。

当社も、近いうちに大きな世代交代を迎えようとしています。現在、その際にどのような組織を描くのがよいのか、考えています。当社は20名ほどの会社ですが、組織を考える際にはやはり“人”を中心に考えてしまいます。誰を部長にするのか、誰を課長にするのか、といったイメージです。しかし、今回の報告を聴いて、私自身、“人”を先に描いて組織図を作ろうとしていたな、と認識することができました。人ではなく、役割。当社の場合は業務領域、という整理がいいかもしれません。どういう業務領域があるのか、そこにどんな職務があるのか、重なっている部分はないのか、それらを先に整理し、そこに人を貼り付けることで、新しい当社の組織図が描けそうな、そんな気がしてきました。

野津専務は、報告の最後に「今の職務を自覚することが大事。○○というミッションを達成しているから認められる。そのようにお互いを尊重し合える組織、それが見えるようにする仕組みが大事。」と語られました。職務を明確にすることが、評価を明確にすることにつながる。その流れが明確になれば、それを“見える化”する仕組みをつくって運営していけばいい。今回の報告の全体像を端的に説明して頂いたように感じます。

3.No2という役割をになう女優~専務という役割を演じきる~

野津専務は、野津社長の奥様でもあり、まさに公私を共にするパートナーです。その野津専務がおっしゃるNo2像とは「No2とは、トップのために自分を犠牲に出来る人」と語られます。例えれば、親分のために仇打ちに行ける人。しかし、「仇打ちに行って本当に自分が犠牲になってはいけない」、とも言われます。自分を犠牲にするといっても、体を壊しては、心を病んでしまっては意味がない。社員との係わりに関して、過去の様々な苦い経験を乗り越えたからこそ、そのように話をされるのでしょう。

また、私は「No2という役割をになう女優、専務という役割を演じきるのが仕事。事業継承が済めば、あとは自分自身の為に羽ばたきたい。」ともおっしゃいます。“役割(職務)”という観点を重要視される野津専務ならではの感性だと感じます。誰しも楽な方に流れたいし、いざこざや言い争いは避けたい、和気あいあいとした中にだけ居たい、という思いがあるでしょう。しかし、経営者となればそうもいかない。会社を維持発展させ、従業員の雇用を守り処遇を高めていくためには、口うるさいことも言わなければならないし、職場の反発も受け止めなければならい、そのことに対する一人の人間としての葛藤もあるでしょう。それを、「役割を演じる」と捉える。“演じる”と安易に言えば、「ああそうか、結局表面上そう言ってるだけなのか」などと批判する人も出てきそう(モルツウェルにそんな低レベルの人は居ないと思いますが)ですが、そう言い切れるのは、やはり本気で取り組まれているからだろうし、仮に演技であっても結果が正しい(会社が良くなり、発展する)ことの方が重要、と考えられているのかもしれません。

社員も経営者も一人の人間。一人の人間として、社員の一人一人の人生を真剣に考える、様々な苦労や苦い思いを経て、魅力あるNo2となられた専務の存在、そして徹底した実務と仕組み化がモルツウェルという会社を飛躍させている。そう感じさせて頂くことができる報告でした。

グループ討議の様子

今回のテーマは「No2」。当社にもNo2である専務がいます。私の弟ですので、身内と言う点ではモルツウェルさんの場合と似通った面もあるでしょう。日々、会社のために奮闘してくれています。しかし、トップとNo2の役割、分担ということについてしっかりと話をしたことはありませんでした。野津専務によれば、「社長は未来を守り、社員とNo2は今を守る。」という役割分担。当社では今どうなのか、今後どうしていけばいいのか、これをきっかけに、話し合う機会を設けたいと考えています

2013
06.07

2013年6月6日、平成25年度地中熱利用促進協会の総会が開催され、私も出席してきました。地中熱利用促進協会の、平成25年5月23日現在の会員数は団体会員191社、個人会員61名、特別会員79名。団体会員はこの1年で70社が入社(2社退会)。前年比1.6倍という増加率(昨年も約1.4倍の増加率)で、地中熱に関する世の中の関心の高まりを伺わせます。(昨年度の総会様子はこちら

協和地建コンサルタントでは、2012年8月から本社屋で地中熱ヒートポンプ空調システム運転開始して約10カ月になります。これまで様々な方に見学に来て頂き、今後は、実際の事業として具体化を図っていく段階です。次のステップに向けたタイミングでの総会で、最新の地中熱を取り巻く情勢や今後の新しい方向性など、新しい発見がありました。今回の総会での注目点について簡単にまとめておきます。

平成25年度総会の様子

1.理事長挨拶からみた地中熱の動き~地中熱・まさにこれからの市場~

総会冒頭、協会の笹田理事長から、この1年間の地中熱を取り巻く動向として3つの特徴的な話を伺いました。その話は、現在の地中熱を取り巻く状況を端的に表現しており、今後の可能性が確信的なものとなりました。

一つ目は、「展示会」での様子についてです。協会では積極的に展示会等への出展に取り組んでいます。4年前、初めて展示会(環境やエネルギー関係)に出展した時は、畳二畳分ぐらいのブースで、呼び込みをしてやっと人が来る状況だったそうです。その後、一昨年から会員と合同ブースを設置するまでに至り、規模も大きくなり、来客数が飛躍的に伸びたそうです。一回の展示会でパンフレットが1000部以上配布されたり、また主催者側から地中熱に関するセミナーの企画提案があったりと、地中熱の存在感が明らかに増し、伝えたい情報が伝わるようになったということです。

二つ目は、「補助金」についてです。今年度、地中熱に係わる2つの補助金が新設されたということです。1つは経済産業省の再生可能エネルギーの複合利用に対する補助金制度。この補助金は民間の場合でも1/2補助となる、かなり有利な制度です。もう一つは、環境省の地中熱利用に限定した補助金で、規模要件が外されているところが特徴です。従来はヒートポンプが一定規模以上であること等の要件があったものが取り払われ、小さな設備でも対象になるということです。このように、国の政策的にも地中熱の支援策が充実していることが明らかであり、普及促進の加速化が期待されます。

最後三つ目は、地中熱ヒートポンプの設置件数が全国で1,000件に達したということです。定期的に実施される環境省の調査データによるものだそうで、少しずつ増えてきていたものが、震災以降大幅に増加したとのことです。1,000件という数字、全国大でみれば大した数ではありませんし、世界的な普及規模からすればわずかなものだそうです。とはいえ、一つの区切りであり、今後の大きな飛躍に向けた一里塚でもあります。こういった明るい話が出来るのも、この地中熱という分野がまさにこれからの市場であることの表れでしょう。次は、その大きな流れをそれぞれ企業が“いかに自分のものにするか”が問われる段階に来ています。

2.EIMY・地産地消のエネルギーが地域の未来を拓く

今回の総会では特別講演として『震災から学ぶ 地産地消のエネルギー』と題し、東北大学名誉教授 新妻弘明 氏に話をして頂きました。新妻先生は、昨年東北大学を退職され、現在、日本EIMY研究所の所長を務められ、地域のエネルギー活用に関する実践活動を展開されています。

この講演の中で、EIMY(Energy in my yard)という概念について触れることが出来ました。EIMYとは、新妻先生が提唱された、“身の回りの自然エネルギーを最大限活用する”という考え方で、その地域にある再生可能エネルギー(自然エネルギー)を,技術的・経済的条件が許す限り,最大限地域のために利活用するエネルギーシステム・社会システムを言います。今後、地域において再生可能エネルギー(自然エネルギー)の活用を考えていく際に、地域の企業としてどのようにエネルギー問題に係わり、どう提案していくのか、に大きな影響を与えると感じました。たくさんの示唆がありましたが、一つだけ紹介しておきます。

それは、「エネルギー=電気」という発想から脱却するということ。確かに電気は便利なエネルギーだが、全てを電気で考えるのは間違っている。電気ではなく、自然エネルギーとして存在する“熱”や“運動”というエネルギーをそのまま利用する方が、効率がとても高い、ということです。発電のためには熱を発生させる(その熱で蒸気を生みだしタービンを回す)ことが多いですが、発電のエネルギー効率は、熱をそのまま活用するよりも低いことは良く知られています。例えば、薪を燃やして暖をとることを考えた場合、それと同じだけの熱エネルギーで発電をして電気を発生させても、その電気でエアコンを使って同じだけ温めることはできません。

なので、自然エネルギー全てを発電に置き換えようとすると、本当ならば、工夫すれば使い道があるはず地域のエネルギーが、役に立たないエネルギー(商業ベースに乗らない)のように判断され、結果、地域の自然エネルギーが未利用になってしまう、というのが現実であるとの指摘です。我が国全体でみれば大規模な発電所で発電する電気も当然必要だけども、各地域でみれば、身の回りで確保できるエネルギーで済ますことが出来る部分はそうする。そのことで、どれだけエネルギー利用が効率的になるのか、という問題提起です。

このことを踏まえ、「これから地域のエネルギー開発は、EIMY型の開発であるべき」、と説明されます。それは、地域のための最適開発。発電は出来なくても、他のエネルギーと組みあわせて最適なものを考えていく。そのために設備を先に考えるのをやめる。地域の問題を先に考え、そのために必要な設備を考えることが求められる、との指摘です。この話は耳が痛い面があります。我々は地中熱を推進する立場なので、何でも地中熱からスタートしがちです。しかし、お客様は別に地中熱が欲しい訳ではない。お客さまの問題を解決する手段として地中熱が最も適しているなら地中熱を導入する、ということに過ぎません。エネルギーの問題も、あくまでお客さまの問題解決が目的である、ということを改めて学ばせて頂いたと考えています。

3.地域における地中熱利用協会の活動~各地域の実情に即した地中熱活用を~

今回の総会では、会員数が年々大幅に増加していることを踏まえ、協会内の組織体制の見直しが図られることになりました。この協会に限りませんが、こういった推進団体は入っているだけでなにかいい事がある訳では無く、協会の活動に積極的に参加し、その中で自らの事業活動に寄与する学びや実益を得ていくことが必要です。その意味で、一つの大きな提案がありました。それは、「地域活動部会」の設置です。

これまでの協会の活動は、どうしても東京中心にならざるを得ませんでした。それは致し方ない面があります。しかし、この地中熱利用促進協会には、各地域で事業を展開する中小企業が多く参加しています。それは、地中熱の事業規模や仕事の特性(地域の特性にあった設計・施工が必要)がまさに中小企業の事業領域だからです。そして、現在、各県単位で地中熱利用促進にかかる推進団体の設立が進んでいます。東日本や中日本が多く、二市日本ではまだまだこれからの状況です。

地中熱への注目が高まっているとはいえ、太陽光や風力などに比べればまだまだ認知度が低いのが実情です。その意味でも、各地域で、地域の実情に即した地中熱の利用促進を図団体が、意欲ある中小企業を中心に形成されることは非常に意義深いものがあると考えます。そういった地域の自主的な活動と地中熱利用促進協会が連携していくことも、大いに進めるべきことだと考えられます。

まだ、検討中でどういった形式で進めるかまで具体化されていませんが、今年度、島根県でも地中熱に関するセミナー又はシンポジウムのような企画を実現したいと考えています。島根県における地中熱の認知度はまだまだですが、進めていかなければならないと確信しています。その際に、組織の形態はともかく、推進していくための団体が必要になると考えています。いきなりつくり上げることは難しいので、島根において地中熱の認知度を高めるための仕掛けが必要だと考えています。その皮切りとして「地中熱」という名前を冠したセミナーを企画する。全国的な認知度の高まり、補助金など支援制度の充実など、このタイミングを逃さず、島根における地中熱の普及促進に向けて、一歩踏み出したいと考えています。

講演する新妻弘明氏(東北大学名誉教授)

「地中熱には、勢いがある、今後に向けた展望がある」。地中熱利用促進協会の総会、そして懇親会に参加した感想です。実は昨年と同じです。今年はさらにその勢いが増しているように感じます。そして、今年のもう一つの気づきは、「地中熱」だけを推進しようと考えてはならないということ。様々な再生可能エネルギーを地域の実情、地域の課題解決に役立つ形で導入する。考えてみれば当たり前のことですが、自分の得意分野や自分がいいと思っているものを進めようと考えると、ついつい、“技術ありき”になってしまいます。今年度当社で推進しようとしている「スモールZEB」では、太陽光発電と地中熱ヒートポンプの複合利用を目指していますが、こういった発想に意味があることを思いがけず知ることも出来ました。取組みを通じて得られるノウハウや課題を今後に活かし、島根における再生可能エネルギーの活用のあり方を模索していく一つの材料になればと考えています。