2015
03.27

協和地建コンサルタント㈱は、地熱発電事業(温泉熱発電事業)に参入します。このたび、鳥取県東郷温泉で実施される温泉熱発電事業の事業者に選定されました。東郷温泉から湧出する約90℃の温泉熱を活用して地熱発電を行い、FIT(固定価格買取制度)を用いて全量を売電するものです。2015年10月1日の発電開始を目途に、施設整備を進めていきます。地熱発電(温泉熱発電)は、中四国エリアでは初の事業化となります。地域で“地熱”に関わる仕事に取り組んできた当社として、当地での第1号案件に携われることに感謝するとともに、これをきっかけに、「地熱」の地域活用に弾みをつけていきたいと考えています。今回、その概要をご紹介します。

温泉熱バイナリー発電の仕組み(IHIホームページより)

1.地熱発電(温泉熱発電)とは~「バイナリー発電」で広がる活用の裾野~

地熱発電とは、地下から噴出する蒸気で直接タービンを回す発電方法です。

地下深部のマグマに由来する高温地熱が存在する地域で実施されており、最低でも150℃以上の地温が必要となります。これが可能なエリアは、九州や東北など、国内でも限られています。山陰地域も含めたそれ以外のエリア、すなわち地下の温度が150℃程度に達しない温度帯の地域(※桁違いに深い地下深部ではどこでも達しますが)では、前述の方式による地熱発電は実施できません。しかし、ここで注目されるのが、水より沸点が低い媒体と熱交換し、この媒体の蒸気でタービンを回す発電方法です。「バイナリー発電」と呼ばれるこの発電方法は、地熱発電の可能性を大きく拡げるものとして、全国で年々増加しています。

「バイナリー発電」に関しては、近年、汎用発電プラントの開発が進んでいます。今回の事業で採用するのも、国内メーカー㈱IHI製のプラントです。前述のとおり、熱交換器を通じて温泉の熱だけを採取し、プラントで発電を行います。発電に使う温泉水は温度だけが低下し、量はそのまま既存の集湯タンクに戻ります。従来活用していた温泉の熱だけを利用するので、温泉資源を無駄にすることはありません。このプラントは、発電規模20kwほどで、現時点で国内販売されているプラントの中でも小さい方に入ります。既に初号機が運転を開始しており、今後続々と稼働予定です。今年の10月に鳥取県湯梨浜町で稼働すれば、全国で5事例目となる予定です。こういった小規模プラントは、導入が増えることで開発が進み、さらなる高性能化、低価格化が図られることが期待されます。

今回の事業では、導入を下支えするため、鳥取県及び湯梨浜町から補助金が準備されており、当社が補助金を頂いて事業を実施することになります。地元自治体からも補助金を頂き、大きな期待をして頂いている事業であり、ぜひ成功させたいと考えています。

2.カスケード利用で地熱を活用した地域づくりへ~国の手厚い補助事業を追い風に~~

前述のとおり、温泉熱を使った地熱発電は、出力的には僅かなものです。

山陰エリアでみると、比較的大きな温泉地であっても、全ての湧出量を発電に活用した場合でも発電量は数十kw程度と想定され、発電事業単独で大きな収益が得られるものではありません。同じ再生可能エネルギーを活用した、太陽光(メガソーラー)、風力、等とは様相が異なります。

一方、温泉熱を利用する発電の特徴は、発電した後の熱水(温泉水)を二次的に利用できるという点です。温泉地ですから当然温泉の浴用に使うという選択肢があります。東郷温泉のように湧出温度が高い(80~90℃)温泉地では、通常でも何らかの方法で温度を下げて浴用に使っていますので、発電に際してその熱が奪われれば温度を下げる手間とコストが省ける、というメリットがあります。また、さらに熱量に余力があれば、上がり湯等の給湯の昇温に活用したり、さらには、農業ハウスなどの温室、養殖施設等への供給に活用したりすることで、エネルギーコストに優れた生産施設を稼働できる可能性があります。

現在、地熱開発及び地熱の理解促進に関しては、国の手厚い補助制度が準備されています。平成27年度予算で言えば、地熱資源開発調査事業(JOGMEC)では、地域の地熱関係法人に対して、地熱開発のための調査費(地表調査、坑井掘削調査)について定額(10/10)で補助しています。また、地熱開発理解促進事業(資源エネルギー庁)では、地熱発電後の熱水の有効利用のためのソフト・ハード事業を上限1億8千万円まで定額(10/10)補助しています。この事業は、平成29年度までの事業となっています。どの地域でも活用できる訳ではありませんが、地域の事業者並びに地方自治体が連携して取り組むことで、これらの効率的な地域づくりが実現できる可能性があります。

3.温泉と共生する「地熱活用」をキーワードに新しいまちづくりを

地熱開発を進めるに際して、避けて通れないことは、「温泉への影響」です。

温泉熱発電に限らず、地熱発電を実施しようとするエリアの近くには温泉地があり、地熱開発によって温泉に影響があるのではないか、という懸念は古くからあり、地熱開発が進まなかった理由の一つにもなっています。地熱発電が温泉に影響を与えるか否かについては、両面からの意見があり、また場所によっても異なると考えられますので、ここで言及することはしませんが、バイナリー発電は、既に湧出している温泉水から熱を採取する場合、この問題から離れることができます。全国で導入が進んでいるのは、新たに発電のための温泉井を掘るのではなく、既存の井戸から出ている熱水を有効活用する、という考え方で進められているところも多いと聞きます。

その一方で、やはり新しい井戸を掘削して発電を行う方法も追及していきたいというのが当社の考え方です。当然、当該温泉地の関係者の合意を得た上でのことですが、長く利用してきている温泉井戸は、湧出量の減少や温度の低下を生じることがあります。また、観光振興の成功等により従来よりも温泉水が多く必要になる場合もあります。そういった時に、単に、従来と同じような温泉井戸を掘削するのではなく、発電も視野に入れた井戸を掘削(より詳細な調査と大深度の掘削が必要)し、発電、温泉利用、二次利用、というトータルの熱利用が可能な仕組み(ビジネス)を構築し、その費用の回収も含めて地域の活性化につなげていくことが必要ではないかと考えています。

温泉と共生する地熱開発。今後の地域におけるキーワードと位置づけ、引き続き地熱活用に関する様々な事業に取り組み、トータルでサポートし、また自ら実践していくことが出来る企業を目指したいと考えています。

地熱発電設備設置予定地(東郷温泉集湯タンク前)

協和地建コンサルタントは、平成24年度から地熱関連事業に関する取り組みを進め、ポテンシャル調査や事業計画策定について実績とノウハウを蓄積してきました。今回、地熱(温泉熱)を活用した発電事業に着手することで、調査から実際の事業運営まで取り組みの裾野を広げることになりました。今回の事業を確実に成功させ、山陰エリアにおいて地熱に関して地域でトータルの提案、実行できる唯一のコンサルタントとしてその役割を果たし、地熱を活用した地域づくりに貢献していきたいと考えています。今後とも、事業の進捗にあわせ、このブログでも経過報告をさせて頂きます。

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