温泉めぐり

社長の温泉めぐり54 たかの温泉(神之瀬の湯) 広島県庄原市高野町

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私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。

54箇所目は、広島県庄原市高野町の、たかの温泉「神之瀬の湯」です。訪問日は、2013年5月6日です。たかの温泉「神之瀬の湯」は、平成16年にオープンした施設です。高野町福祉保健センターに隣接していますが、同施設の入口からやや奥に入った分かりにくい立地なので注意が必要です。外観は木造平屋で、田舎のちょっとした集会所、という雰囲気です。受付で聞いたところ、元々、隣接する福祉保健センターに供給されていた温泉(夕方から一般開放していたそうですが)を、一般利用者向けの施設として新たに整備したのが、「神之瀬の湯」なのだそうです。

たかの温泉神之瀬の湯 施設外観

たかの温泉の泉質は、ナトリウム‐炭酸水素塩泉です。湧出時の温度は35℃。お湯は、成分分析書上は無色透明となっていますが、浴槽の湯はややくすんだように見えます。成分総計は3.73g/kgと中々の含有量です。ナトリウム‐炭酸水素塩泉は、典型的な“美肌の湯”とされ、皮膚の表面を軟化させる効果があり、皮膚病や火傷、切り傷にいいとされます。また、皮膚の脂肪や分泌物を乳化させて洗い流すため、石鹸で皮膚を洗浄したような効果を得られます。その結果、皮膚表面からの水分の発散が盛んになって体温が下がり、清涼感を得られることから「清涼の湯」とも言われます。入浴すると、すぐに体全体に強いぬめりを感じます。phの高いアルカリ性単純泉と同じような感覚ですが、この温泉のphは6.9とほぼ中性です。それでも、ナトリウムイオンと炭酸水素イオンの働きで、同じような効果が得られるというのは面白いところです。

お風呂は、内湯と露天風呂の構成です。内湯は、円弧と直線を組み合わせた縦長の形状。床は石板張りで天井は木の梁が見えるようにしており、田舎の風情を感じられる落ち着いた造りです。露天風呂は庭園風の広めのスペースに岩風呂風の造りで配置してあり、浴槽部分には屋根がかかっています。こちらも垣根の間から空を見上げてゆっくり浸かれるように工夫されています。この温泉は、加温・循環式(加水はしていない)なのですが、内湯、露天風呂とも浴槽の角からさし湯が注がれています。このさし湯の温度が低めに設定されており、さし湯の出口付近ではややお湯がぬるくなっています。風呂上りに受付で聞いてみると、このさし湯は、源泉をそのまま継ぎ足しているそうですが、一旦タンクに溜めたお湯をつかっているそうで、温度が低くなっているそうです。成分分析表によると口元で35℃ですので、それよりも少し下がった(30℃程度か?)お湯が注がれているのではないかと思います。より新鮮な温泉に浸かろうと思えば、さし湯が出ている浴槽の角付近で入浴してみるのもいいかもしれません。

内湯の様子(ガラスの向こうが露天風呂)

洗い場は4箇所のみで、リンスインシャンプーとボディソープが備わっています。洗い場の間隔はやや狭目ですが、仕切りが付いているタイプです。脱衣場には、鍵付きのロッカーが18個。ロッカーの上には籠もあり、貴重品を持たない方はそちらでもいいかもしれません。洗面台は2箇所、ドライヤーは1つだけ設置されていました。利用料金は、大人350円とリーズナブルな価格設定です。1回分お得な回数券の販売についても掲示がありました。また、営業時間も午前10時から午後9時(入浴受付は8時30分)までとなっており、比較的遅い時間まで利用できるのは地元の方にとっても、旅行者にとっても使いやすくていいと思います。

この施設は、温泉入浴に特化した、とてもシンプルな造りが特徴です。風呂以外の機能は一切ありません。こういった施設には、みやげ物売り場、集会所としてのスペース、軽食・お食事処、といったものが付帯することが多いですが、ここは本当に入浴のみです。温泉以外のものとしては、自動販売機とマッサージ機があるのみ。休憩スペースはありますが、あくまで休憩するだけのスペースで会合などには向きません。この割り切りの良さは、他の施設との役割分担という面では一つの考え方です。

施設内部の様子(広々とした休憩スペース)

たかの温泉は、2013年3月に開通した尾道松江線(松江道)高野ICから3kmほどの場所にあり、車で数分の距離です。私も、ゴールデンウィークで広島から松江への移動の途中に立ち寄りました。高速道路の開通により、山陽、山陰、それぞれの地域からも利用しやすくなりました。元々は地元の方向けの施設で、観光客向けではありませんが、無料区間のICから利用できることもあり、高速道路の移動中、ちょっとした休憩がてら立ち寄ってみるのもいいかもしれません。高速道路の開通により、山陰・山陽間の移動も大きく様変わりしてきています。高速道路から近い温泉地の利用動向も変わってくるような気がします。いずれにしても、地域に潜在する良質な温泉の認知度が高まり、有効活用され、地域の活性化に貢献することを期待したいと思います。

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