島根経営品質研究会

島根経営品質研究会 ベンチマーキングから学ぶ~「どうせ地方だからこのぐらいだ」と決めつけていないか?~

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2012年9月26日、島根経営品質研究会の「ベンチマーキング」が開催されました。この取り組みは、研究会会員メンバーが会員企業に出向き、会社の説明、社内見学、職員との意見交換、等を行うものです。この春には当社にも来て頂きました。今回は、研究会会員ではありませんが、注目の企業である㈱めのや(松江市嫁島町)さんにお伺いしました。

同社は、パワーストーン天然石のオリジナルアクセサリーを全国展開されており、全国100店舗以上、韓国、中国にも店舗展開されています。企業の勢いを感じるとともに、急成長する企業ならではの人材育成の悩みなど、様々なお話を伺うことができました。パワーストーンの急成長が注目されてはいますが、実は創業111年目、伝統の勾玉づくりを今に伝える歴史ある企業です。これまで様々な浮き沈み、苦い思いを経験されて今があります。その経験を踏まえた、新宮社長の率直なお話には、大いに学ぶところがあります。ごく一部ですが、整理しておきます。

新宮社長による説明の様子

1.楽しく仕事ができる会社であっても、楽に仕事が出来る会社であってはならない

㈱めのやでは、「このお店があってよかった ありがとう この店にあなたがいてくれてよかった ありがとう」という経営理念の下、社員第一主義を掲げた経営を実践されています。そのことが評価され、第2回「日本で一番大切にしたい会社大賞」の審査委員会特別賞を受賞され、さらに注目が高まっています。

新宮社長は、毎月「社長通信」という社員に向けたメッセージを発行されています。現在では、毎年一冊の本にされて社外にも配られているそうです。この社長通信、私も少し読ませて頂きましたが、会社の状況や仕事の事はもちろん、日々、社長が社員さんとどのように接していらっしゃるのか、社員さんか上がってくるメール等の情報、様々なことが綴られており、新宮社長の厳しくも温かい人柄が大変良く伝わります。「社長通信を通じて、社員が社長を身近に感じてくれている」と自らおっしゃられるように、社員だけでなく、そのご家族からも、その会社や社長の人となりを感じ、安心して勤めることができる会社という印象を得るのではないでしょうか。

その一方で、新宮社長の「楽しく仕事ができる会社であっても、楽に仕事が出来る会社であってはならない」という言葉が耳に残ります。従業員を大事にするということは、従業員を甘やかすことではない。当たり前のことではありますが、ちょっと油断すると見失ってしまうことのように感じます。社長通信だけでなく、きめ細かな現場回りによる職員との懇談を通じ、時間をかけて少しずつ浸透させてきた新宮社長だからこそ、その言葉に重みを持って聞くことができます。

2.事業を伸ばすことの意味~職員の士気と未来の展望~

現在、めのやさんは、パワーストーン天然石のオリジナルアクセサリー(ANAHITA STONESE)がヒットし、急激な成長を遂げています。その急成長ぶりはすさまじく、そのための弊害も多々出ている、と新宮社長もおっしゃっていました。普通に考えても、人材育成が間に合わないのではないかと容易に想像がつきます。そのために社員教育において様々な努力や工夫を続けられています。

その一方で、私の目にとまったのは、社内に張ってあった大きな日本地図。それには、ANAHITA STONESEが出店した場所が記してあり、2011年に全国90店舗を達成した時に作成されたもののようでした。このように、全国に自分達の事業が広がっていることを実感できれば、社員の士気が高まり、なにより将来への展望が開けてきます。もちろん、“事業が伸びているかどうか”は、単に店舗数や売上、利益だけで測るものではないでしょう。取り扱う商品やサービスの広がりや高質化、事業を行う地域の広がり、それに伴う従業員の増加、など、様々な見方があり得ますが、どのような形にしろ、“自社の事業が伸びている”ことが実感できるよう「見える化できる」ことの重要性を感じたところです。

めのやさんの事務所は、非常に若い職場でした。その分、中堅幹部が不足しているという問題点もお聴きしました。しかし、少し見学しただけでしたが、若い職場ならではの活気や躍動感、といったものを感じ取ることができました。社員を大事にするという新宮社長の経営方針と相まって、会社の“空気”が活気に満ちているのでしょう。しかし、それも前提として“事業が伸びている”からでしょうし、そういう事業をつくっていくのが経営者の仕事だと改めて感じたところです。

3.「どうせ地方だからこのぐらいだ」と決めつけていないか?

今回の新宮社長のお話の中で最も耳に残っているのは、「どうせ地方だから、このぐらいだ、と決めつけていないか?」という言葉です。言い換えれば、「これは全国で通用するのか?」と常に考えて仕事をするということでしょう。そして、田舎者には“カルチャーショック”という刺激がある。カルチャーショックから生まれる劣等感をパワーにする。それが興味や好奇心、という感性を強める。そして、感性がチャレンジ精神を養う、という訳です。

この刺激を受けることの重要性。私も非常に感じます。出張などで他県に出向いて都会(島根以外はどこでも都会です)の刺激を受けること。これは定期的に実践していかないと、すぐに鈍ってきます。今、都市部では、この国では何がどうなっているのか。自分の地域で日々の暮らしを続けていると、直ぐに分からなくなります。新宮社長は、自分自身のこれまでの経営について「地方ゆえの劣等感・焦燥感が原動力」とはっきりおっしゃいました。そして、島根から県外へ出ることも一つのグローバル化だと指摘されます。そして、「どうせ地方だから、このぐらいだ、と決めつけていないか?」という言葉。私自身の胸に痛切に突き刺さります。私は、現在、地域密着で島根を中心に事業を展開する方針で経営を進めています。しかしそれは、外に出ていく勇気を持てない自分に対して、“地域密着”という一見美しい言葉を使っていい訳をしているだけではないか、と自問自答しています。

もちろん、当社がすぐさま県外で事業を展開出来る訳ではありません。しかし、当社の技術やノウハウが県内でしか通用しないと決めつける必要があるのか。挑戦することなく諦めていいのか、という心意気を持たなければならないと感じます。これは、今後当社が、当社なりの方法で事業を伸ばしていこうとするときの大きなテーマとなります。今一度、自社に置き換えて考えていかなれけばならないと気づかせて頂きました。

本社内にあるアクセサリー制作現場の見学

現在、新宮社長は4代目、そしてこのベンチマーキングの直後、2012年10月から、社長が交代され、新社長(息子さん)が就任されました。前社長の想いを引き継ぎ、また急成長した企業のかじ取りをどうしていかれるのか、同じ後継者社長として大変関心があるところです。ちなみにホームページをみると、新生5代目社長就任のキャンペーンが掲載されていました。なるほど、そういう使い方もあるのか、ちょっと感心したところです。

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