島根県中小企業家同友会

島根県中小企業家同友会 第11回定時総会 基調講演~地域で果たす中小企業の役割と志~

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2012年5月22日、島根県中小企業家同友会の第11回定時総会が開催されました。今年は島根県中小企業家同友会発足10周年記念行事として、「第40回青年経営者全国交流会」(青全交)が島根県で開催される年でもあり、その準備に向けた決起集会としての位置付けもありました。また会員数も順調に増加し、183名(昨年度の総会時点では157名)に達しています。島根県内の中小企業経営者を惹きつける魅力がある組織として益々発展していることを裏付けていると言えるでしょう。

報告する、㈱ヒロハマ 代表取締役会長 広浜泰久氏

本総会の記念講演として、中同協(中小企業家同友会全国協議会)幹事長、株式会社ヒロハマ 代表取締役会長 広浜泰久氏のお話を聞く機会がありました。講演テーマは、「地域で果たす中小企業の役割と志~同友会理念と、その企業実践について~」でした。同友会の学び、特に経営指針に基づく経営を実践する中での課題や気づき等についてお話を頂きました。昨年度、経営指針を策定したばかりの私としては、大変興味深いテーマでの講演であり、多くの気づきを得ることが出来ました。その一部を整理しておきます。

1.社員の顔を思い浮かべながら学び、仕組みづくりで社員と向き合う

同友会が進める経営に、人を生かす経営、人間尊重の経営、という考え方があります。その考え方は「中小企業における労使関係の見解(通称『労使見解』)」と呼ばれる冊子にまとめられており、同友会の中ではバイブル的なものとして取り扱われます。短い文章ですので、私も同友会の例会などで労使見解について話題が出た時、たまに読み返しますが、今回はその読み方の重要性について話をして頂きました。

読み方と言っても難しいことではなく、「社員の顔を思い起こしながら読む」ということです。そして、短い文章だからこそ、ワンフレーズごとに“自社であればどうしているのか”が言えるか否かを考えながら読む。このブログを書くにあたって実際に読み返してみましたが、労使間の対話とコミュニケーションが疎かになっていることを感じ、私自身の姿勢を見直す必要があると、率直に感じたところです。

そして、人間尊重の経営の進め方の一つとして、「仕組みづくり」について話がありました。「仕組みづくり」とは経営者として社員とどう向き合うか、という話にもつながります。特に、過去の広浜会長自身のお話として、全部自分でやってしまおうと思って上手くいかなかった過去の失敗を紹介頂きました。何でも一人で出来る経営者が目指すべき経営者でない。なぜなら、全部自分でやってしまうと、1)社員が成長する機会を奪う、2)達成したときの喜びを奪う、3)社員のすばらしさを発揮する機会を奪う、ことになるので、結局は一人一人のレベルアップにつながらない、ということです。私自身、とかく自分でやらないと気が済まないたちで、耳が痛い話です。仕組みづくりの具体的な方策としては、人事考課と連動した職能資格制度の策定、自己申告制度の導入、社内報などでの報告などについて紹介がありました。当社でも少しずつ取組みを進めており、その具体的方策、やり方等についてはまた詳しいお話を伺う機会を持ちたいところです。

2.自主・民主・連帯の精神で日常的に働きかける

仕組みづくりに続く、もう一つのキーワードが「日常的な働きかけ」です。これには、自主・民主・連帯、の精神が大事だと言うお話でした。

個別に言えば、(1)「自主」とは、社員一人一人が技術的・精神的に自立するということ。自己卑下・他人依存(人のせい、環境のせいにする)しないこと。自分がいい仕事をするための環境は自分で作る、ということ。(2)「民主」とは、相互に尊重すること。関係する人が力を発揮できるようにすること。先ほどの仕組みづくりの話とも関連します。一つの例として、良く言われる“報・連・相”が出来ないのは、お互いを尊重していないからだとも指摘されました。(3)「連帯」とは、誰しも一人では何もできない、“周りの力を引きだす”ということ。特にクレーム対応については、「一人で対応させない」、「周りの力を引きだす」ことの重要性を話されました。それは、「クレームとは、他社と当社との人材の違い、会社全体の力量、を理解してもらうチャンス」という捉え方です。よく“クレームとはチャンスだ”と言いますが、その意味合いを分かりやすく説明されるとともに、クレームをチャンスにするためには日頃から基本的なポテンシャルを高しておかなければならないという、仕事に対する厳しさにも気づく、的確な指摘です。

実は、たまたまこの総会の直前に当社でも仕事上の不具合が発生したのですが、担当技術者、上司、同僚、営業、など社員が役割分担して協力し、素早く対応してくれました。迅速な対応に感謝しています。こういった姿がクレーム時だけでなく、日常的に様々な場面で発揮される会社、そういう姿を目指していきたいと感じていたところであり、非常に腑に落ちるものがありました。

そしてもう一つ大事な話として、自主・民主・連帯の精神で示される人間尊重の精神だけでは経営は上手く行かない、という指摘がありました。これを「道徳的な言葉でごまかすな!」と戒めるそうです。自主・民主・連帯、と言う一方で、自己資本比率はどうなのか、利益を上げれば税金を払って自己資本を厚くする。最低でも30%を目指す。人間尊重の経営は、売上や利益等の面で結果を出すことと整合しなければならない、ということでしょう。経営とはまさにバランス、そのバランスを取るための判断、決定の繰り返しなのだと改めて感じます。

3.同友会運動の果たす壮大な役割~自分の生き方を問われる運動~

東日本大震災以降、同友会の活動に対する認識が大きく変わってきているそうです。被災地の中でも、同友会の支部がある等、同友会活動が活発な地域は復興のスピードが速いという現状があるそうです。だから、同友会活動の空白地帯となくすべく、現在、全国の同友会組織の活動が進められています。島根でも県西部エリアでの活動を活発化すべく取組みを進めています。

そのような話を伺う中、私が心に残ったのは、広浜会長が、「当初同友会の活動は会社を良くするための運動と思っていがた、実は、自分の生き方を問われる運動だった。」という言葉です。経営者の発言、行動、振舞いというのは一般の方以上の周囲に与える影響が大きい。特に、自社の社員や取引先などは、経営者の判断一つで大きな影響を受け、時には彼らの人生そのものの方向を狂わすことにもなりかねません。だから経営者の生き方が問われる

経営者の生き方≒経営、それを学ぶのが同友会だと理解しています。私は、とにかく“自分の会社を良くしたい”という気持ちだけで同友会に入会し、活動しています。地域社会への貢献、といったことも良く言われますが、社業の発展、雇用の維持拡大こそが地域への貢献であり、今のところはそれ以上のことはあまり考えられません。しかし、広浜会長がおっしゃられるように、同友会活動を通じて経営者としての生き方を考え、そして地域社会で果たす役割を考える。そのような経営者を目指し、日々の実践に邁進することが必要だと感じたところです。

島根青全交に向けて懇親会での集合写真

今回、定時総会には会員120名の出席者、懇親会にも多数の参加があり、同友会活動への注目、期待の高まりを感じる機会となりました。また、平成24年10月4日(木)~5日(金)にかけて開催される、「第40回青年経営者全国交流会in島根」(通称:青全交)に向けた決起集会としても大いに盛り上がりました。私自身も青全交に向けては大きな役目を頂いており、この全国大の交流会の成功、そしてその後の島根同友会のさらなる発展を目指し、これからの半年の活動に取り組んでいきます。

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