2010年11月から、島根経営品質研究会に入会しました。
今回、活動の一環として、「株式会社さんびる」さん(以下、「さんびる」と記載させて頂きます。)の経営方針発表会及び創業祭(2011年2月26日)に参加させて頂く機会がありました。研究会の活動として特定の会社の発表会へ参加すると言うのは何となく違和感があるかもしれませんが、経営品質に積極的に取り組まれている実際の企業の様子をみせてもらうことで、研究会会員が参考にさせてもらうという趣旨です。実際のところ、単なる発表会に留まらない大変大きな衝撃を受けるものすごい会でした。今回、その一端を書き記しておきます。
昨今、“従業員を大切にする経営”ということがよく言われます。経営品質でも社員重視が大きな方向性の一つです。私も頭では分かるし、そうすればいいと思いますが、従業員自身が“大切にされている”と感じるまでにするのは簡単ではありません。しかし、それを実現するための答えは「社長の本気」にある。そして、それを会社の事業の中どうやって落とし込んでいくのか、その具体例を見せて頂きました。
ところで、さんびるでは、役職員全員をフルネームで呼び合うそうです。「社長」とか「部長」といった呼び方はしません。このため、このブログでも、さんびるの社長は田中さんですが、“田中社長”ではなく、“田中正彦さん”とフルネームで記載しています。
1.会社としての夢や将来の姿を社長の言葉で語りかける
経営方針発表会は、一年間の振り返りと、次年度以降の経営方針の発表に分かれています。前半は、ES(従業員満足度)アンケートの結果について時間を割いて確認されていたいのが印象的でした。ESの向上がCS(顧客満足度)の向上につながるという基本認識に基づいているからだろうと思います。
そして後半は、会社の将来像、目指していく姿、具体的な経営方針についての説明に移ります。これが発表会の中心であり発表会を催して経営方針を発表する意味なのだろと思います。
そこでは、田中正彦さんが、自ら、自分の言葉で、会社の将来像、自分と会社がどこに向かおうとしているのかを役職員全員に語りかける。そして、皆でこの将来像を実現しようと訴えかける。その姿は、同じ経営者としてみて率直にかっこよかったです。自分もいつかあの壇上で、同じように社員に語りかけたい、いや、そうしなければならないと思わせる、素晴らしいものでした。ちょうど一週間前、同研究会が主催する経営品質特別セミナーで、社長の人間力、社長の本気、ということについて学ぶ機会がありましたが、それを実践すればこのようになるのだと具体的に教えて頂きました。田中正彦さん、ありがとうございました。
2.道具としての“経営方針書”を一冊の手帳にとりまとめる
さんびるでは、経営方針は、「経営方針書」という一冊の手帳にまとめられています。さんびるの経営は全てのこの経営方針書に基づいて進められ、役職員はその手帳を常に携帯するようになっているようです。
経営方針発表会では、“この経営方針書を道具として使って”というフレーズがよく聞かれました。経営方針書には、経営理念、社訓、スローガン、経営指針、経営目標、長期事業構想、社員心得、サービス憲章、…と、さんびるの企業運営にかかる様々な(恐らくは全ての)ことが記載されていました。(通常は社外秘ですが、経営方針発表会参加者の席上には発表会の時のみ配布(終了後回収)されており、途中それを拝見させて頂きました。)
これを役職員が常に携帯し、各職場の朝礼、勉強会などで繰り返し内容を確認し、いわゆる価値観の共有化を図っている訳です。“価値観の共有化”、言葉で言えば簡単ですが、実際にどうやって実現していくのか、その具体的な進め方の一端を垣間見て、この組織が持つ強い一体感の源泉を感じました。
3.社員一人一人をフルネームで呼びあげる
経営方針発表会の後は、「創業祭」と呼ばれる懇親会が開催されました。創業祭は、年齢層の若い会社であることもありますが、新入職員さんの余興で盛り上がり、大変賑やかな活気のある催しで、非常に楽しく過ごさせて頂きました。
その創業祭の最後に、田中正彦さんが正面の檀上に上がり、従業員一人ひとりをフルネームで呼びながら壇上に全職員が集まるという催しがありました。何も見ずに自分の記憶だけで順番に呼びあげます。田中正彦さんが社員を大事に思っていることの証明の一つとして行う恒例の催しだそうですが、印象的だったのは、名前を呼ばれた職員のみなさん一人ひとりがとても嬉しそうに檀上に集まって行き、迎える方も喜び合っていることです。
年に一度、職員が一つにまとまる儀式のようなものなのでしょう。この瞬間だけ切り取れば一見異様な盛り上がりにも見えますが、外からどう見られようと関係なく、田中正彦さんが本気で社員を大切に思い、社員も社長を尊敬し、慕っているというその事実だけがそこにはありました。そうでなければ、あのような光景は生まれないのだろうというのが、実際に臨席し、私の目で見て感じた感想です。
現在、さんびるでは、日本経営品質賞の取得を目指して取組みを進められています。大変ハードルの高い賞であると聞いていますが、この会社であればいずれその目標を達成することは間違いないと感じられる、そんな会でした。もっとたくさん、書くべきことはありますが、また来年、さらに勉強させて頂きたい、また、それまでに自分自身の本気度と人間力を高め、またこの場に参加させて頂きたいと考えています。
最後になりますが、田中正彦さん、さんびるのみなさん、お招き頂きありがとうございました。あらためてお礼申し上げます。