2013年9月6日(金)、島根同友会会員の株式会社プラチナ第8期経営指針発表会にお招き頂き、参加してきました。株式会社プラチナは、松江市で自動車販売、整備、自動車部品の販売・施工・製造などを手掛ける会社です。今回、初めて経営指針発表会を開催されました。代表取締役の内田雄之さん以下、社員5名の会社ですが、創業以来、お客さまに密着したサービスとこだわりの仕事で事業を伸ばしています。平成22年度に島根同友会に入会され、経営指針成文化セミナーを2度受講されるなど、経営指針の成文化にも積極的に取り組まれています。今回の経営指針発表会、社員はわずか5名ながら、同友会の仲間や金融機関など総勢31名の参加を得て開催されました。その取り組み姿勢に大いに刺激を受けるとともに、同じ同友会の仲間として、大きな転機となるこの会に出席できたことに感謝しています。そこでの気づきの一部をこのブログにまとめさせて頂き、今後のさらなる飛躍と発展に向けたエールとします。
1.クルマがその人の価値を高める~モノが売れない時代のクルマ屋とは~
経営指針発表会のことをまとめる前に、私が内田さんと出会って間もないころ、内田さんから聞いた話で印象に残っていることについて記しておきます。それは、「クルマはその人の価値を高める。」というものです。
現在、私は会社所有の社有車を業務用に使っていますが、実は外車(BMW)です。もちろん、業務上外車に乗る必要はありません。4年前、私が社長に就任する時に、会社の状況をよく考えず導入したものです。中古でしたが、それなりの値段はしました。財務的にみれば負の遺産の一つでした。就任してしばらくして、当時の会社の苦しい状況を認識した私は、クルマを処分しようとしましたが、処分しても損が残るとのことで、結局ずっと乗り続けました。その経緯を話した上で、「今後はもっと安くて燃費のいい車に買い替えようと思うがどうだろうか?」と内田さんに問いかけました。
内田さんは、「安い車に買い替える必要はないと思います。クルマは人の価値を高めるんです。軽自動車に乗っている石倉さんと、BMWに乗っている石倉さんでは、BMWに乗っている石倉さんの方が価値が高い。私も、周りもそう見る。だから、今のままでいいと思います。」と話されました。「プリウスでもどうですか?」的な回答を予想していた私にとっては意外で、印象に残っています。実は、そこに、プラチナ、そして内田さんの仕事の原点があるように感じています。クルマの持つ価値。個人のクルマであれば個人の価値、事業用であればその事業の価値に即したクルマ。ユーザーの価値感に徹底して合わせることで、その人、或いはその事業の価値を高める、又は明確化する。それがユーザーの満足につながる。そんなクルマ、そしてクルマを通じたライフスタイルをコーディネートする仕事。それがプラチナという会社の原点だと感じていました。
クルマは、道具であり嗜好品でもあるという性格を持っています。自己表現の手段でもある。プラチナという会社の歴史を伺うと、同社が扱うクルマは嗜好品としての側面が強かったと思います。その流れで、今、高品質カーオーディオなどにも取り組んでいる。若者のクルマ離れ、等と言われてから久しいモノが売れない時代です。だからこそ、どこにでもあるクルマ屋ではなく、こだわりを持った嗜好品としてのクルマ、自己表現の手段としての際立ったクルマ、を扱うという特徴を出した会社として発展して欲しいというのが私の気持ちです。
2.プラチナの精神 One to Oneへ立ち戻る
今回の指針発表の中で記憶に残ったキーワードの一つに、プラチナの創業からの精神「One to One」があります。お客さまとプラチナが1対1で向き合う、というこの基本姿勢。現在、プラチナには累計1000名のお客さまがいらっしゃるそうですが、1対1000ではなく、1対1であることを貫く。それは、お客さま一人一人に特化するということ。そこに今一度立ち返りたい、という内田さんのメッセージを受け止めました。
プラチナは、「お客さまの“欲しい”に何でも答える」というスタンスで事業を伸ばしてきたそうです。その“欲しい”とは、“こだわり”という言葉でも置き換えられるものではないかと感じます。それは、プラチナが創業以来手がけてきた得意分野に、カスタマイズという領域があることからも分かります。機能面での改造(いわゆるチューニング)、外見面の改造(エアロパーツ取り付け等)という、クルマ業界でもマニアックな領域、こだわったユーザーが多く存在する領域で仕事を伸ばしてきたのがプラチナだと理解しています。だから、そういったユーザーの“欲しい”とは、かなりこだわったもの。マニアックな、一般カーディーラーでクルマを買う人の感覚では無い、その人だけの価値を提供してきたのでしょう。そういったユーザーと付き合うためには、社員自身も相当のクルマ好きでなければならないし、労多い仕事をお客さまと一緒に共に楽しめることが求められます。そこがこの会社の強みだと内田さんも認識されています。
現在、プラチナは少しずつ事業を拡大する中で、そういったマニアックな客層だけでなく、より一般的感覚に近いお客さま、そして法人との取引等、お客さまの領域が広がりつつある段階にあるようです。その時に、「One to One」をどのような形で実現していくのか。前述の嗜好品としてクルマを扱うお客さまから、道具として見るお客さまが増えていく中で、どこにプラチナという会社の価値を見出していくのか、期待しています。
3.中期経営ビジョン~2000人のファンを持つ企業~
今回の経営指針発表会において、「2000人のファンを持つ企業」という中期経営ビジョン(第8期~第10期)が示されました。プラチナには現在1000名の累計顧客がある。それを2000名まで増やし、さらに“ファン”になって頂く、というものです。ファンとは、年間1回以上利用して頂く“愛好者”、年間1人以上のお客さまを紹介して下さる“紹介者”に分かれ、その総計が2000名に達する企業を目指そうというものです。
ファンとは、まさに前述の「One to One」に共感、そして満足してプラチナと長く付き合って下さるコアなお客さま。それを実現するための方策は、中期経営方針として個別に示されました。その中身は、印象向上、信頼性向上、利便性向上、楽しい場づくり、社員のレベルアップ、といった項目が網羅的に示されていますが、その施策の中核とるのは、年末にも完成予定の新社屋・新工場です。
ただ、その新社屋・新工場の概要については、今回の経営指針発表会ではあまり表現がありませんでした。その点については私として不満足なところでしたが、経営方針に示された取り組み項目、それは、裏返せば現在のプラチナの課題です。事実、プラチナの会社としての設備は脆弱です。今後、毎年2000名のお客様を迎え入れ、満足して頂くには明らかに不足でしょう。だから、このタイミングで新社屋・新工場に着手する。そのことにより、印象、信頼、利便、楽しさ、といった課題を解決する。2000名、一人一人の満足に応えることができる環境を整える。だからこそ、この新社屋・新工場の完成、そしてそのタイミングに合わせて進められる各種取り組み、その相乗効果でスタートする新しいプラチナの姿がどのようなものになるのか、とても期待し、待ち遠しく感じています。
当社もそうですが、事業を営めば何らかの形でのクルマの利用は欠かせません。プラチナとしては、今後、法人ニーズへの対応も大きな方向性の一つになってくるようです。しかし、法人向けのサービスはプラチナが得意としてきたコアな個人客とは異なる領域です。普通にやれば他の自動車整備工場と同じになってしまいます。そこにどう切り込んでいくのか。大いに期待しながら、その施策展開を見守り、応援したいと考えています。
代表取締役の内田さんとは、島根同友会で出会いました。そして、平成23年度に、経営指針成文化セミナーを一緒に受講して経営指針を同期策定した仲間です。だから、業種は違っても、共に未来に向かって切磋琢磨しながら経営を伸ばしていく仲間として是非とも頑張ってもらいたいと考えています。内田さんが事業を伸ばせば、私も負けてはいられないという気持になりますし、迷う時、壁に当たった時には共に助け合うことが出来る仲間として共に成長したいと考えています。そして、中期経営ビジョンに示された「2000人のファンを持つ企業」。そのファンの一人として、これからも応援し続けたいと思います。内田さん、これからが本当の勝負。頑張って下さい!