まちエネ大学

まちエネ大学山陰スクール(第1回)~再エネのキーワードは、「たのしい」「もうかる」「まじわる」~

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2013年11月28日、「まちエネ大学」山陰スクールの第1回講座が開催され、参加してきました。この「まちエネ大学」は、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」といいます。)の普及促進施策の一環として経済産業省資源エネルギー庁が実施するもので、持続可能なまちづくりの推進に向けて、再エネの活用による地域での新しいビジネス創出のための人材育成事業です。全国5箇所でそれぞれ計4回の講座が開催され、この山陰エリア(松江)も会場の一つに選ばれています。先月、プレイベントにも参加してきました。プレイベントを踏まえ、最初の講座がいよいよはじまりましたので、その概要をまとめておきます。

資源エネルギー庁村上課長による補足講義

1.まちエネ大学は「たのしい、もうかる、まじわる」で再エネを学ぶ

「まちエネ大学」のカリキュラムによると、この講座の最終成果は「再エネ事業にかかる事業計画の策定」です。しかし、主催者側としては、講座の全受講者に、それぞれの事業計画を策定してもらおうとは考えていないようです。

今回、講座の冒頭、資源エネルギー庁新エネルギー対策課長村上敬亮さんから、「さまざまなポジションで再エネの普及を担う人になって下さい」という趣旨のメッセージがありました。参加者全員が、再エネの事業を立ち上げなくても、中から数人、本気で取り組む人が出てくればいい。それ以外の人は、中心となって取り組む人を支援する人になる。そういう様々な立場で再エネを理解する人、携わる人を増やすことで、再エネのすそ野を広げ、本当の意味での普及を図る。「まちエネ大学」とは、そういう取り組みなのだと理解しています。

もう一つ、冒頭に話があったのは、再エネにかかわる上での3つのキーワードです。それは、「たのしい」、「もうかる」、「まじわる」。つまり、楽しくない取り組みは続かない、収益性がなければ続かない、そして、“まじわる”ことで深まる。このまじわるとは、“多様性を受け入れる”という趣旨だと説明がありました。この「まじわる」が、まちエネ大学の本当の趣旨に大きく関わっているようです。「たのしい」については、太陽光発電をはじめ、自分達で身の丈にあった身近な発電事業に関われるという“楽しみ”が再エネにはあります。「もうかる」については、固定価格買取制度により、普通にやれば利益を得られる買取単価を国が保証してくれています。ここまでは分かりやすい。後は「まじわる」ということ。ここが肝になる部分なのだろうと思います。

再エネ自体、昨今大変注目されていますが、まだまだ言葉だけが先行し、理解が進んでいない面も多々あるでしょう。また、再エネをビジネスとして見ている人、一市民の立場で見ている人とでは捉え方は異なるでしょう。そういった様々な立場や考え方を超え、“再エネ”という共通の言語で地域に浸透させていく。そのための、各地域の特性も踏まえたその訓練の場、それが「まちエネ大学」なのではないかと考えています。計4回の講座では「グループワーク」に多くの時間を割くカリキュラムが採用されています。それは、再エネに関して、ポジションの違う様々な方と上手くやりとりする訓練の場、と捉えられているようです。私の勝手な理解ですが、その仮説が正しいのかどうか、あと3回の講座でしっかり学びながら確かめてみたいと考えています。

2.事前の映像教材視聴が効果を高める「反転学習」

「まちエネ大学」では、毎回の講座前に、専用サイトで映像教材を視聴します。その上で、本講座ではゲスト講師やファシリテーターが討論型で進める対話中心のカリキュラム、「反転学習」の手法を取り入れています。反転学習とは今回初めて知りましたが、教育現場でも注目されている手法のようです。

一般に、学校や学習講座などでは「授業や講義を受けること」が中心ですが、反転学習では「授業や講義を受けること」は“宿題(予習)”となります。学校や学習講座の時間は、事前に閲覧した動画の内容をベースに、その知識を応用して問題を解いたり議論を行ったりする場となります。授業・講義以外のところで従来の座学で学ぶインプット型の学習を行い、授業・講義の場は、今まであれば宿題や予習の領域であった応用問題への対応や討議の時間として活用される。そこが逆になっているから「反転学習」という訳です。

限られた時間の中で集、講義(説明)にかける時間を減らすことで、講義中は受講者一人一人に対するきめ細かい対応に時間を割くことも可能です。また、受講側にとっても、自分のペースで事前学習に取り組めるという面もあります。また、動画は何度でも再生可能なので、興味のある人、理解が進まなかった人は繰り返し学んでおくことも可能です。こういった事ができるもの、ITC環境の普及が進み、だれでも、どこでも簡単に動画を閲覧できる環境が整ってきたからこそです。新しい時代の学習方法として興味深く体験しました。

実際に受講してみた感想としては、「本気で学ぶ気のある人には有効」というところでしょうか。誰かの指示で参加したような方にとっては苦痛かもしれません。それはさておき、大きな効果としては、やはり、参加者が集まる時間を討議や意見交換に使える、という点でしょう。今回、講座の後半に4名1組でグループワークを行いました。いきなりのグループワークではなく、予め同じ学習教材を視聴しているから、様々な立場の参加者の意見をゆとりを持って捉えることができます。なぜそのように感じるのか、同意出来ることも多々あるし、同じ教材を視聴した上でも自分の考えと異なる着眼点を持つという発見もあります。短時間でこう言った認識を得られるのも、反転学習の効果なのでしょう。

今回、第1回の講座の前に1時間弱のビデオを4本視聴しました。内容自体は興味深いものですが、それはそれで時間も取られます。第1回目の講座の時間が2時間半ですから、事前にそれ以上の事前学習を行っている事になります。実際、講座本番が復習のような形になりますので、理解が深まるのは間違いありません。あと3回講座がありますが、この手法については非常に興味深く感じますので、引き続きその効果を自分自身で感じながら体験していきたいと考えています。

3.市民太陽光発電の先駆者~おひさま進歩エネルギー株式会社~

まちエネ大学第1回目のゲストは、太陽光発電事業の先駆者である、おひさま進歩エネルギー株式会社 代表取締役 原亮弘さんの講演がありました。長野県飯田市において、日本初の「おひさまファンド」として太陽光発電による市民出資事業に取り組まれた会社です。事業開始から10年、ファンドによる資金調達は10億円を超え、発電事業の実績も2,751kWに達しているとのことです。

長野県の飯田市から始まったこの事業、成功の要因としてさまざまなことがあると思いますが、最初の事業で、飯田市内の保育園・公民館等の公的施設に太陽光発電設備を設置した時が大きなポイントです。この時、飯田市とおひさま進歩エネルギー㈱との間の契約締結に際し、飯田市との売電契約及び行政財産の目的外使用について20年の長期契約が締結されました。一般に、行政がこういった形で一民間企業と長期契約を結ぶこと、及び行政財産の目的外使用などを長期契約することは極めて異例です。しかし、飯田市は前例にとらわれず、事業を安定化させるためにはその契約が必須という認識もとで決断された。前例がないことも、一度実施すれば前例になる。新しいことに取り組むに際して重要な点であることを改めて感じたところです。

また、原さんは、「市民出資」という点に関し、「お金の見える化、お金に意志を持たせる行為」と説明されました。預金との対比で考えれば、出資対しては配当が、預金対して利子のリターンがあります。預金も金融機関によって何らかの運用に回される訳ですが、その運用先について関与することはできません。一方、出資は自らの意思でどの事業に自らのお金を預けるかを選択することができます。これは当たり前の事なのですが、再エネ事業のように、発電設備が目に見え、その発電力が把握でき、それが地域で使われていることを実感できるというのは、一般に企業の株式を購入するのに対してより身近で分かりやすい面があります。なおかつ、再エネの固定価格買取制度は、普通に事業をすれば利益が上がり、趣旨に対するリターンを確保できる水準に買取価格が設定されています。

「地域のお金を地域で使おう」といった呼びかけはよく耳にします。よく聴くけども中々分かりにくかったものを、このような分かりやすい仕組みで世に広める。再エネは、こういった面でも世の中の考え方や仕組みを変えていく可能性があると感じたところです。

グループワーク後の発表

まちエネ大学山陰スクール、まだ始まったばかりですが、プレイベントと第1回講義を経ただけで、ここに来なければ逢えなかったたくさんの方々と出会う事ができました。まず、そのご縁に感謝したいと思います。また、私も再エネに取り組んでいる者のはしくれではありますが、基本的な知識や現在の動向について知らないことが山ほどあることが良く分かりました。今後、まだまだたくさん学べることがあると期待が膨らみます。来年の3月までの講座を楽しみながら、しっかり儲かるよう、たくさんの方と交わっていきたいと考えています。

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