私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。
今回49箇所目は、島根県浜田市金城町の「美又温泉 国民保養センター」に行ってきました。訪問日は、2012年11月8日です。美又温泉は、山陰の名湯として古い歴史を持つ温泉地で、開湯は元治元年(1864年)まで遡ります。現在では、今回訪れた国民保養センターのほか、8つの民間旅館が営業されています。この国民保養センターは、多角形の角柱風の建物が目を引く、美又温泉のシンボル的な施設で、日帰り入浴だけでなく宿泊も可能です。
泉質は、アルカリ性単純泉で、phが9.8とかなり高いことが特徴です。美又温泉のキャッチコピーは「泉質日本一、美肌の湯」。中々思いきった表現ですが、実際のところこの高いphから“美肌の湯”としても名高く、施設内でも大きくアピールされています。入浴するとアルカリ度の高い温泉らしく、直ぐにヌルヌル感を感じることが出来ます。循環式ですが適度に新しいお湯が加えられているようで、さっぱりした心地よい入浴感です。成分的にも特別なものは含まれていないため、子供からお年寄りまで安心して入ることができる“優しい湯”、ということもできます。
風呂場は、施設の3階(男湯)と4階(女湯)にあり、前述のとおり多角形のタワー風(といっても4階建てですが)の建物の中にあります。浴室内は、昭和の銭湯の風情を感じさせるタイル張りで、浴槽は薄いブルーのタイルでした。最近の温泉施設はどこも濃い色の石張りだったりしますので、(それはそれで雰囲気がありますが)たまにこういった風呂に入ると新鮮な気分になったりします。浴槽は、中央部に大浴槽があり、窓際に広がりっています。一部はジェットバスになっています。温泉街を流れる川沿いの景観を眺めながらの入浴が楽しめる(現在、道路工事中で見た目はあまり良くありませんでしたが)のも特徴です。離れたところにサウナと水風呂がありました。また、家族風呂も備わっているようです。
洗い場は13箇所、うち10箇所は鏡が付いています。施設的に古いこともあり、洗い場の間隔はせまく、仕切り等もありません。リンスインシャンプーとボディソープが備えてあります。この洗い場の特徴的なところは、カラン・シャワーともに“温泉水”が使われていることです。湯量が豊富で、アルカリ性単純泉で含有成分が少ないので、こういう使い方もできるのでしょう。アルカリ度の高い温泉水をシャワーで使う感覚は独特のものがあり、一度試す価値ありです。
洗面は3箇所、ドライヤーは2つ備えてありました。ロッカーは鍵付のものが約30、扉無しで籠が備えてあるものも30弱、という構成。なお、籠のみのロッカーは、元々扉付のロッカーの扉を外したもので、この辺りは古さを感じます。ただし、脱衣場内は掃除もきちんと行き届いている印象で、古くてもこういった清潔感のある施設は好感が持てます。なお、鍵付のロッカーは100円を入れて帰ってくるタイプですが、受付で手続きをする際にフロントの方が「100円玉が要りますが大丈夫ですか?」と尋ねて下さいました。ちょっとした心遣いですが、ありがたいです。
利用料金は大人500円。島根県東部の公共の日帰り温泉施設等と比較すると、少し高い印象もありますが、昭和情緒漂う、風情ある施設と独特の入浴感等を考慮すれば、妥当なところかもしれません。訪問時は、平日の夕方前でしたが、そこそこの利用者があり、浴室内も結構賑わっていました。宿泊のお客さんと思われる方も入浴されていました。施設のパンフレットでは宿泊の会席コースなども大きくPRされており、宿泊にも力を入れているようです。
温泉街の外れには温泉スタンドが設置されています。その名も「美人湯温泉スタンド」。100円で200㍑のお湯を汲むことができます。私が見に行った際も、地元の方が大きなポリタンクにお湯を注いでいらっしゃいました。これだけ高いphのお湯なので、自宅の風呂を熱くして半分ぐらい“刺し湯”しても、かなりヌルヌルの入浴感を味わえると思います。
ちなみに、この美又温泉の4つある泉源のうち1つは、過去に協和地建コンサルタントが掘削させて頂いたものです。残念ながら現在は使用されていないようですが、当社ともご縁のある温泉地です。やっと訪ねることができました。この国民保養センター、古さは感じますが、何か温かみのある、“古き良き時代”を想像させる風情ある建物で印象に残ります。また機会を見つけて、訪れてみたいと思います。