2012年4月9日、盛和塾山陰の4月例会が開催されました。
昨年の7月から「盛和塾」に入塾しました。盛和塾とは言うまでもなく、京セラ・第二電電の創業者で日本航空の会長として企業再生に取り組まれた、稲盛和夫さんが主宰する、若手経営者を育成するための塾です。今回、例会で経営の原点と呼ばれる「経営十二ケ条」について深く話を聴く機会がりました。その内容を少しまとめてみたいとと思います。盛和塾のことについては、新入塾生交流会でも少し触れましたので、そちらもご覧下さい。
講師は、盛和塾岐阜の株式会社DETO代表取締役、恩田多賀雄さんで、「経営の原点十二ヶ条の意義」と題して講演を頂きました。今回の例会には、入塾間もない参加者やオブザーバーが多いことも踏まえ、とてもやわらかい話し口で、分かりやすく話をして頂きました。もう一つ特徴だったのは、経営十二カ条の話に入る前に、その前提として大きく2つの話があったことです。そちらの話こそ、入塾間もない塾生にとってはより重要であるように感じました。その話も含めてまとめてみます。
1.暗夜を恐れることなかれ、ただ一灯を頼め
講演の冒頭、この言葉について話がありました。「人生を歩む中では、先の見えない暗い夜道を進むようなこともあるが、ただ自分の強い意思を頼りにするのがよい」、というような意味だそうですが、経営に際しても当てはまるということです。
そして、まず「暗夜を進むことが大事」だということ。経営とは暗夜を進むようなもの。確かに中々先は見通せませんし、色々なことが起こります。しかし、暗夜を進むからこそ、あるとき振り返ると、いかに険しい道のりだったのかがよくわかる。それなのに、中には暗夜を進もうとしない者もいて、それでは何も始まらないのだと。まず歩むことが大切、暗夜を行くことがから始まる。そのとき、「経営12カ条」が“一灯”なる、ということでした。
経営の勉強をするのはいいが、勉強ばかりして実践しなければ意味がない、ということだと理解しています。確かに、経営者はどんな時も前を向いて進まねばなりません。「どんな業界であれ、楽な経営環境などない。前に進まなければ地盤沈下して自分が沈んでしまう。その地盤沈下のスピードよりは早く歩かねばならない。」、とも話されました。講演の冒頭で、叱咤激励を受けたと理解しています。
そして、この言葉も記憶に残ります。「経営がうまくいかないことを、周囲或いは内部の環境のせいにする人がいるが、経営とは置かれた環境の中でやるしかないもの。人のせいにする暇があったら、一歩でも二歩でも進むことを考える。そういう経営者でなければ、経営十二ケ条を勉強しても意味が無い」。経営十二ヶ条に限らず、経営について学んでいく上での基本、前提を改めて認識させて頂きました。
2.覚悟はあるか?~小さな覚悟が大きく深いものになる~
経営者として経営をする「覚悟があるか?」、という問いかけが2つ目でした。
その前提として話されたのは、「経営者が損か得かと言われれば損。中小企業であっても、取るべき責任と対価を比較すれば間尺に合わない。番頭で居る方がよっぽど楽で、それが当り前。それでも経営者を続けるのは、経営者を続けて人生を終わるとき、もっとも人間的な成長が得られるのは経営者である。だから経営をするのだ。」という説明です。経営者になって3年ほどの私にはまだ計り知れない部分もありますが、この3年だけみても、人間的に成長させてもらったという認識はあります。経営者という仕事は人間を育てる、ということは確かなのではないかと、自分では感じています。だからこそやりがいがある。最近はそう感じています。
もう一つの言葉も記憶に残ります。「覚悟の無い経営者が経営する会社の製品やサービスは、世の中に迷惑をもたらす。社員がかわいそう。なにより、その経営者自身がかわいそう」、とのこと。「覚悟」、いいかえれば「本気」ということだと思います。私も、経営者になりたての頃、自分自身が「本気」で経営に取り組んでいるかどうか、厳しく問われたことがあります。社員やその家族、協力会社のみなさん、そういった当社を取り巻く様々な方々の生活、人生に関わっているという認識を今一度新たにし、覚悟を持って経営に取り組みたいと考えています。
そして最後に次のような言葉で激励をして頂きました。「まだ覚悟が無い経営者は小さな覚悟でいい、今日、それを持ってもらいたい。一度持てばそれがどんどん大きく、深いものになる。覚悟の有る、無しで全く経営が異なる。大事なのは、『覚悟は教えられない、渡せない』ということ。自分自身で持つしかない。だからこそ、覚悟を持ってもらいたい」。大変示唆のある、奮い立たせて頂けるお話を伺うことができました。
3. 経営12カ条~第一条 事業の目的、意義を明確にする~
「経営12過カ条」は、その名のとおり12項目に分けて経営の要諦がまとめられています。今回は、冒頭の説明時間をかけて頂いたこともあり、全部の説明を受けるまでには至りませんでした。しかし、第一条が、全体の中でも最も重要で、半分以上を占める大きな意味を持つものだということで、その説明の中から気づきをまとめておきます。
第一条の重要性、それは、すべての行動の○×は、第一条で決まるということ。事業の目的・意義とは、何のための会社か、何のための仕事なのか、それを考えるということですが、そのポイントは「最後、この1点だけは守る」ということを定めることだそうです。そして、(最初は)経営者が自分ひとりで考える。なぜなら、“本音でなければ意味がない”からだそうです。なぜ事業に取り組むのかという理由、その本音を明らかにする。さらに、本音を公明正大なものにすることが大切だということです。本音とは何か、実は大変難しい問題です。金持ちになりたいと思って事業を始める方もいるでしょう。ベンツに乗りたい、立派な家を建てたい、金銭的、物的欲求からスタートするのがむしろ自然ではないでしょうか。でも、それではダメで、もっと公明正大なものにしなければならない、と説かれる訳です。
なぜかと言えば、理由は簡単です。社員に、社長の金儲けのために事業を行うんだと説明したとして、社員が一生懸命働くはずはありません。極めてごもっともです。だから社員には公明正大な事業目的を述べなければならない。しかし、その公明正大な目的は自分の本音ではなかった(本音は金もうけしたい、とかあると思います)とする。そのギャップをどうするのか、非常に難しい問題です。
その答えは、「最初はそれでもいい。」ということ。実は、これは真剣に社長業をやっていく中で変わっていくものだと。経営していくうちに、儲かったらベンツを買うつもりが、事務所を直したり、会社を良くするためにお金を使おうという気持ちが湧いてくる。真剣に取り組んだ人は必ずそうなる。そうしていくことで、本音から少しずつベンツの影が消えていく。確かにベンツも欲しいが、会社ももっと良くしたい、という風に。そういうことが起こるのだと。
私自身、何となくわかる気もします。昨年度、会社の倉庫を直したり、社屋内の環境整備にお金を使ったり、社員のみなさんが使いやすい、すごしやすい職場環境整備に少しずつですがお金を使いたいなという気がしてきましした。多少は経営者らしくなってきたのかもしれません。来年、再来年、自分自身がどのように変化していくのか、自分でも見極めていきたいと考えています。
当社も、この度、事業の目的と意義を経営理念に定めました。経営理念として記されているとおりが、私の本音の本音なのか。心の奥底まで確信できるのか。常に自問自答し、自分自身のものになるよう、今後の経営を進めていきたいと考えています。盛和塾の教えは大変奥が深く、表面的な文言の奥に非常に深い示唆があります。自分自身明確に消化しきれないのですが、だからこそ、もっと勉強する意味があろうと思います。また、今回の講演で学んだように、覚悟を持って暗夜を行くことを忘れず、実践を通じて盛和塾の教えを少しずつ理解し、経営を伸ばしていきたいと感じたところです。