私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。
65箇所目は、鳥取県鳥取市の日乃丸温泉です。訪問日は、2014年6月5日です。
日乃丸温泉は、鳥取市の中心市街地内にある温泉で、昔ながらの銭湯のスタイルを残す温泉です。鳥取市中心部にはこの日乃丸温泉以外にもいくつかの温泉施設があります。明治時代に飲用の井戸を掘ったところ温泉が湧出したのがきっかけとされ、かなりの歴史があります。一時はかなりの数の施設があったようですが、現在では数軒にまで減少し、その中の貴重な一つということです。県庁所在地の中心部に温泉が湧き出るというのはかな貴重な環境と思います。そういったこともあり、この施設そのもののホームページはありませんが、インターネット上には様々な訪問記事があり、注目度が高いことが伺えます。
日乃丸温泉の泉質は、ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉で、pHは6.6という酸性の温泉です。硫酸イオン、塩素イオンのほか、炭酸水素イオンの含有量も高く、成分総計は4.876g/kgと比較的濃い目の温泉と言えます。口に含むとかなりの塩気を感じます。インターネット上の情報では源泉かけ流しという表現もありますが、成分分析表によると源泉温度が低い時には加水、低い時には加温、さらに循環ろ過器が使用してある旨、記載があります。一方、湯船からは結構な量のお湯が越流していましたので、循環式との併用で新しい源泉もかなり投入されているのではないかと推察され、温泉の鮮度は高そうです。泉質面では、ナトリウム-硫酸塩泉の特性として、浴用による高血圧症・動脈硬化症などへの効果、塩化物泉の特性として、塩の“パック”効果で湯ざめしにくいこと、さらに、成分的には、ナトリウム-炭酸水素泉の効果も期待できると考えられ、皮膚の脂肪や分泌物を乳化して洗い流す皮膚の洗浄効果も期待されるところです。実際の入浴感も、入浴後直ぐに肌がすべすべする感触が体感できます。なお、温度はやや高めに感じました。
湯船は石造りで長方形のシンプルな形状ですが、向かって右側が一部深くなっており、知らずに入ると最初はびっくりします。より深く肩までお湯に浸かる事が出来るので、こういった段差もしっかり明示があればより良いと思います。一部がジェットバスのようになっていましたが、よく見ると窓の脇からいわゆる塩ビ管が通してあり、そこからのエアで泡立ててありました。後付けの手づくり風の造作でした。
洗い場は13箇所。当然、仕切りはありません。シャワーはレバーを横に引くと適温のお湯が出る(温度調整なし)スタイルで、このシャワー水も温泉水が使われていました。たまにシャワーに温泉水を使っている温泉に出会いますが、この温泉はかなり塩分量が多く、口に含むとかなり塩味がしますので、頭にかけるのは気になる人もいるかもしれません。また、基本が銭湯ですので、洗い場にはシャンプーやせっけんの類は一切無く、持ち込みか、番台で購入するスタイルです。ロッカーは、およそ30個で鍵付きですが、扉のないスペースが下段にあり、常連の方の者と思われるシャンプー等がたくさん置いてありました。洗面台は1箇所で、ドライヤーも1つ据え置きがありました。このドライヤーの使用料が1回40円。そして、持ち込みのドライヤーを使用する場合も40円。明確な受益者負担の考え方が新鮮でした。
営業時間は朝6時から深夜12時までという長丁場で、朝風呂から深夜仕事帰りの入浴まで、かなり広範な利用が可能です。なお、道路一本挟んだ向かい側は夜の繁華街ですので、勢いで“〆に温泉”という利用を思い付きそうですが、飲酒した後の温泉入浴はやめましょう。飲酒後或いは飲酒しながらの入浴は、血行が急によくなったり血圧が急上昇したりするので危険です。さらに、言うまでもないことですが、泥酔しての入浴は事故の危険性もあるので絶対に避けましょう。
利用料金は、大人400円。平成26年4月からの消費増税より、若干の値上げとなったようです。なお、私は宿泊したホテルで紹介され、250円で購入したチケットを利用しましたので、中々お得でした。私が訪れたのは平日の夜間でしたが、継続的に利用者が訪れていました。また、休憩室内の冷蔵庫に並ぶコーヒー牛乳やフルーツ牛乳は、いかにも銭湯というレトロ感を際立たせており、なんだか懐かしい気分にさせてもらえます。
日乃丸温泉の建物2Fには、ライブ・パブ&レストラン「アフターアワーズ」というライブハウスがあり、これが中々有名なようです。温泉銭湯とライブハウスという一見ミスマッチな組み合わせですが、繁華街に立地している特性を考えれば、新しい魅力を創出するためのチャレンジとしておもしろい試みと感じます。これまで、中々鳥取市内で宿泊する機会がなく、今回初めて訪れることができました。中心市街地にこのような気軽に入浴できる温泉があるのは中々貴重です。次の機会には、また別の温泉を利用してみたいと思います。