島根県中小企業家同友会

島根同友会松江支部1月例会 戦略の失敗は戦術ではカバーできない~アースサポート㈱飛躍の源泉~

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2015年1月13日(火)、島根県中小企業家同友会 松江支部1月例会が開催されました。この日は、『「人を活かす経営の実践」ES(社員満足度)No.1企業からCSR経営企業へ~自主的社員が会社の未来を創造する~』と題して、アースサポート株式会社 代表取締役 尾﨑俊也さんから報告を頂きました。アースサポート㈱は、松江市を拠点に、一般廃棄物・産業廃棄物の収集運搬処理、総合リサイクル事業、総合ビルメンテナンス、トータルサポート業を行う会社です。尾崎社長からは時々お話を聴く機会がありますが、人口減少が続く山陰地域で業績を伸ばされている企業として、特に戦略及び営業面での取り組みの卓越性にいつも学ばせて頂いています。今回の報告でも企業経営に関する様々な示唆を頂きましたが、企業を発展させるために何が必要か、戦略、営業、成長(市場開拓)、という観点で私なりの気づきをまとめてみます。

報告するアースサポート尾﨑社長

1.戦略の失敗は戦術ではカバーできない

この数年のアースサポート㈱のテーマは、「踊り場からの脱出がテーマ~もっと成長のスピードを上げていく~」だったと話されます。「リーマンショックの際には全ての業種でゴミの排出量が減るという減少が起こった」そうです。とてもショックな出来事で、その前後には、それまで成長を続けていたアースサポートも横ばいの時期を迎え、そのステージを早く抜け出すための取り組みが課題だったと話されます。

そのために重視されているのが「戦略」です。最初に話されたのは、「戦略の失敗は戦術ではカバーできない」ということ。例えて言えば、どの山に登るのかを決めるのは経営者、どのルートから登るのかは社員と一緒に考える、ということです。すなわち、登る山を間違えてしまえば、どのルートから登るのか必死に考えても意味が無い、ということになります。それだけ、経営者が判断し、決定する戦略(方向性)は大きな意味を持ちます。

あと二つ、戦略に関する言葉を教えて頂きました。一つは「勝者は自社の他社の弱みにぶつける。敗者は自社の弱みと他社の強みにおびえる」というものです。だから、まずは自社の強みを考え、それに合ったチャレンジをする、ということ。そして、「雑魚は磯辺で遊べ」というもの。魚は小さいうちは磯辺で育つ。大きくなったが外海へ出ていく。自社の成長ステージにあわせて、どこで戦ったらいいのかをよく考える、戦いやすい場所を見つける、ということです。

この3つの言葉。自社に置き換えた時どうなのか、が一番重要です。登るべき山は間違っていないのか。自社の強みを活かしたチャレンジができているのか。自社の成長ステージにあわせた市場で戦っているのか。次年度に向けた計画策定の中で、今一度振り返り、確信を持った上で良く年度を迎えたいと思います。

2.ベタベタの営業で1件1件つぶしていく

尾﨑さんの話で私が印象に残っている言葉として、「中小企業の業績は営業力で決まる」というものです。過去にある会合で発言されていたものです。言われてみれば当たり前のように感じますが、私自身強く印象に残っています。技術、仕組み、品質等で圧倒的に差がある場合は違うかもしれませんが、そこまで大きな差が無いのが一般中小企業。そうであれば、やはり営業力が強い方が勝つ。では、営業力を強めるとはどういうことなのか。

今回の報告でも、その答えのいくつかを話して頂きましたが、基本は「ベタベタの営業で1件1件つぶしていく」ということです。画期的な秘策がある訳ではありません。仕事をもらうためにスマートなやり方などありはしない。お客さんとの接点を増やし、つかんだら離さない。営業先をリスト化して、1件1件全員でアプローチしていく。当たり前のことのようですが、自社に置き換えてみると出来ていない部分、取り組みが弱い部分であることを痛感します。

今期受注面で苦戦した当社にとって営業面をいかに見直し、伸ばしていくのかは喫緊の課題です。今までのやり方は、基本的に“待ちの姿勢”でした。公共事業の元請はもちろんですが、下請にしても、民間の仕事にしても、以前のお客さまやその紹介の方からアクセスして頂くケースがほとんどでした。それはそれでありがたいことですが、そういったお話が途切れた時に対応する術を持っていないのが当社ではないかと感じています。そう言った中で、尾﨑さんの話は耳が痛く、突き刺さります。地道な努力無くして成功なし。肝に銘じて、当社としての地道な営業のあり方を見つけ、実践に移したいと考えています。

3.チャレンジし続けることでしか成長は得られない

松江市を中心とするマーケットで圧倒的なシェアを目指すアースサポートですが、さらなるチャレンジを進められています。

その一つが東京進出です。昨年、東京都内の工場を買収され、新しい市場へ打って出られました。東京は現在インフレにあり、もうしばらくは人口が増えていく、島根からみれば海外のような市場だと話されます。事実、廃棄物処理に関しても島根の水準からみればかなり高い単価での取引が出来るそうです。東京を“海外のような市場”と視る。島根とその周辺しかみていない私にとっては新鮮な視点、考え方です。強みを活かせる分野があるのであれば、新しいエリアに進出していく。そういう戦略、決断も経営者の仕事であり、今後の当社ではどうしていくのか、考えるきっかけを頂いた気がします。

もう一つ紹介頂いたのが、「Tポイント」。代理店としてゴミ処理にTポイントを付与し、個人顧客の開拓につなげていらっしゃいます。その具体的な事例は、人口減少社会の中の新しい領域として個人向けビジネス「ごみのコンビニ片付け堂」。この不用品回収ビジネスとTポイントを組み合わせるというのが戦術であり、チャレンジ戦略と戦術の組み合せのお手本とも言える取り組みです。感心してばかりではなく、当社も同じような視点を持った取り組みができないか、次年度以降の取り組み際して考えていきたいと思います。

次々と新しいチャレンジをしていく尾﨑さんですが、その根底には「チャレンジし続けることでしか成長は得られない」という基本認識があります。私も同感です。同じことを同じようにしていて成長できる時代ではありません。しかし、重要なのはその挑戦が自社の強みを活かせるものかどうか。私自身、しっかりと考え、かつスピード感を持って判断します。

例会の様子

尾﨑さんは、平成26年7月からは株式会社山陰スポーツネットワークの代表取締役にも就任されました。本業がただでさえ多忙な中、「愛する地域に興奮と感動、誇りを提供する」という志のもと、地元プロバスケットボールチーム「島根スサノオマジック」を率いていらっしゃいます。スポーツビジネスはスピードが第一。とにかく直ぐにやること。そして、勝たなければ意味が無い。と、端的に話されます。その「スピード」と「勝つ」という結果重視の姿勢は、まさにアースサポートの会社の姿勢そのものでもあるように感じます。あらゆる経験を会社と地域の発展に活かされる尾﨑さんの姿勢に大いに刺激を頂き、私も次年度大きなチャレンジをしていく勇気を頂いたと感じています。

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