2012年6月30日、広島市内で、ひろしま青年部会合同例会が開催されました。広島県青年部会連絡協議会の主催で、広島県内各地に支部がある広島同友会の青年部会(41歳までの若手経営者で構成)の全体会という位置づけです。今回、広島県内だけでなく、我々島根同友会のメンバーをはじめ、全国各地から参加者があり、参加者数220名という大例会となりました。
例会テーマは、「青年経営者の資質を問う!~今だからできること~」と題し、広島同友会青年部のOB経営者2名の方から報告がありました。一人目は、広島同友会相談役 元広島同友会代表理事 青年部OB 岸工業株式会社 代表取締役 岸英雄氏、二人目は、広島同友会代表理事 青年部OB 旭温調工業株式会社 代表取締役 粟屋充博氏、です。元そして現在の広島同友会の代表理事の報告、しかも青年経営者に対するメッセージとしてどのようなことを語られるのか、大変興味を持って聴くことが出来ました。その概要報告をベースに今回の合同例会での学びと気づきを整理しておきます。
1.経営者として守っていかなければならないこと
最初は、岸社長からの報告でした。岸社長は、広島市内にある山陽高校の理事長も務められているそうですが、報告の冒頭、教育の問題について話をされました。戦後教育の問題、現在の日本人が近代史を習っていないという実情、日本人全体が日本の歴史を知らないと言う実態についてです。同友会の報告でそのような話を聞いたことはこれまで無かったので、最初は、保守的な右寄りの思想を強く持った方かという印象も持ちました。しかし、その意味するところは、日本人としての根本的なよりどころの有無が、経営者の覚悟、本気、といった根幹に係わってくる、ということをおっしゃりたかったのではないかと理解しています。
私は、「とにかく自社を良くしたい」という気持ちだけで同友会に入り、その学びを経営の改善に活かすことだけを考えてきましたので、戦後教育と経営がどういう関係があるのか直ぐには理解できなかったのですが、岸社長の「経営者は、日頃の生活信条の中でこの国を守るという意識があるのか?経営者として守っていかなければならないことについて意識のある人は少ないのではないか?」という言葉が強く印象に残っています。
企業経営が目指す大きな目的の一つに「従業員とその家族の幸せ」があります。当社の経営理念にも書いてあります。要するに、従業員と家族の幸せのためには、単に自社が存続発展すればいいのか、という話だと理解しています。それはもちろんだが、それだけではなく、地域社会が存続・発展しなければなりません、そして地域社会の集合である国、国家がすばらしいものでなければならない。その時に、地方の一中小企業経営者であっても、国のあるべき姿、この国はどうあるべきなのか、そういった事を考え、議論し、自分自身の中で、自分そして自社の立ち位置を見定めておかなければならない。
青年経営者だからこそ、若い時だからこそ、経営の事だけでなく、地域のこと、国のこと、自分はどうしたいのか、どうしたらいいのか、考えなければならない。そういったメッセージだったと理解しています。
2.“全体を見ていない”ことに気がつく・気づかせてもらう
続いては、粟屋社長からの報告でした。粟屋社長からは、同世代の経営者の集まりである青年部という活動について、積極的に携わるべきとの話がありました。自らも若い時に同友会の他、様々な活動に従事され、その中で先輩たちの姿を見て将来の自分を俯瞰する場になったという経験をお持ちだからです。
興味深かったのは、YEG(商工会議所青年部)、JC(日本青年会議所)との比較から、同友会について話された内容です。粟屋社長は、同友会の特徴は、各人の会社、明日の会社、自分と仲間はどうしなければならないか、経営者の人間性に目を向ける、という点が特徴だと指摘され、その一方、YEGやJCについては、各会の目的の達成に向けた各種行事の企画運営に参画し、その中でリーダシップを体得するという意味合いがある、と自らの経験を踏まえて話されました。私は、YEGもJCも経験がありませんが、同友会(青年部)とは似て非なるものだという認識はあります。青年経営者が参画する活動には様々なものがあり、どのような活動に、どのような目的を持って参加すべきか、示唆を与えて頂けるお話でした。
そして、印象に残ったのは、「群盲象を撫でる」ということわざについての話です。多くの盲人が象を撫でたとき、足であったり、鼻であったり、しっぽであったり、それぞれ自分の手に触れた部分だけで象を評してしまう。そのように、部分だけを見てそれが全体だと錯覚してしまうこと、青年経営者でなくとも陥りやすいと思います。その、足の事しか知らない人に、鼻やしっぽの話をしてくれるのが、同友会活動だという訳です。このことわざのポイントは、確かに全体を見れてはいないが、足も、鼻も、しっぽも、一つ一つは間違っていない、と言う点ではないでしょうか。全く間違っている訳ではないからこそ、全体を見れていないことに気が付かない。それを気づかせてもらえる場、意識して求めていく必要があると感じています。
そして最後に話されたのは、「本当に大切なことは目に見えないもの、形が無いもの」という指摘です。価値観、人間性、信頼関係、思いやり、人間としても重み、いずれも独学や本からは学べないもの、人との関わりの中で身に付けていくものだという指摘、まさにそのとおりだと感じます。青年経営者は、若いからこそ、小さくまとまらず思いっきり活動すべき。それがまさに人との関わりであり、同友会活動であり、青年部活動であるのだと改めて理解したところです。
3.利害関係のない人から認められるから価値がある
合同例会の最後に、まとめとして、2012年度広島県青年部会連絡協議会会長の早間雄大さんから話がありました。その中で印象に残った言葉あります。「作業をしない。仕事をする。同友会も、会社も。」
仕事ではなく、作業をしていませんか?この問いかけは経営者にとってこそ、大きな意味を持ちます。作業とは、いわゆるルーチンワーク、言われた通りにこなすこと。仕事とは、そのルーチンワークも含めて会社の目的を達成するための行動全体、価値の創出そのもの、とでも言えばいいでしょうか。ですから、経営者が作業と仕事を履き違えては、会社の先行きは不安定になると言わざるを得ません。もちろん、経営者もルーチンワーク的に日々やらなければならないこともあるし、プレイングマネージャーの方はなおさらです。しかし、そこを峻別し、常に会社の目的を達成するための仕事をしているか否かを自問自答する。そして、それは同友会活動でも同様。何のための同友会か。常に問いかけながら、“仕事”をしていくことが必要だと、気づかせて頂きました。
早間さんも様々な苦労をされてきている青年経営者ですが、最後に、同友会活動を通じた経営者としての成長について象徴的な言葉がありました。「利害関係のない人から認めてもらうことで自信がついた」、これは私もまさに感じるところであり、大事にしなければならない観点だと考えています。
利害関係のある人とは、社員、取引先、お客さま、など。これらの方々にも、もちろん認めてもらう必要があります。しかし、利害関係があるからには、本心を言いにくいケース、特に悪い点については、率直に指摘できないケースもあるでしょう。それを、利害関係がなく、さらに経営を良くしていく、地域を良くしていくという共通の目的を持った同友会のメンバーが評価し、認めていく。真剣に経営に取り組む者どおしが、認めてもいいと思った時に認める。それが価値ある評価だし、その評価を目指して頑張る。同友会で活動していくことの意義であり、だからこそ、会員一人一人が自分に、そして同友会会員に対しても厳しくあることが求められると、改めて感じたところです。
ひろしま合同例会は、島根青全交実行委員会との共催として開催して頂きました。広島の同友会青年部も島根の青全交を全面的に応援して下さっています。2012年10月4日(木)、5日(金)の青年経営者全国交流会では、全国の青年経営者が島根の地に集い、大きな学びを共有します。そのことが島根の経営者にとって、島根の地域にとって、意義あるものとなり、ひいては我々の国、日本のためになるよう、実行委員会の一翼を担わせて頂いている私も、努力していきたいと決意を新たにしたところです。