私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。
3か所目は、島根県江津市の「有福温泉」です。訪問日は、2009年10月29日です。
有福温泉は、島根県内では温泉津温泉とならぶ古くからの温泉地です。内陸部の山間の岩の割れ目から湧き出す自然湧出の温泉で、1300年以上の歴史を有するとされています。
なお、協和地建コンサルタントは、江津市から委託を受け、有福温泉の泉源の清掃などの仕事を以前から実施されて頂いています。
有福温泉の泉源は、谷底ではなく山腹の斜面(標高70~80m)という高い位置から湧出し、しかも40℃以上の高い温度である点が非常に特徴的です。地質的にみると、過去の火山活動により生成された時代の異なる3つの岩帯が重なり合った地点に位置しているようで、まさに自然の恵みによってもたらされた貴重な温泉といえます。
有福温泉には、泉源を有する旅館と公衆浴場とがあります。今回は、公衆浴場の「御前湯」に入りました。この他にも、さつき湯、やよい湯、という公衆浴場があり、計3つの公衆浴場に入ることができます。泉質はいずれも弱アルカリ単純泉です。いわゆる、美人・美肌の湯というやつで、無色透明の入りやすい温泉です。
御前湯は、有福温泉街の中心部で少し高い位置にあります。古い公衆浴場で、「大正浪漫溢れるレトロな雰囲気」と紹介される、ちょっと目を引く建物です。入口正面に六角形の番台があり、いい雰囲気です。しかし、その横の自動販売機の赤色が強すぎて印象を弱めているのは残念です。最近は自動販売機の色を景観にあわせて変えているところも結構あるので、そういった工夫があるとなお良いのではないかと感じました。また、番台はありますが、入浴券は券売機で購入するスタイルになっています。
浴槽内部(男湯です)は、浴場の真ん中に円形の浴槽があり、その中央部からかけ流しの温泉が出ています。この浴槽はかなり深いのが特徴です。内側が腰かけのようになっていて、座って浸かるのが一般的みたいです。しかし、肩まで浸かろうとすると浴槽が深すぎでお尻を底に付けることができません。なぜそうなっているのか分かりませんが、中腰で浸かるような感じになります。それが“御前湯スタイル”なのでしょう。
洗い場は、浴槽の周囲に配置されていますが、シャワーがあるのは3箇所のみでした。リンスインシャンプー、ボディソープ、石鹸は備えてあります。また、古い施設ということもあり、脱衣場には、鏡と洗面台が2箇所しかありません。ドライヤーはそのうちの1箇所にありました。髪を洗いたい方は頭に入れておいた方がよさそうです。ロッカーは、100円を入れて後で返却されるタイプと、無料のタイプと2種類ありました。
設備的な古さは当然あるものの、入浴の気軽さや泉質、値段との兼ね合いで考えれば、十分に満足できる公衆浴場ではないかと感じます。こういった施設のすぐ近くで生活できるというのは非常に贅沢なことだと思います。
有福温泉では、現在、若手の旅館経営者の方々が中心となり、再開発計画を立案し、実行に移されようとしています。既に一部では工事も始まっていました。当社もささやかながらお手伝いさせて頂いています。新しい有福温泉の姿がどうなるのか、とても楽しみにしているところです。みなさんも、ぜひ一度お立ち寄り下さい。