島根経営品質研究会

島根経営品質研究会 ベンチマーキングから学ぶ~美保テクノス㈱・経営のノウハウを設計に活かす~

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2014年5月21日、島根経営品質研究会の「ベンチマーキング」が開催されました。この取り組みは、研究会会員メンバーが会員企業に出向き、会社の説明、社内見学、職員との意見交換、等を行うものです。2012年4月には当社にも来て頂きました。今回は、研究会会員である美保テクノス株式会社(鳥取県米子市)さんにお伺いしました。同社は、鳥取県西部エリアを代表する建設会社で、個人及び法人向けの建築、不動産、エネルギー事業、公共土木・建築事業など、主要事業である建設業のほか、福祉事業をはじめとする様々なグループ企業で構成される、一大企業群を形成しています。常に新しい事業領域に挑戦する社風と決断力を持つ会社という印象があります。同じ建設産業に従事するものとして、地域のトップランナーである同社から、大いに学ばせて頂きました。その中でも、ベンチマーキングの最後に実施された社員の方々との意見交換での気づきを中心にまとめています。

社内での会社概要の説明

1.ここ5年で形になってきた~やらされ感からの脱却~

実は、島根経営品質研究会が美保テクノスさんのベンチマーキングに伺うのは2回目になります。平成21年度に最初の訪問がありました。私は未だ入会していなかったのですが、当時の参加者の印象は、必ずしも良好なものではなかったそうです。それから5年。今回、私が受けた印象は、それとはまったく異なるものでした。社内を見学させて頂いた時の、社員さんの挨拶、社内隅々まで行きわたった清掃。社内の改善、改革の取り組みを感じさせる様々な掲示。よく、「いい会社にはいいオーラがある」等と言いますが、そのオーラとでも言うべき、明るく、さわやかな印象を感じました。

そして、最後の社員のみなさんとの意見交換会で、5年前と現在との会社の違いをどのように受け止めていらっしゃるか聴く機会がありました。そこで「ここ5年で形になってきた」というコメントがありました。現在、美保テクノスでは様々な取り組みが実施されています。会社方針を社内に展開していくための経営方針発表会とそのレビュー、理念共有のためのフィロソフィ手帳の作成、社内に横串を通すための委員会活動、人財育成のための研修計画、など、体系的に試行錯誤しながら進められています。経営方針発表会も、以前は新年会という懇親の場があっただけだったのが、方針の発表の場として年度当初に位置付けられるなど、全社員が足並みをそろえていくための仕組みが整い、実践が継続されています。

そういった様々な施策を社員がどう受け止めるのか。その回答として「会社が自分達を育てようとしてくれているのを感じる。会社と一緒に育っていく機会を与えてもらっている。」というコメントがありました。以前は“やらされ感”のあった取り組みも、継続していくことで、管理型から参加型へ会社の風土が変わって来ていると社員のみなさんも感じているようです。「変わって来ている」と感じることが、その次の変化を生みだす。確実に会社が変わりつつある、まさにその現場を見せて頂いたと感じます。

2.経営ノウハウを設計に活かす~運営・マネジメントを強みとする~

今回のベンチマーキングの中で一番印象に残ったのは、「経営ノウハウを設計に活かす」という話です。美保テクノスは、公共土木工事だけでなく、民間の建築工事も多数手がけており、特に福祉系施設について設計・施工の受注実績を多数有しており、同社の強みとなっています。

そのきっかけとなったのが、新分野進出として手掛けた介護事業です。事業そのものはグループ会社によって運営されていますが、そこで得られた経営ノウハウを自社の設計部門にフィードバックし、より顧客ニーズに適した設計サービスを提供する。また、介護事業運営を通じて得られた医療関係のネットワークを通じて営業活動を展開するなど、自ら事業に取り組むことで得られたノウハウを自社の本業に活かしています。もっとも、そのための先行投資も実施されています。自社に設計部門を抱えること自体も実際には大変なことですし、さらに、BIMと呼ばれる3次元CADを活用した設計手法を早くから採用し、常に完成形をイメージしながら設計を進め、お客さまへの提案力を高めていく。そういったさまざまな取り組みの総合力として、現在の実績・確固たる地位を築いているのだと感じます。

当社も、新規事業展開の一つとして「地中熱ヒートポンプ空調」を社内に導入し、その運用を続けながら仕事の受注を目指しています。残念ながら、美保テクノスさんのような成果は出ていませんが、実際に運用しているからこそ分かることは多々あります。その方向性が間違っていないことを確認するとともに、一方でまだまだ頑張りが足りないと感じさせてもらえる良い機会となりました。

3.課題は若手社員の離職率~会社のよさを教えられるか~

意見交換においては、今後の課題や直面している問題等について率直に教えて頂きました。その中の一つが、「若手社員の早期離職」です。いまや全国的な課題でもありますが、美保テクノスさんにおいても、入社3年以内の若手社員の離職が目立つ状況があるようです。もちろん、一人一人に様々な事情があるでしょうが、それでもせっかく入社した会社を僅かな期間で去るというのは、社員にとっても会社にとっても良いことではないでしょう。

島根県内の新卒者の3年以内離職率は、最新のデータでは大卒で37%、高卒では42%に達するそうです。美保テクノスさんは鳥取の会社ですからこのデータには含まれませんが、お話聴く限り、鳥取県でも似たような傾向があるものと推察します。

意見交換の場で、早期離職の理由について、適性もあるので一概には言えないとしながらも、「会社(美保テクノス)の良さを十分に教えてあげることができなかったのではないか」というコメントもありました。前述のように、しっかりとした取り組みを継続されている美保テクノスさんでも、若手社員の離職が発生するという現実。その意見交換で印象に残ったのは、中堅社員の方から「技術者としてだけでなく、人間としてどう成熟していくのか?が大きな課題と認識している」という言葉がありました。人間としての成熟・成長、それをしっかりと提供できる会社、それを実感できる会社になっていけば、離職問題の解決につながっていくかもしれません。当社も新卒採用を始めて3年目。今年度、最初に採用した社員が3年目を迎えています。この3年目をしっかりと乗り切り、さらに飛躍した技術者、社会人として成長して欲しいと、あらためて感じたところです。

建設工事の現場事務所での説明

美保テクノスさんは、「経営品質」に関しても、いち早く取り組みを開始され、2007年度に、中国地方経営品質賞の」チャレンジ部門『敢闘賞』を受賞されています。経営品質をはじめ、企業としての様々な取り組みを見ることができました。時間をかけて継続的に取り組みを進められた結果として、今回見せて頂いた成果をあげているのだと感じます。まさに継続は力なり。そのことを改めて実感し、自社の取り組みも継続の観点から改めて考えていく必要があると感じたところです。また数年後、再度訪問させて頂き、さらに飛躍した姿を見せて頂きたいと考えています。

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