私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。
33箇所目は、島根県出雲市の「出雲平成温泉(出雲保養センター)」です。訪問日は、2011年5月15日です。
出雲平成温泉(出雲保養センター)は、出雲市の市街地から少し離れた山あいにある平成スポーツ公園内の日帰り温泉施設です。平成スポーツ公園は、野球場、テニスコート、グラウンドゴルフ場などが整備され、その中心に“出雲保養センター”が配置されています。この施設に、トレーニングジム、和室、お食事処、そして温泉施設が備わっています。スポーツなどで汗を流した後に、温泉でゆっくりし、休憩して帰ってもらうというコンセプトの施設のようです。
この温泉は比較的濃い泉質で、成分総計7.977g/kg、源泉温度も57.1℃、と中々のものです。泉質名は、ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉で、無色透明ですが口に含むとかなり塩からく感じます。硫酸イオン・塩化物イオンともに高濃度で含有されおり、近傍の多岐いちじく温泉と似たタイプの成分構成になっています。
泉質の適応症からすると、硫酸塩泉は傷や火傷などの治癒効果があり、塩化物泉も塩の殺菌効果で傷の治癒に有効性があるとされますので、外傷への高い効果が期待できる泉質と言えます。また、硫酸塩泉は肌へ水分を運んで潤いを補給する効果、塩化物泉は塩の成分が薄い被膜を形成して肌を包むことによる保温・保湿効果をもたらします。この2つの効果の組み合わせに加え、なおかつ成分濃度が比較的高いので、高い効果が期待されます。その一方で、成分が濃いことに留意し、自分の肌に合わせた適度な入浴が好ましいとも言えるでしょう。
風呂は、内湯と露天風呂の構成です。建物は建築的な意匠にこだわったようで、浴室部分が独立した六角形の形状(×2、男湯と女湯)になっています。天井が高くて窓も大きく、明るくて開放的な造りです。そのうち1/3ぐらいが浴槽、それ以外が洗い場などとなっています。内湯は比較的大き目ですが、珍しいのは、水面が床よりも高いこと。一般に、こういった温泉施設の場合は風呂の湯面が床面と同じぐらいに設定されていることが多いですが、ここは、風呂の底が床面と同じ高さです。“銭湯風”とでも言ったらいいのか、これはこれで良いのですが、入浴するためには風呂の縁をまたぐ(一度上がって又降りる)ことになるので、高齢者の方にとっては若干負担なのかなという気はします。浴槽内は一部がジェットバスになっています。
また、浴槽部分の1/3が薬草風呂になっており、7種の薬草を使った薬湯が毎日用意されているようです。せっかくの高濃度・良質な泉質なので、わざわざ薬湯を準備しなくても成分だけで十分アピールできる気もしますが、源泉の湧出量がさほど多くないのかもしれません。
洗い場は六角形の浴室の壁際に沿うように10箇所配置され、ボディシャンプーとリンスインシャンプーが備えてあります。洗面台は3箇所で、いずれもドライヤーが備え付けてありした。これに対して脱衣場のロッカーは70個ほどあり、過剰な感じもします。
露天風呂は、岩風呂・庭園風の造りなのですが、庭の部分は風呂の大きさの10倍以上はあろうかというぐらい広々としており、大変開放感がありました。一点、露天風呂の一角にもジェットバスになっている部分があり、腰かけになっている部分から泡が出ているのですが、泡の出ている場所が低すぎて上手く腰に当たりませんでした。調整できるものならもうちょっと上向きにした方がよいと思います。
入浴料は、大人500円。この泉質と施設からすれば妥当な値段という気もしますが、泉質・施設構成とも同じようなタイプの多岐いちじく温泉が大人400円ですので、競合した場合にどうなのかという気はします。なお、60歳以上の方は300円で入れるようになっています。(ちなみに、いじちく温泉は65歳以上の場合、300円)
この出雲保養センターの建物は、外観も中身も大変立派なものです。施設内部も広々としており、休憩場所、休息室(和室)もゆとりある造りで、利用者が余裕を持って使うことができる施設だと思います。お食事処や、和室、トレーニングジム等も併設されており、多様に利用できる施設となっています。訪問したのは日曜日の午後でしたが、高齢者から家族連れまで、温泉施設内は中々の人出でした。
出雲市平成町という市街地から離れた山あいの立地であり、市街地の喧騒を離れて、ゆっくり過ごすのに大変良い施設だと思います。