島根県が主催する「事業継続計画(BCP)」に関するセミナーに参加しました。
事業継続計画は、BCP(business continuity plan)とも呼ばれ、大規模災害等に直面したとき、企業をいかに存続させ、事業を継続できるようにするのかを検討し、事前に対応するための計画を定めておくものです。地震や新型インフルエンザの発生などを想定し、数年前からその必要性が叫ばれるようになってきています。私もそういったものがあることは知っていましたが、当社において具体的な検討を行ったことはありません。
このセミナーの開催は、東北関東大震災の前から予定されていたものですが、開催日は震災から10日あまり後の2011年3月23日。震災の被害があまりに甚大な中、“タイムリー”とは言うのははばかられますが、関心を持たざるを得ないタイミングでの開催となりました。
現在、島根県では「事業継続計画(BCP)策定普及支援事業」が実施されており、島根県BCPポータルサイトの設置や、BCPヘルプデスクの設置などの取組みがなされています。この支援事業は、セコム山陰株式会社が県からの委託を受ける形で実施されているそうで、平成24年3月までは無料で相談や計画策定の支援を受けることができます。
以下、セミナーの内容と気づき、当社のような中小企業がいかに考えるべきか感じたことを記しておきます。
1.BCPの構成と具体的内容
BCPの構成は、大きく(1)非常時対応計画、(2)(狭義の)事業継続計画、の2つに分かれるそうです。
非常時対応とは、災害発生時の初動、代替手段確保、外部への情報発信などの当面の対応。事業継続計画とは、その企業が提供するサービスの継続に関する計画。その中でも、中断できない業務と中断しても構わない業務に分けて対応を準備するそうです。
さらに、事業継続計画の具体的な中身としては、1)人的な代替計画(引き継ぎ書の準備、多能工化など)、2)部品・材料の代替計画(代替調達先の準備、リストアップ化など)、3)情報通信システム対策(バックアップシステム、緊急時連絡手段の確保など)、4)拠点資源の確保(代替拠点・設備・スペースの確保、他社との相互援助など)、といったことになるようです。
セミナーで紹介された事例では、これらのことをかなりきめ細かく抽出、整理、分析されていて、まじめにやるとその作業量は結構なものになるようで、中小企業といっても一定規模以上企業でなければ、対応が難しそうな印象でした。
2.当社の現状と中小企業における事業継続
このように考えておくと、当社に現在あるのは緊急時の連絡網ぐらいです。それとて災害時に電話が不通になれば機能しないかもしれません。また、個別の対応についても、社長である私や幹部職層の頭の中にある程度あっても、それを明文化したり、社内で確認したりといった取り組みは実施していません。心もとないと言えば、そのとおりです。
その一方で、(少なくとも当面は)安定的に経営が続くことが前提の会社ならいざ知らず、仕事の確保、要員・体制の維持、資金繰りなど、“綱渡り・その日暮らし”とまでは言いませんが、事業継続に向けて日々緊張感を持って会社を運営している中小企業においては、“毎日が非常事態”ぐらいの気持ちの会社も多々あると思います。
そう言った中、改めて大規模災害時のことを考えようと言ったところで、中々目が向かないのが実態で、致し方ないところかと思います。当社もそうです。しかし、それでいいのかと言う疑問もあります。今回、のことに対する一つの答えがありました。
3.BCPを業務改善・経営戦略の見直しの機会とする
今回のセミナーで、「ついでにBCPを作る」という提案がありました。“ついで”というと何となく言葉が悪いですが、BCPの策定を業務改善や経営戦略の見直しの機会にしてはどうかという提案です。的を得た考え方ではないかと感じます。
先行してBCPを策定した企業の中には、策定した計画書が形骸化し、必ずしも実効性の高いものになっていないケースもあるという話がありました。そうなっては元も子もありません。そもそも、非常時でなくとも企業を取り巻く環境は日々変化しており、“事業継続”とは、企業が常に考え、取り組んでおくことべきことです。その取組みの方向性は、その企業がどのような方向を目指すのか、どのような戦略で取り組んでいくのかに左右されます。
その意味で、特に中小企業では、BCPの観点を企業の経営方針、経営戦略の中に取り込み、生産、営業、財務、教育といった個々の取組みの中に、BCPの要素も盛り込んで考え、対応策を講じておくことが望ましいのではないかと感じます。
不測の事態においても企業が生き残ることは、サービス・商品を提供しているお客様のために、そしてその企業で働く者のために大変重要なことです。当社では、2011年度に新しい経営理念や経営方針の策定を行います。この機会を利用し、その中でBCPの観点も盛り込んだ検討を行いたいと考えています。そして、計画書づくりよりは“必要な対策を講じておく”ことを重視し、より強い企業体質づくりに取り組んでいきます。