温泉めぐり

社長の温泉めぐり48 海潮温泉(桂荘) 島根県雲南市大東町

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私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。

今回48箇所目は、島根県雲南市大東町の「海潮温泉 桂荘」に行ってきました。訪問日は、2012年8月19日です。海潮温泉は、出雲国風土記にも記載がある、およそ1300年の歴史を有する古い温泉です。民間旅館と共同浴場がありますが、今回入浴したのは共同浴場である「大東農村環境改善センター 桂荘」です。この施設には元々入浴施設があったのですが、2012年2月にリニューアルオープンしています。

施設外観(奥が増築された入浴施設棟)

海潮温泉は、協和地建コンサルタントが古くから開発に携わってきた温泉であり、ボーリングによる温泉開発はこれまで4回にわたって実施されています。桂荘も含めて、海潮温泉で現在使用されているのは“4号泉源”と呼ばれる泉源で、平成17年に当社が開発させて頂きました。比較的浅い深度(300m)から45℃以上のお湯が豊富に湧出しており、コストパフォーマンスの高い、良質な温泉井と言えます。

泉質は、「ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉」です。施設内には、なぜか成分分析表の掲示がありませんでした。配布されていたパンフレトに泉質の概要のみが記載されています。源泉温度は45.9℃、仕様位置は43.0℃となっており、リニューアルに合わせて“源泉かけ流し”が採用されています。硫酸塩・塩化物泉の特徴とですが、硫酸塩泉は傷や火傷等の治癒効果が高いとされ、ナトリウム-硫酸塩泉は肌に皮膜をつくる“しっとり肌効果”が期待できるとされます。また、湯冷めしにくい温まりの湯である塩化物泉の効果も加わります。一方で、成分濃度はさほど高くないため、湯あたりの心配も少なく、入浴しやすい温泉と言えます。さらに、源泉かけ流しで鮮度のいいお湯が供給されていますので、泉質が持つ特性がより有効に機能する可能性が高い温泉と言えます。源泉かけ流しの採用は、施設としても大きなアピールポイントとして意識されているようで、浴室入口の扉にも「源泉かけ流し」という大きな掲示がしてありました。

浴室内は、黒基調の石張り(女湯は色合いが異なるようですが)が特徴的で、高い天井に木の梁を通した空間が作られ、柔らかく広々とした印象を与えます。風呂は、長方形の浴槽のみというシンプルな構成で、サウナと水風呂が備わっています。目に付いたのは、浴槽の角から風呂の中央部にかけて一本木を切り抜いてお湯が通るようにしてある水路のようなもの。恐らくは、源泉かけ流しによる浴槽内の温度調整に際して、元々浴槽の角からお湯を加えるようにしていたものを、より適切に温度管理するために中央部に注ぎ口を映すように、後から調整で付けられたものでしょう。しかし、これが石張りの浴槽内のいいアクセントになっており、質感を高めているように感じました。

洗い場は11箇所あり、仕切りのあるタイプでスペースにもゆとりがありました。リンスインシャンプーとボディソープが備えてあります。脱衣場はやや狭い印象で、鍵付ロッカーが無く、棚に籠がおいてあるタイプです。ロッカーとしては30箇所程度で、貴重品は入口脇にあるロッカーに預けるスタイルです。洗面は3箇所、ドライヤーも3つ備わっており、施設規模的には妥当な数ではないかという印象です。

ロッカーに鍵が無い点ですが、車で訪れることが前提の施設でしょうから、貴重品は車中に置いておくということでよいのかもしれません。しかし、ロッカーに鍵が付いていないのは中々使いにくいところです。近年、残念なことではありますが、田舎の施設でも脱衣場での盗難が頻繁に起こるようです。別の温泉施設で聞いた話ですが、そこもロッカーには鍵が無く貴重品は別途保管する方式だそうですが、例えば女性用の上着など、衣類で高級なものが籠の中から盗難されることがあるそうです。温泉に携わる者としては残念でなりませんが、ロッカーを鍵付にするというのは、時代の要請になってきていると言えそうです。

施設内の休憩コーナー

利用料金は大人300円。シンプルな温泉施設ではありますが、リーズナブルな価格設定です。ちなみに、隣接する松江市の温泉施設の入浴料は、市民利用で300円だったのが400円に値上げとなっており、島根県東部地域での安さは際立ちます。また、この施設は“大東農村環境改善センター”と名づけられているように、雲南市大東町地区の地域交流施設の位置づけも有しています。会議室や大集会室(小規模な体育館)も備わっています。また、温泉の入口にはマッサージの受付もありました。最近は、多くの温泉施設でマッサージが併設されることが多くなっています。それだけニーズがあるということなのでしょう。宿泊機能はありませんが、近傍において民間の旅館が営業されています。それぞれの宿が趣向を凝らした露天風呂を備えており、隠れ家的な秘湯の雰囲気を味わうこともできるようです。

私が訪れたのは、日曜日の午後。猛暑のさなかにも関わらず、そこそこの人出がしていました。施設としては古さも感じさせますが、地元密着のシンプルさは好感を持てます。自前の入浴セットを手にした地域住民の方々が施設内を行き交う姿が見られ、地域の交流施設・健康増進施設として、有効活用されている様子が伺い知れます。 新しい、近代的な施設もいいですが、こういった施設が醸し出す何とも言えない温かみもいいものです。

施設入口、ロビーの様子

由緒ある名湯を源泉かけ流し、かつリーズナブルな価格で体感できるお得な温泉施設です。他地域からの来訪者向けの施設ではありませんが、くせのない、鮮度の高い温泉を体感できます。現代のボーリング技術によって1300年の歴史を誇る貴重なお湯を、身近に活用できるようになりました。今後とも、温泉資源の有効活用と保全のバランスを保ちながら、末長く賑わい、活用され続けて欲しい温泉地の一つです。

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